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SNSで“なにか”を失う前に -前編- 「わからない」が許容されない世の中に生まれた違和感

  • SNSで“なにか”を失う前に
  • 投稿日 2020-08-12
  • 更新日 2020-08-19
  • Author 角田貴広
    • LIFESTYLE
    • 観察する
  • 多様性の時代に誰もが差別化に躍起になっている。この時代背景が生み出したSNS上の“違和感”は今後どうなるのか?

SNSなどを介したオンラインコミュニケーションが老若男女を問わず生活に浸透し、人々の距離はさらに近く、フラットなものとなった。ただそれは、全世界がおしなべてつながったのではなくて、「小さな村」のようなものが増えただけのこと。これまでとは異なる次元ではあるものの、SNSという閉ざされた「村」の中で、さらに趣味や嗜好に準じた意図的な小集落が点在しているような状態と言える。

SNSという場所においては、昔から意見の主張・対立・けなし合いのようなことが日常茶飯事に起こるわけであるが、特に最近はそれが顕著に見えてきた。とりわけ目立つのは、個人と個人の意見のぶつかり合いではなくて、もっと大きな実態のないものに対する個人の主義・主張である。

正義は暴力だ

「#検察庁法改正に抗議します」というハッシュタグが500万以上集まったことは記憶に新しいが、その後もハッシュタグを使って何かに抗議をするような流れが急増している。確かに前述のハッシュタグは世論として政治を動かした。これは極めて重要なことだ。人々は自宅から、無責任に政治に介入できることとなった。

しかし、次第に、こうした状況に違和感を感じるようになった。このトレンドはほんとうに「大衆の反逆」なのだろうか。自分達で権利を消費しているように感じてしまう。

同じような事象は日々起きている。アイドルが政治を語るなと声高に叫んだり、キャンペーンが炎上してブランドがすぐに企画を撤回したり、アーティストの作品がパロディーだと謝罪させたり、SNSにおける個人となんらかの軋轢は日に日に増えている。ブランドや企業からすれば炎上は避けたいので、誰にも嫌われないよう、ビクビクしながらキャンペーンを打っているような観さえある。

人々は自らの正義のため、見知らぬ他人に意見を申し立てる。もちろん、抗議活動が盛んになること自体はとてもいいことだが、あらゆる直感的な主張に共感を集めて権利を振りかざすべきなのだろうか。とあるアーティストへのインタビューで「正義は暴力だ」という言葉を聞いて、ひどく納得した。愛と理解を欠いた正義を振りかざすだけになると、それはとても恐ろしいことである。

作者の真意をわざわざ語らせるべきなのか?

フランスの哲学者・サルトルによる「嘔吐」で、主人公ロカンタンは、これまでなんとも思わなかった周囲の人間の存在に強烈な違和感を感じ、吐き気を催すようになる。なぜ人は何者かになろうとするのか。ただ存在しているということにすぎないのに、そもそも生まれてきた意味など必要なのだろうかと思い巡らす。ここでいう「吐き気」は、自分が感じている「違和感」そのものだ。

もう1つ。「エヴェンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」でシンジに首を絞められるアスカが「気持ち悪い」とつぶやくラストシーン。「僕なんて必要ないんだ」と言い続けてきたシンジが「ここにいてもいいんだね」ということを悟り、祝福された後である。自己実現の快楽を知った主人公に対する、アスカなりの抵抗だと受け取った。存在の本質探求を是とすることに対する違和感にも、とても親近感を感じる。

現実に話を戻すと、昨年末にコスメブランド「SHIRO」のリブランディングが話題になった。ブランドリニューアルに合わせたロゴの刷新に対して、SNS上でネガティブな声が相次いだ。しかし、今井浩恵社長は、これは世界展開を視野に入れたブランド強化のための一環で、「リニューアルした昨年9月以降、毎月前年同月比170%前後で推移」した(※今年3月時点)と語った。

こうした情報はSNSでは知りえなかった。というか、調べなかった、という方が近いのかもしれない。われわれは情報を恣意的に取捨選択し、そこに対してただ意見を述べていただけなのかもしれないと、ハッとした。一方で、わざわざそこまで語らせるべきなのか、という思いもある。今年ローソンのプライベート・ブランドがビジュアルを大幅に刷新した際にも、SNSで批判的なコメントが噴出した。ここでもデザインを担当したnendoの佐藤オオキがリブランディングの経緯をメディアで語ることとなった。

消費者の意見を取り入れることは大切だが、どれも責任者が価値観の異なる大衆の面前に引きずり出されているような憐憫さを感じる事案だ。背景など関係なく“好き勝手”に文句を言う消費者が増えている気がしてならない。

焦るが故の「反・反知性主義」的な態度

「反知性主義」という概念がある。これについてはたくさんの著書があり、トム・ニコルズによる「専門知は、もういらないのか」という本で初めてその概念に触れた。そこでは、SNS台頭以後の「無知礼賛」文化に警鐘を鳴らしていた。人々は「専門家を技術者として頼っているだけだ。専門家と一般の人々の対話ではなく、確立された知識を、必要なときに、自分の欲しい分だけ、手軽かつ便利に使っているにすぎない」という。

確かに現代はこうした状況に陥っている。世の中がフラットになるということは、すべての情報がタダになるというわけでは決してないはずだ。にもかかわらず、情報をフラットに盲目的に扱い、正義の名の下で議論を交わしている。その裏にはわれわれが知り得ないもっとたくさんの過程や情報がある。それ抜きの議論はもはや議論ではない。

一方で、SNSという場所では、誰もがむしろ「知性的であろうとしている」ように見受けられる。「反知性主義と向き合う」をテーマにした2015年2月発行の「現代思想」に、社会学者の酒井隆史が「現代日本の『反・反知性主義』?」というテキストを寄せていた。そこでは「インターネットこそ、この現代の『知性』の過剰の鮮明にみえる場」とした上で、「極端にいえば、むしろどこにも知識人しかいなくて、誰もが賢くあることを競い合っているというのが現代日本の風景であるようにも思えてくる」と述べていた。

昨今の状況はこの通りで、知的であろうとする無数のアカウントがまともであろうとするが故の自己弁護のために主張を繰り広げているような気がしてならない。誰もが真面目になりすぎている。言い換えれば、誰もが「失敗できない雰囲気」に縛られているのかもしれない。

そこには「わからない」「知らない」とは言えない雰囲気がある。間違ったことや不確かなことも同様に排除される傾向が強い。哲学者の東浩紀は「対談集」における國分功一郎との対話の中で「『わたしは暴力を体験した』と言っても、『エビデンスは?』という話になってしまう。エビデンス信仰は、そのように弱者の抑圧としても使われている」と言っている。

つまり、誰もが、わからないことが許容されない世の中において、取り残されないように焦っているのだろう。ブランドや企業も同じ。国民的なトレンドが生まれづらくなり、多様性の時代と言われて久しいが、その中で誰もが差別化に躍起になっている。存在意義を、ストーリーを探している。こうした時代背景が生み出したSNS上の“違和感”は今後一体どうなるのだろうか。

Picture Provided Takahiro Sumita

後編「繋がること」と「切断すること」が秘めたる可能性
SNS コラム

author:

角田貴広

1991年、大阪生まれ。東京大学大学院医学部医学系研究科中退。ファッション業界紙「WWDジャパン」でのウェブメディア運営・編集を経て、フリーランスに。現在はメディアでの執筆、複数企業のオウンドメディア運営などに関わるほか、HOTEL SHE,などを手掛けるホテルベンチャーL&Gにて企画・戦略全般を担当。
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