H.TAKAHASHI Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/h-takahashi/ Wed, 05 Jul 2023 04:41:01 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png H.TAKAHASHI Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/h-takahashi/ 32 32 音楽家ロメオ・ポワリエが『Living Room』でたどり着いた境地とは H. TAKAHASHIとも共鳴する制作背景を語る https://tokion.jp/2023/07/04/interview-romeo-poirier-h-takahashi/ Tue, 04 Jul 2023 10:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=195728 初来日した音楽家ロメオ・ポワリエへのインタビュー。聞き手にH. TAKAHASHIを迎え、『Living Room』の着想源や音楽制作のルーツ、日本の音への興味を掘り下げる。

The post 音楽家ロメオ・ポワリエが『Living Room』でたどり着いた境地とは H. TAKAHASHIとも共鳴する制作背景を語る appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>

サウンドコラージュを幾重にも重ね、メディテーティヴで芳醇なアンビエントを奏でるフランスの電子音楽家ロメオ・ポワリエが今年5月に待望の初来日を果たした。ロメオは、東京都庭園美術館で行われた「PRADA MODE」を皮切りに、日本の音楽レーベル〈FLAU〉によるライヴイベント「CROSSS」、代官山「晴れたら空に豆まいて」の3会場でモジュラーシンセを用いたライヴを披露し、詩的な瞑想空間を作り上げた。

昨年発表した最新アルバム『Living Room』は、前作『Hotel Nota』に続き世界中の音楽愛好家の間で話題を呼んだ。ドイツミニマル・音響シーンで活躍するヤン・イェリネックが主宰するレーベル〈Faitiche〉からリリースされた同作は、サンプリングを多用したさまざまな音像が絶妙なバランス感を持って溶け合い、聴き手を遠い記憶の彼方へと誘う。瀟洒なムードをまとったアルバムは生活にもなじむが、タイトルの『Living Room』は部屋の“リビングルーム”という意味だけでなく、もっと奥行きのある言葉のようにも思える。

そんなロメオの創作源を探るべく、「晴れたら空に豆まいて」でも共演していた「Kankyo Records」のオーナーであり音楽家・建築家のH.TAKAHASHIを迎え、アルバムに込めた思いや制作手法、自身のバックグラウンドから日本の音楽についてまで幅広く話を聞いた。

悠久の人類史に思いを巡らす『Living Room』

H.TAKAHASHI(以下、H):2022年にリリースされた『Living Room』は世界中のアーティストに称賛されていましたが、アルバム制作の背景や当時の心情について教えてください。

ロメオ・ポワリエ(以下、ロメオ):時間に関連した作品としてこのアルバムはスタートしました。大昔の先祖が、食べられるものと食べられないものを識別するために、色の感覚を育んだことからインスピレーションを受けています。彼等が色の感覚を研ぎ澄ましてくれたおかげで、今私達が色を識別して絵画等を鑑賞できるようになったというイメージから、自分の音源やすでにある他の音源を集めて曲を作っていきました。

H : それは本当の話ですか?

ロメオ : 色の感覚を発展させたというのは本当の話で、その事実に感動しました。色を識別する能力は、すでに自分達の中にある所与のものとして認識しているけれども、その能力は実は昔の人達が育んだ感覚なのです。先祖が時間をかけて取り込んだ能力が、体の中にあるということ自体に心を動かされました。それが今回のアルバムのインスピレーション源です。

H : 詩的で想像力が豊かなインスピレーションですね。

ロメオ : 「Living Room」の1つの意味は、文字通り、家の中で皆が集まるような空間のことです。私達は、誰かの「Living Room」によって、ある物が何年前に作られたものであるとか、それができた時のこととか、1つひとつの物事に対してそれが作られた時間に思いを馳せることができます。

また、「Living Room」を自分達の体の内側にあるものとしても捉えています。例えば、私達が普通にやっている、指でつかむという行為も膨大な時間をかけて進化していく中で身に付けた能力の1つです。そのような潜在能力や自分の中にあるホームのような概念を「Living Room」という言葉で示しているという側面もあります。

H : 個人的に「Living Room」という言葉は1LDKとかのリビングルームのことだと思っていたので、そのような意味があるとお聞きして、DNAに帰結するようなロメオさんの感覚がとても興味深いと感じました。聴く側としても、アルバムに込められたイメージを知ることで、これから聴き返す時に新しい発見があると思います。

ロメオ : このタイトルはすごく一般的な言葉で、本来含まれている他の意味を想像するのはなかなか難しいですね。レーベルのボスであるイェリネックは、このタイトルが好きではありませんでした。ドイツ出身の彼は、「Living Room」を家の中でも最も心地のよくない場所と捉えていたんです。

H : 家の中のパブリックスペースである「Living Room」には人がたくさん集まるので、そこで時間を過ごすのが嫌だったということでしょうか。

ロメオ : 個人的な思い出に関係するのかもしれませんが、彼にとって「Living Room」は、お父さんにののしられたり怒られたりする場所で、自分の部屋のほうが心地の良い場所だったということだと思います。

H : そんな気がしました(笑)。

聴き手に想像の余白を与えたい

H : よく使われている機材や、今回の制作で使用した機材を教えていただきたいです。

ロメオ : このアルバムでは主にモジュラーシンセを使っていて、とにかくサンプリング音源をたくさん組み合わせています。他の方の音源も使いましたが、自分の音源をリサンプリングすることを音楽の基盤にしたいと思っていました。自分の音源を引き伸ばしたり、少し編集したりしてから、それをモジュラーシンセに取り込み、インプロヴァイズしています。

H:フィルターをいくつか通した音で即興的に演奏されたということですか。

ロメオ : フィルターとはまた少し違って、自分の音源を長めにサンプリングして、そこからインプロヴァイズしたものを取り込んでいます。何かを同期しているわけではないし、BPMに合わせて何かを調整しているわけでもありません。イメージとしては、坂道や揺れている道を、他の人よりも短い足でバランスを取りながら歩いていく、というような感覚です。

H : 本人にしかわからない感覚ですね(笑)。

ロメオ : そうですね(笑)。

H : だからこそ独特の音になっているのだと思いました。

ロメオ : 誰にもある特定のイメージを押し付けたくないという思いがあって、だからVJも使わないし、照明もすごくミニマルにしています。聴く人に想像の余白を与えたい、と常々思っています。

H : 素晴らしいですね。

ロメオ : 高橋さんも感覚としては同じじゃないですか?

H : 自分もあまり固有のイメージを押し付けたくはないんですけど、他のプロジェクト「UNKNOWN ME」では、映像を音楽と一緒に表現しているので、時と場合によるかなと。個人的にはロメオさんが言っていることがよくわかります。なるべく必要以上のイメージを与えないほうが、聴く人にイメージする余地を与えるので、個人的にもそういう音楽はすごく好きです。ロメオさんの音は本当にその通りになっているんだなと感じました。

親子というよりは音楽家同士

H:音楽制作のルーツやどのようなことから影響を受けているかを教えていただきたいです。

ロメオ : 自分のバックグラウンドにはアンビエントロックと呼ばれるようなロックミュージックがあって、音楽を最初に始めたのはドラムからでした。昔から住んでいるブリュッセルでは、ドラマーとして、まだいくつかバンドをやっています。エレクトロニックミュージックを始めるきっかけになったのは、ギターとループペダルです。10代の頃に偶然見つけたフロッピーディスクの音源を使って、ループ音源を作りました。

H:私もガレージバンドの中にあるアルペジエーターとかルーパーみたいなのを使って制作を始めたので、ルーツが近いところにあると知れて嬉しいなと思いました。音楽家でいらっしゃるお父様からの影響は受けていますか?

ロメオ : 父からの影響はもちろんあって、今父のためにアルバムのプロデュースをしています。私が作った曲の上から、父が自分で書いたテキストをセルジュ・ゲンスブールのように読み上げています。今は1つのチームとして音楽制作を共にしているので、互いに影響を与え合っているような関係性ですね。

H:すてきな関係性ですね。

ロメオ : 父とはかなり特殊な関係ですね。父は自分のことを息子というよりは音楽家として見ているし、僕も父のことを音楽家として見ているから、父・息子特有の関係性に悩んだりする、みたいなことは全然なくて。

H:自分にはない感覚です。

ロメオ : お父さんは何をやられている方なんですか?

H:ビデオカメラの設計士ですね。テレビ局とかで使われているすごく大きな撮影用のカメラを設計する人です。

ロメオ : カメラを作っているということは、独自の視点を持っている方ですね。

H:そうかもしれません(笑)。

水の要素は背後からついてくる

H:音楽家だけでなく、写真家やライフガードとしても活動されていたということですが、その影響は音楽にもあるんでしょうか。

ロメオ : 写真はプロではなくて、写真を撮るのが好きというだけです。ライフガードは数年間やっていましたが、今はしていません。プールで働いていたのですが、ライフガードの経験は、私を今やっている音楽に導いてくれたような気がします。小さい頃から水に魅力を感じていたので、水に関係する仕事に就きたかったんです。それで、試験を受けてライフガードになりました。ライフガードは、常に四角い水の中で細心の注意を払っていなくてはなりません。何が起こっているのかをよく観察しながらね。それはトランス状態や忘我の状態とは全く真逆の感覚なので、人にすごく注意を払うようになった結果、人と自分の(精神的な)距離が近くなりました。そういう経験は、今の音楽にも生きていると思います。

H:確かに忘我と集中の狭間を漂っているようなイメージですね。独特な緊張感もありながら弛緩するような感覚もあります。

ロメオ : おっしゃる通りだと思います。

H:これまでのアルバムに水に関するジャケットが多いのは、子どもの頃から水に興味を持っていたことと関係があるのでしょうか。

ロメオ : もちろんそうなんですけど、今は水から外に出て何か他のものを探求しようとしています。

H:だから新しいアルバムは水のアートワークではないんですね。

ロメオ : そうです!(笑)

H:『Living Room』にも水のエッセンスを感じていたのですが、それもやっぱり、水が好きというのが影響しているのでしょうか。アルバムのレビューで、水中マイクのようなものを使っていると書いてあるのを拝見しました。

ロメオ : ご指摘の通りで、水の要素というのは私の背後からついてくるようなイメージです。今回のアルバムでもハイドロフォンや水中スピーカーを使って録音しました。

H:私も水が好きなので、その音がものすごく好みでした。

ロメオ : 高橋さんの音楽も水に関する要素をすごく感じますし、そこが共通点としてあるのではないでしょうか。

鶯張からストーンミュージックまで 日本の音について

H:2021年に東京のレーベル〈FLAU〉から発表したヴァイオリニストのKumi Takaharaさんの曲のリミックスは、どういう経緯で手掛けることになったんでしょうか?

ロメオ : 〈FLAU〉のヤスさんという方から、Kumi Takaharaさんの曲をリミックスしてくれないかという提案を受けて、「Sea」っていう曲、またこれも海に関係していますけど、それをリミックスしました。新しいものを自分で作って足したわけではなくて、もともとある彼女の曲の要素を切り取ってリミックスをしました。

H:気になっている日本のアーティストはいますか。

ロメオ : 日本の音楽には興味はあるんですけど初来日なので、あまり日本の音楽を知らないです。でもいろんな日本の音楽を聴いてみたいと思っているので、おすすめがあったらぜひ聴きたいです。

H:先ほど長谷川時夫さんのタージ・マハル旅行団の話をしていた時に、長い曲の間に1回だけ渾身の力を込めて石に石を叩きつけるストーンミュージックの話で盛り上がりましたね。

ロメオ : 興味深いなと思いました(笑)。ASUNAさんは自分と同じレーベルから曲を出しているので、知っています。あと冥丁さんは、ベルギーの同じフェスティバルでステージを共にしたので知っていますが、基本的にはあまり知らないので教えてほしいです。

H:日本のアンビエントとか実験音楽もいろいろと聴いていただけたらいいなと思いますね。ちなみに、今回の来日でどこか行かれたお店はありますか。

ロメオ :今回の来日は忙しくてあまり自由な時間がなく、どこにも行けていないんですけど、京都に行きたいと思っています。先ほどもお話したレーベルのボスのイェリネックさんは京都を訪れて「uguisubari」っていう曲を作ったんです。

H:歩くと音が鳴る床ですね。

ロメオ : そうです。敵の奇襲を知らせる古来の警報システムのようなものです。それにすごく興味があるので、経験できたら良いなと思っています。

H:なるほど。まだ行かれてはいないんですね?

ロメオ : はい。今回はもう帰らなくてはいけないので、次回来た時は彼女を連れて京都の鶯張を経験したいです。新婚旅行で行こうかな(笑)。

H:マニアックですね(笑)。鶯張の音を録音しますか?

ロメオ : イェリネックさんがすでに鶯張についての音源を出しているので、体験するだけでいいです。鶯張の話から、小さい頃住んでいたアパートの共用部分を思い出しました。アパートはリビング・ベッドルームがある部屋と、キッチン・バスルームがある部屋の2つに分かれていたのですが、その間の共用部分にはタイルが敷いてあって、ある部分を踏むと音が鳴るんです。どのタイルを踏むと音が鳴るかわかっていたので、そこを踏まないように静かに歩いていました(笑)。

H:鶯張の要素は意外と身近なところにあったんですね(笑)。

(左)Roméo Poirier
フランス出身、ベルギー・ブリュッセル在住の音楽家。
2015年にEP『Surfaces』を、2016年にアルバム『Plage Arrière』をロンドンの〈Kit Records〉からリリース。2020年にマンチェスターの〈Sferic〉からアルバム『Hotel Nota』を、2022年にベルリンの〈Faitiche〉からアルバム『Living Room』を発表した。
https://romeopoirier.bandcamp.com
Instagram : @romeo.poirier

(右)H. TAKAHASHI
東京を拠点とする作曲家/建築家。
UKの〈Where To Now?〉、USの〈Not Not Fun〉、ベルギーの〈Dauw〉や〈Aguirre〉、日本の〈White Paddy Mountain〉といったレーベルからアンビエント作品をリリース。また、やけのはら、P-RUFF、大澤悠大らとのライブユニットUNKNOWN MEやAtorisとしても各国から作品を発表している。2021年11月から東京の三軒茶屋にレコードショップ「Kankyo Records」をオープン。2023年3月からはレーベルとしての活動も開始。
https://htakahashi.com/
https://kankyorecords.com/
Instagram : @h.t.a.k.a.h.a.s.h.i

Photography Taiga Inui
Text & Edit Emiri Komiya(Editorial Assistant)

The post 音楽家ロメオ・ポワリエが『Living Room』でたどり着いた境地とは H. TAKAHASHIとも共鳴する制作背景を語る appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>
屈指のアンビエント・ユニット=UNKNOWN MEが語る、アンビエント/ニューエイジとの出会いと、「美」をコンセプトとした新作のこと https://tokion.jp/2021/05/04/unknown-me/ Tue, 04 May 2021 01:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=31047 国内アンビエント・ユニット=UNKNOWN MEが、待望の1stLP『BISHINTAI』をリリース。各々のルーツや新作の制作背景・哲学について、メンバー4人に語ってもらった。

The post 屈指のアンビエント・ユニット=UNKNOWN MEが語る、アンビエント/ニューエイジとの出会いと、「美」をコンセプトとした新作のこと appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>
やけのはら、P-RUFF、H.TAKAHASHI の作曲担当3人と、グラフィック・デザインおよび映像担当の大澤悠大によって構成される4人組アンビエント・ユニット=UNKNOWN MEが、4作目にして待望の1st LP『BISHINTAI』をリリースする。食品まつりやジム・オルーク、MC.sirafu、中川理沙をゲスト・ミュージシャンとして迎えた本作で鳴っているサウンドは、音と音の隙間を意識したような、非常に空間性の高い洗練されたアンビエント・ミュージックだ。“心と体の未知の美しさを探求する”というテーマで制作されたという本作について、そして昨今再評価が著しいアンビエント/ニューエイジという音楽について4人に語ってもらった。

UNKNOWN MEは「アンビエントやニューエイジを語る会」から生まれた

——そもそもUNKNOWN MEというユニットはどのようにして結成されたのでしょうか。

やけのはら(以下Y):UNKNOWN MEを結成したのは5年くらい前で、今ではニューエイジ・リヴァイヴァルとかって言われていると思うんですけど、その当時は自分の身の回りではそういうニューエイジとかアンビエントを聴いている人が少なかったんですよ。そんな時にニューエイジ周辺の音楽を聴くDJの友達のP-RUFFくんがいて、H.TAKAHASHIくんは共通のミュージシャンの知り合いもいて、会う機会があって。たまたま当時みんなが近所に住んでいたので、皆で一緒に飲んでいるうちに音楽も作ってみようという話になったんですね。

——なるほど。

Y:それで1本目のテープを自分達のレーベルから出したあと、早い段階でライヴをやりまして。その時のライヴで映像を入れようという話になって、僕とP-RUFFくんの友達だった大澤くんに映像で参加してほしいって声をかけたんです。その後ライヴも一緒にやっているうちにサポートっていうよりもメンバーなんじゃないかということになって、大澤くんもメンバーになりました。

——最初からアンビエントとかニューエイジといったものを意識した音楽を作ろうと思っていたんでしょうか。

Y:アンビエントとか今でいうニューエイジ・リヴァイヴァル的なものが好きな人達がそういう音楽の話をする会みたいな感じで集まっていたので、そういう意味ではそうですね。それでUNKNOWN MEは今までカセットテープで作品を出しているんですけど、みんなカセットテープで出されている作品が好きということだったり、カセットテープの音質であったり、初期はテープということにもこだわりがあって。すでにテープで作品を出していたH.TAKAHASHIくんにどうやってテープ出してるのか聞いたり、うちらでもテープで出してみたいよねっていう話はしていました。

——最初の1枚は自主レーベル(NOPPARA TAPES)からカセットテープでリリースされていますが、その後はロサンゼルスのNot Not Funからのリリースですよね。

Y:そうですね。1本目のテープを出したあとも曲は作っていたんですけど、テープで30分くらいの長さだと思ったより早く1ヵ月くらいでできてしまったんですね。それでもっともっと作れそうだし、海外でリリースしてみたいよねっていう話になったんです。

H.TAKAHASHI(以下H):それでどこか良いレーベルがないかという話になったんですけど、その1つにNot Not Funがあったんです。もともと僕もNot Not Funからのカセットテープを購入して集めていたっていうのもあってこちらから声をかけさせていただいた感じですね。

UNKNOWN ME – ASTRONAUTS (Digest of Cassette) / NOT NOT FUN

——なるほど。では皆さんはどのようにしてアンビエントやニューエイジと呼ばれる音楽と出会ったのでしょうか。

P-RUFF(以下P):クラブのセカンドフロアとかでアンビエントがかかっていたので、そこからの影響はあると思います。ダンス・ミュージックというアクティヴな音楽とは対極的なものですけど、一度ヒートアップしたものを落ち着かせる音楽という感じでアンビエントというものに触れた感じですね。

Y:そうそう、90年代のダンス・ミュージック・カルチャーの流れだよね。僕もP-RUFFくんとほぼ同じ流れで、テクノが好きだったんですよね。90年代のテクノの多様性というか、例えばアンビエントもジャングルも全部込みでテクノという感じが好きだったので、アンビエントはいつの間にか普通に聴いていたというか、常にずっと側にあった感じですね。ただ、ダンス・ミュージックは作ったりしてても、アンビエントを作ることはなかったので、ずっとアンビエントを作ってみたいとは思っていました。

H:僕はまたちょっと立ち位置が違うと思うんですけど、僕はクラウトロックとかプログレッシヴ・ロックとかから入っていった感じです。キング・クリムゾンやカンとかをよく聴いていて、その流れでロキシー・ミュージックとかトーキング・ヘッズとかを聴いて、ブライアン・イーノを知った感じですね。それが高校生くらいの時で、大学に入ってからはエレクトロニカとか音響系を聴き始めて、CD屋でディグったりしていました。それでカセットテープが流行り始めた10年代初頭にリリースされていた作品を集めたりしていく段階で、これはちょっと作れそうだなと思ってアンビエントを作り始めました。

大澤悠大(以下O):僕はロックを高校の時から聴いていて、それこそこの新作『BISHINTAI』に参加していただいたジム・オルークや、フィッシュマンズなども聴いていたんですけど、今考えるとフィッシュマンズとかはアンビエント的な聴き方をしていたのかなと思います。寝る前に落ち着く的な意味合いでアンビエントを理解していたというか。でも最近はどちらかというと仕事中に聴いたり、日常に寄り添うような感覚でアンビエントを聴いていますね。

なぜアンビエントに惹かれたのか

——アンビエントを聴いて、どんなところに惹かれましたか。

P:自分はアブストラクト・ヒップホップとかブレイクビーツ、トリップホップなんかが好きなんですよね。そういう音楽って音数を減らしてアブストラクトな雰囲気を出すとか長調/短調感がなかったりなど、アンビエントの要素が入っていたりするじゃないですか。そういったところから出る浮遊感に惹かれましたね。

Y:僕は音楽を好きになったきっかけはヒップホップとテクノだったので、旋律とかがメインじゃないというか音のアトモスフィアで聴かせるという音楽の表現を先に知ったと思うんですよね。バート・バカラックとかの音楽構造云々よりも、どちらかというとそういうテクノの文脈のものが先に好きになったので、そういう意味ではアンビエント的な感覚はベーシックにあるのかもしれないです。あとUNKNOWN MEでやる前までは、リミックスとかでノンビートにしたり、アンビエント的なフィーリングのものは作ったことはあっても、思いっきりアンビエントでがっちり1枚ということはなかったんですね。今思うと、UNKNOWN MEを始めるタイミングというのは、カームなものというか、人のエゴが少ない音楽を欲してたり作りたかったりした時期だったかもしれないですね。僕はそれまで積極的にダンス・ミュージックのDJをやっていたんですけど、その反動というか。

H:眠れない時に精神的に堪えないような音楽を欲していて、ブライアン・イーノの『Ambient 1: Music For Airports』とかハロルド・バッドを聴いていたんですね。それでアンビエントにハマった気がします。

Brian Eno『Ambient 1: Music For Airports』

Y:みんな疲れた時にアンビエントを聴きがちになるという。

O:僕も基本的には精神の安定を求めるために聴いていました。でも最近は、精神を落ち着かせるためだけではなく音の質感を楽しむためにアンビエントを聴く機会が僕の中ではすごく増えていますね。

——例えばアンビエントは環境に向けて開かれるような音楽で、本当の意味のアンビエントは社会的にならざるを得ないという考え方もあると思うんですが、どう思いますか。

Y:僕はずっとダンス・ミュージックのDJをやっていて感じるのは、ダンスのリズムってすごく社会性があるものだということですね。様々なベクトルの色々な音の要素も、そこに共有できるリズムがあればつながれる、分かり合えるというか。それに対してアンビエントはどちらかというとつながらなくてもいい音楽なのかなと僕個人としては思います。だからアンビエントを社会的には捉えてないかもしれないですね。

O:僕は逃げ場所みたいなものをイメージしてアンビエントを聴いているような気もします。社会とつながるというよりは、もう少し社会と切り離されたものとして聴いている感じですかね。ある意味その行動自体が社会的なのかもしれませんが。

H:アンビエントが社会的にならざるを得ないとかはあまり考えたことはなかったんですけど、今のアンビエント/ニューエイジ・リヴァイヴァルとか、アンビエントというものを下敷きにしていろんな音楽と融合して、新しい感覚や聴こえ方が生まれているのはすごくおもしろいなと思っています。

ニューエイジ・リヴァイヴァルについて思うこと

——では昨今のニューエイジ・リヴァイヴァルについてはどう捉えていますか。

Y:個人的にはLight In The Atticから出た『I Am The Center (Private Issue New Age Music In America, 1950-1990)』とMusic From Memoryの最初の1、2枚から火がついて、聴く側として接点が増えていった感じですね。

P:ニューエイジは最後のレア・グルーヴだみたいな話はみんなでよくしていましたね。和モノとかは結構掘り尽くされたというのは言い過ぎかもしれないですけど、そんな中であまり手を出されていなかったニューエイジをおもしろいプレゼンの仕方で紹介するレーベルが増えてきて、聴いているうちにおもしろいなと思いましたね。

——例えばLight In The Atticから出された『Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990』に代表される日本の環境音楽の再評価についてはどう感じていますか。

V.A.『Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990』

P:僕はそのコンピは好きですね。僕はもともと細野晴臣さんの音楽がすごく好きだったんですけど、彼の作った無印良品のBGMのような音の質感がある曲をレコードで聴くということがあまりなかったので、非常におもしろく聴けました。あと編纂者の1人のスペンサー・ドーランってすごく日本の音楽に詳しくて、優れた審美眼を持っているなと思いましたね。

Y:僕はそのコンピ自体への思い入れはなくて……というのも吉村弘さんとか、このコンピに入っている人の作品は、高騰する前に買って聴いてたんですよね。だからそのコンピが出た時は、決定打が出ちゃったなくらいに思っていました。その頃はUNKNOWN MEで何本か作品を作っていたから、このコンピが頂点になってブームとして消費されてしまったらどうしようかなとも考えていましたね。

——H.TAKAHASHIさんの音楽は吉村弘や芦川聡の音楽の影響を受けているように感じるんですが、実際どうなんですか。

H:それはよく言われるんですけど、自分が音楽を作り始めた時は彼らの存在を全然知らなかったんですよね。それで彼らの作品を聴いてみたんですけど、確かに影響を受けていると言われてもおかしくないなとは思いました。コンピに関しては、その発売前からその辺りは結構掘っていましたけど、良いコンピだなとは思いましたね。

「きれいな音」と「隙間」に満ちた新作について

——では今回リリースされる新作『BISHINTAI』についてお伺いしたいのですが、本作は「心と体の未知の美しさを探求する」というテーマだそうですね。

Y:もともとは何本かテープを出して、ライヴもしていた流れで、自分達が主催してアンビエントのイベントをやろうということになったんですよね。その時に『美・心・体』というイベント名をつけて、ムードマンさんとか中村弘二(ナカコー)さん、MC.sirafuさんと中川理沙さんのユニット「うつくしきひかり」に出てもらったんですよ。このイベントが出発点となったというか、イベントのコンセプトとして“美”をテーマにしたところからすべて派生していっている感じですね。

O:イベントではマッサージだとか美に関するコンテンツもありましたしね。

Y:そうそう。あまりマニアックなアンビエント・イベントにはしたくなくて、開かれたイベントにしたいよねってみんなで話してて出たコンセプトが”美”だったんです。

——今作は過去にリリースされた作品に比べると音と音の間を意識したようなミニマルな作りになっているように感じたのですが、どこまで意識されていたのでしょうか。

Y:今作の1つ前に出たのが『Astronauts』というアルバムなんですけど、実は『Astronauts』を作る前から『BISHINTAI』も作っていたんですよね。だから制作と出た順番が明確に分かれていないので、ミニマルということはあまり意識していないですけど、今作のコンセプトは“美”なので、きれいな音にしようという意識はありました。

P:今作は制作期間が長かったというのもあって、その間に音が削ぎ落とされていったようにも感じますね。

Y:ミニマルということで言えば、UNKNOWN MEは景色を変えるようなコード展開をする音楽性でもないので、自分達の認識としては最初から一貫してミニマルな音楽だと思っています。

UNKNOWN ME – BISHINTAI (Digest of LP) / Not Not Fun

——なるほど。とはいえ、過去の作品が音で空間を埋め尽くしているような感じがしたのに対して、今作はそこから音を引いていったようにも聴こえるのですが。

Y:それはあるかもしれないですね。もしかしたら自分達がアンビエントの作り方が上手くなっているのかもしれない。例えば音高やハーモニーを縦軸として、それに対する横軸の音と音の間がリズムになるわけですが、その両方の隙間の作り方というか、巨大な隙間があっても足りないと思わせるわけではなく、「隙間に何かが立ち上がってくる隙間」、「有である無」を作る作業といえばいいんですかね。そういうことは5年前はわかっていなかったけど、『BISHINTAI』を作っている時には、いかに巧妙にそういう隙間を作るかという作業を延々とやっていたような気がしますね。5年前くらいはその辺りは意識せずに、もう少し無邪気だったように思います。そういう意味では今作はステップアップした作品なのかもしれないですね。

作品にヴァラエティを生んだゲスト達の存在

——今作には食品まつりさん、ジム・オルークさん、MC.sirafuさん、中川理沙さんが参加されていますが、この4人は本作でどういう役割を担ったのでしょうか。

H:客観的な話なんですが、違う音楽性の方……例えばMC.sirafuさんのスティールパンや中川さんの声楽的なコーラスとか、自分達には技術的にできない音楽性を持った方に参加していただいたことで、特別でヴァラエティに富んだアルバムになったのかなと思っています。食品まつりさんにしても、自分達にはないリズム感を注入してくれたことで、今までとは違う曲に仕上がっていると思いますね。

P:僕らってシンセやサンプラーを使って作ることが多くて、演奏が卓越した人っていないんですよ。そういう意味でプレイヤー的な人が入ったことで、今作で音楽性が広がったように思いますね。

Y:大澤くんはどのように聴こえました?

O:僕としては今までのリリースに比べると、少しゴージャスな質感があるように感じましたね。あと、今のアンビエントの作品っていろいろな形のものが出ていますけど、それにもフィットするような作品になっているようにも思いました。

自分達の作品をどのように位置づけるか

——UNKNOWN MEは日常の延長線上にあるようなアンビエンスを鳴らしているようにも感じるのですが。

P:日常っていうことについて言えば、UNKNOWN MEで音楽を作る時って、自分の部屋かメンバーの部屋に行って作ることが多いんです。集まって作業して、最後にお酒飲んでご飯食べてみたいなリラックスした感じで作ってて、スタジオに入ってさあやるぞっていう感じではないんですよ。もしかしたらそういうところが無意識のうちに反映されているのかもしれないですね。

Y:このアルバムは単純に音のテクスチャを気にして作っていったんですよね。だから例えばファンタジックな場面とかを逆算して何かを表現しようとはしていないんです。

P:過去の作品もテーマを決めて、そことのエキゾ感というか距離感を表現するということをやっていたんですよね。エキゾって結局距離じゃないですか。だからそのテーマとの距離が出ているというのは確実にどの作品にもあると思いますね。

Y:そうそう。作品は僕達の自己表現だけど、すごく対象化して作っている感じ。今回で言えば、自分達が共通で考えている“美”のイメージに向かって作っていくみたいな感じですね。

——では最後に、この『BISHINTAI』というアルバムをご自宅のレコード棚に並べるとしたら、その両隣にはどんなアルバムが並んでいますか。

Y:アンビエント/現代音楽のところと80年代のイギリスの音楽の間に置きたいので、Susumu Yokota『Sakura』とThe Durutti Columnとの間ですね。

P:僕はGigi Masin『Talk To The Sea』とWilson Tanner『69』ですね。

O:最初聴いた印象はゴージャスな感じがしたので、まずThe Beatlesの『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』。それとAphex Twinの『Selected Ambient Works 85-92』ですね。

H:僕はMusic From Memoryから出たDip In The Poolの12インチとOneohtrix Point Neverの『R Plus Seven』かな。

——ありがとうございました!

*

UNKNOWN ME
やけのはら、P-RUFF、H.TAKAHASHIの作曲担当3人と、グラフィック・デザインおよび映像担当の大澤悠大によって構成される4人組アンビエント・ユニット。“誰でもない誰かの心象風景を建築する”をコンセプトに、イマジネーションを使って時間や場所を自在に行き来しながら、アンビエント、ニューエイジ、バレアリックといった音楽性で様々な感情や情景を描き出す。2016年7月にデビュー・カセット「SUNDAY VOID」をリリース。2016年11月には、7インチ「AWA EP」を、2017年2月には米LAの老舗インディー・レーベル「Not Not Fun」より亜熱帯をテーマにした「subtropics」を、2018年12月には同じく「Not Not Fun」より20世紀の宇宙事業をテーマにした「ASTRONAUTS」をリリース。「subtropics」は、英国「FACT Magazine」の注目作に選ばれ、アンビエント・リバイバルのキー・パーソン「ジジ・マシン」の来日公演や、電子音楽×デジタルアートの世界的な祭典「MUTEK」などでライブを行った。2021年4月、都市生活者のための環境音楽であり、心と体の未知の美しさをテーマにした待望の1stLP「BISHINTAI」をリリース。

TOKION MUSICの最新記事

The post 屈指のアンビエント・ユニット=UNKNOWN MEが語る、アンビエント/ニューエイジとの出会いと、「美」をコンセプトとした新作のこと appeared first on TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報.

]]>