ART Archives - TOKION https://tokion.jp/category/genre/art/ Wed, 28 Feb 2024 08:51:47 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png ART Archives - TOKION https://tokion.jp/category/genre/art/ 32 32 ルース・アサワ——線が彫刻になるとき https://tokion.jp/2024/02/28/ruth-asawa/ Wed, 28 Feb 2024 08:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=221905 昨年からホイットニー美術館にて回顧展が開催されていた日系2世のアメリカ人アーティスト、ルース・アサワ。大きな功績にもかかわらず日本では知名度の低いアーティストの作家性を育んだルーツを探り、複数の次元を横断する彼女の作品を改めて考える。

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Laurence Cuneo, Ruth Asawa holding a paperfold, c. 1970s. Gelatin silver print, 9 13/16 × 7 5/16 in. (24.9 × 18.6 cm). Courtesy of the Department of Special Collections, Stanford University Libraries. Photograph © Laurence Cuneo. Artwork © 2023 Ruth Asawa Lanier, Inc. / Artist Rights Society (ARS), New York. Courtesy David Zwirner

ニューヨークのホイットニー美術館は、開館以来、アメリカ人作家の仕事を紹介することを一つの使命として活動してきた施設である。その意味で、今回のアサワ展は特殊な意義をもつ。アサワはアメリカ国籍と市民権をもつアメリカ人作家であるが、同時に、日本にルーツをもつ日系二世の作家でもあるからだ。同館は、1948年に日本からアメリカに移住した移民一世の画家・国吉康夫の回顧展を開催している。同館が日系人作家の回顧展を開催するのは、(米国在住経験のある草間彌生を除けば)国吉以来のことだろう。

昨年から今年にかけて、ホイットニー美術館で、ルース・アサワの回顧展「Ruth Asawa Through Line」(2023年9月16日〜2024年の1月15日)が開催された。アサワは、日本ではまだ知名度がそれほど高くないものの、近年国際的な再評価が著しい作家である。
アサワといえば、金属のワイヤーを編み込んで制作された球体状の彫刻作品で知られている。しかし、ホイットニー美術館の回顧展は、むしろ代表作となるワイヤー彫刻の出品数を抑え、彼女のドローイングや紙の作品を多く展示することによって、アサワの作品の多様性とさまざまな素材を横断する造形的な実践に焦点が当てられた。

とすれば、国吉の回顧展とアサワの回顧展のあいだには、実に76年の歳月が横たわっていることになる。が、国吉とアサワはある同時代性を共有していた。両者は、ともにアメリカで太平洋戦争の開戦を経験したからだ。アメリカに在住していた日系人たちの人生は、それにより大きく変わった。日系人は、多くがアメリカ市民であるにもかかわらず、突如として敵性外国人として扱われることになった。アサワも例外ではなかった。1942年にアサワ家はそれまで居住していた土地を追われ、日系人キャンプに強制収容された。しかし、この収容施設でアサワはほかの日系人の美術家たちと出会い、彼らから素描などを学ぶことにより、芸術的領域への関心を深め、自らの才能に目覚めていくことになる。

ルースは、1926年に7人きょうだいの4番目の子供としてカルフォルニアに生まれた。アサワ家は、農地をもたない「トラック・ファーマー」として、さまざまな農産物を育て販売して生計を立てていた。当時の法律では、ルースの両親はアメリカ市民になることができず、耕作地をもつことも許されていなかったことによる。一家の生活は豊かではなかった。アサワもまた、6歳になる頃には一家の労働力として農業を手伝っていたという。
だが、彼女は繰り返し農業という仕事が自身の芸術に与えた影響を語った。種を蒔き、植物を育てる過程で目撃した自然の生成力は、彼女の芸術の重要な手がかりになったからだ。自然は、その機能と可能性をその形態のなかに宿している。アサワは、自然の形態を手がかりにすることを通じて、多くの素描や彫刻を残した。

同時代の日系人と同じく、30年代から40年代にかけてのアサワの人生は苦難の連続であったはずである。30年代に、アメリカが大恐慌時代に突入すると、日系人は激しい排外主義の対象となってゆく。また、1941年にアメリカは第二次世界大戦に参戦し、その翌年には、真珠湾攻撃を発端とする太平洋戦争がはじまった。

戦争が終わり、収容所から解放されたのち、アサワは美術教師を目指すが、終戦直後のアメリカ国内の日系人差別は根深く、彼女が置かれていた当時の環境では、アメリカで日系人が美術の教員になることは事実上不可能であった。そのような状況に置かれていたとき、アサワは二人の友人を通じて、ノース・カロライナにある芸術学校の存在を知る。

その芸術学校は「ブラックマウンテン・カレッジ」と言った。アサワは、46年にブラックマウンテン・カレッジの夏期講習に参加し、三年間をカレッジで過ごした。その学校は、1933年に、周囲を山々が囲む小さな町「ブラックマウンテン」の郊外の山のふもとで開校した。開校からしばらく経ったあと、カレッジは「レイク・エデン」と呼ばれる小さな湖に面する場所に、モダニズム様式の建物をつくりキャンパスとした。のちに、この小さな学校こそがアメリカの戦後美術に巨大な足跡を残す、いわば「伝説の芸術学校」として知られることになる。
ブラックマウンテン・カレッジは、サマースクールという夏期講座を設けており、そこを訪れた講師陣には、ジョン・ケージ、マース・カニングハム、バックミンスター・フラーら錚々たる人物たちがいた。領域横断的な実験を許す自由な学内の気風が、同校で学んだロバート・ラウシェンバーグ、サイ・トゥオンブリー、スーザン・ヴェイユ、レイ・ジョンソンといった芸術家のその後の仕事を後押ししたことは疑いえない。

ブラックマウンテン・カレッジの美術分野で主導的な立場を果たしたのが、ドイツの芸術学校「バウハウス」で教鞭を執っていたジョセフ・アルバースである。アルバースは1933年の同校の開校に合わせて妻のアニ・アルバースとともにアメリカに移住し、夫妻はともに同校の芸術教育を担った。アサワは、入学後、アルバースの基礎デザインと色彩コースを受講した。またアサワは、フラーの授業にも参加し、デザイナー、発明家であり思想家として多領域にわたる超人的な活動を行なっていたフラーの思想やデザインに傾倒していく。

 二人の教師の存在が、アサワのその後の人生を決定的なものにした。その影響の大きさは、アサワ自身によって繰り返し語られている。彼女の作品を見れば、アルバースとフラーの実践との連続性がいくつも見出されるだろう。アルバースとフラーとの交流は生涯にわたって続いた。アルバースとフラーの自宅には、アサワの作品が飾られていた。

 彫刻作品で知られるアサワだが、彼女は彫刻を専門的に学んだわけではなく、また「彫刻家」を自認していたわけでもない。むしろ、アサワの仕事の独自性が、アルバースの授業を受講したあとに制作された素描や平面作品にすでに見出される点が重要である。アサワの素描と、後に展開されることになる彫刻は多くのつながりをもつ。

 アルバースの多くの教育実践のなかで、アサワにとってとりわけ重要だったのが、ネガティヴ・スペースの活用可能性である。ネガティヴ・スペースとは、実体的な物に対置される、非実体的な空間のことだ。たとえばアルバースは、指と指のあいだの空間や、椅子の脚の下の空間は、実在する指や椅子と同等に重要であると学生たちに語った。アサワの彫刻では、実際に、ワイヤーでつくられた球体のなかに、別の球体が格納される。それは、球体の内部の、ネガティヴ・スペースを活用するがゆえに可能になったものだ。アサワの素描においても、アルバースの教えを忠実になぞるように、線そのものではなく、線と線の「あいだ」からかたちが生まれることに意識が置かれている。そこで線を引くことは、紙の上に空白からなるかたちを造形することにほかならなかった。

 アサワは自身の彫刻に使われるワイヤーの線を、紙の上に展開された素描の線の延長にあるものみなしていた[1]。ワイヤーという一本の線を編み込み立体化するアサワの彫刻は、空間に展開された素描だった。つまり、アサワの彫刻では、最初に線として開始されたものが、面として広がってゆき、そしてそれが球体となり、形態が閉じるまで展開される。その意味でアサワの作品には、線→面→球体という展開がある。ゆえに、彼女の作品は、このような複数の表現形式の横断性、あるいは線、面、立体という異なる次元の変換と横断という特質をこそ備えていたということだ。

 同じことが、アサワが多く手がけた折り紙の作品にも言える。日系人であるアサワは幼少期から折り紙の文化に触れることができたが、偶然にアルバース自身もまた自身の教育活動において紙をさまざまな手法で立体的に折るプログラムを取り入れていたのだった。アサワはこの二つをルーツとして、ブラックマウンテン・カレッジを卒業後も紙を立体的に展開した作品を持続的に制作し続けた。紙を折ることは、平面を屈折させ、立体として展開することである。そのため折り紙は、平面と立体の区分を横断する。折り紙とは、複数の幾何学的な面の構成体からなる立体である。

 その意味でアサワの芸術は、線描、紙、彫刻といったそれぞれの芸術ジャンルを拘束する次元を可変的なものにするのだ。アサワの芸術が、素描、紙、彫刻という三つのジャンルに等しい重要性を与えながら展開されたことは、この問題と直結している。通常の芸術ジャンルの区分は意味をなさない。そこではすべてが彫刻であり、同時にすべてが素描でもある。それぞれは、一次元から三次元までの複数の次元を越えることで連続する。そのいずれもが、彼女の芸術においてはたがいに連続し、知的に呼応しあう関係にある。

 このような次元の変換(線、面、立体への展開可能性)という観点において彼女の芸術を考えたときに重要なのが、フラーの存在である。フラーは、「ジオデシック・ドーム」をはじめとする構造体をデザインしたことで知られるが、一貫して、三角形を基準として構造設計を行うことを重視していた。その際、重要なのは、フラーが多面体などの幾何学的図形を説明する際に、木棒や糸をつかって構造体のモデルをつくり、学生たちの前で実演したことである。すなわちフラーのドームもまた、アサワと同様に「線」から始まるということだ。

三角形は、面をつくりだす材料としては最も少ない三つの棒でつくりだされる図形だ。三角形は、最もシンプルであるにもかかわらず、幾何学的図形のなかでも強固な構造を可能にする。それは、四本の棒でつくられる四角形よりもはるかに安定しており強度も高い。フラーにとって三角形は、最も少ない材料で最大の効率を実現するかたちだった。フラーは、三角形のユニットを基準として、20枚の正三角形の面で形成した正二十面体を基本骨格とした球体のドームを設計した。とすれば、フラーは、三つの「線」をつなげて三角形という「面」をつくり、さらにそれを連続させることで三次元の「球体」のドームをつくったと言える。そこには、同様に「線、面、立体」の展開可能性が存在する。実際、アサワやフラーにとって、線、面、立体はたがいに隔絶した場所に存在するものではなく、むしろ連続性、発展可能性において捉えられていたと言えるだろう。

 アルバースやフラーの活動を引き継ぐように、生活と制作の拠点としたサンフランシスコにおいてアサワは、アーティストとしてのみならず、芸術教育の活動家として知られていた。彼女は折り紙をもとにした紙を折るワークショップや、フラーの幾何学をもとにした授業を子どもたちに向けて実施した。アサワにとって、アルバースやフラーから受け取ったものを作品として創造することと、それを他者に分け与えることに、いかなる区別もなかったはずである。その活動において、つくること、学ぶこと、それを教えることは、すべて一体である。

[1] Asawa, typed statement for J.J Brooking Gallery, June 5, 1995, Ruth Asawa Papers, box 127, folder 7. 

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誰もが楽しめるオープンスペースとしてのアート ステファン・マルクス インタヴュー -後編- https://tokion.jp/2024/02/28/interview-stefan-marx-part2/ Wed, 28 Feb 2024 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=224805 ファインアートからコマーシャルの分野まで多面的に活躍してきたステファン・マルクスへのインタヴュー後編。

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ステファン・マルクス

ステファン・マルクス
1979年ドイツ生まれ。ハンブルクからベルリンを拠点に移し、活動するアーティスト・イラストレーター。ドローイング、スケートボード、本、スケッチブックなど、彼が「愛するもの」を活動源とし、作品集の出版、アートエキシビション、パブリックアート、レコードジャケットのデザインなど幅広い分野で才能を発揮している。ドローイングや絵を通して彼の世界観、思想、スケートボーダーとしてのインディー精神を表現し、独自の目線で世界を描く。弱冠15歳でインディペンデントT シャツレーベル「Lousy Livin’Company」を立ち上げ、少数生産ながらクオリティー・クリエイティビティの高いT シャツをデザインしている。また、ブランドや企業とのコラボレーションも多数手掛けており、「マゼンタ・スケートボード」や「ファイブ ボロ」等のスケートボードブランドから「イケア」までプロジェクトは多岐にわたる。これまでに「Nieves」や「Dashwood Books」等の出版社から数々の作品集が出版されている。
@stefanmarx

ドイツ・ベルリンを拠点に活動するアーティスト、ステファン・マルクス。彼は少年時代から愛好しているスケートボードや音楽などのカルチャーの影響から、Tシャツやレコードジャケットのデザインといった創作活動を始め、その後ファインアートの分野に進出。インスピレーションが凝縮された浮遊感のあるタイポグラフィは、読み取る各人の想像力を利用し、非限定的なイメージの拡張をもたらすデバイスのような効果を持つ。

また、日常の観察と絶え間ないプラクティスによって生み出されるドローイングは、ストリートグラフィティよりも柔和で愛らしくコミカルな印象で、素直な感性が幅広い層に共感を呼び起こしている。

さらに彼の作品が構築的な空間やアーキテクチャ・プロダクト上に施されることにより、形而下の意味を超えた暗示のようなインパクトが生じ、場所や存在に新たな意味をもたらす。

自身の創造性を発展させつつも、彼のインディペンデントな姿勢は不変で一貫しており、近年では「シュプリーム」や「コム デ ギャルソン」等のファッションブランドとのコラボレーションをする等、アートとコマーシャルの融合についても可能性を広げてきた。

今回来日したステファンにインタビューを実施。後編では彼の代表的作品テーマであるタイポグラフィやパブリックアートについてのスタンス、新作の本の紹介と趣旨、他アーティストとのコラボレーション等についてヒアリング。アートをオープンスペースとして捉え、人々の自由な感性の交流や相乗効果を導く取組みについて伺った。

体験から得たインスピレーションの視覚化、タイポグラフィ

−−先日NYのギャラリー「Ruttkowski;68」にてタイポグラフィ作品中心のエキシビジョンが開催されましたが、そのステートメントに「テキストは歌詞からインスパイアされている」とありました。

ステファン・マルクス(以下、ステファン):確かに初期の頃は歌詞からインスピレーションを受けて作品を制作していましたが、現在は違います。例えば『Sunrise Sunset』は言葉と構図のアイデアが頭の中でイメージ化され、作品として具現化したものです。最近の作品は画面上の上部と下部に言葉が配置され、間にスペースがある構図にフォーカスしています。

また『Listen to the Rain』は日本で着想を得たものです。日本では雨が降ると多くの人がビニール傘を差し、その上に雨粒が落ちると大きな雨音がする。「雨の音が聴ける」という日本ならではの現象が作品のインスピレーションになりました。

このようにタイポグラフィ作品は、さまざまな場所を訪れ、状況や体験から得たインスピレーションがヴィジュアル化されたものと言えます。

−−最近の作品は詩的な雰囲気のものが多いですね。

ステファン:言葉もドローイングも視覚的なイメージとして捉えています。常に言葉とドローイングのことを考えていて、日頃からあらゆる発想を頭に蓄積し、それらがミックスされて作品になっています。

歩いている時、電車に乗っている時、音楽を聴いている時、本を読んでいる時…時にはSNS上のコメントを読んでアイデアを思いついたりもします(笑)。

タイポグラフィ作品では、言葉上の意味だけでなく、そこから派生するイメージを効果的に表現できないか考えています。

『Heaven』という作品はシンプルなワードですが、視覚的な効果の組み合わせによって複雑な意味を擁し、創造の枠を超えることができます。『Moonlightsss』も同じくシンプルな言葉ですが、蛍光色が暗闇で光ります。

『Love Letter』においては、作品の裏面に「〇〇から△△へ」という情報を記し、一点物としてカスタマイズ可能にしました。こうすることで言葉の持つ重みや意味合いが変化するのがおもしろいですね。

−−今回は日本語の作品にも挑戦しました。

ステファン:前回日本を訪れた際、空港やレストランでスタッフが「おまたせしました」という言葉を使うのを何度も耳にし、どんな意味なのか気になっていて、友人に意味を教えてもらいメモしていました。

そして今回、この「おまたせしました」をタイポグラフィの作品にしてディスプレイしようと思い立ちました。TOKYO ART BOOK FAIRのサイン会では列に並んで待ってもらうこと、また本展にはずっと参加してほしいと言われていたこと、二重の意味を込めたかったんです。

今後も日本語の作品に取り組みたいと思っていて、ひらがな、カタカナ、数字などを勉強しています。

誰もが楽しめるオープンスペースとしてのアート ステファン・マルクス インタヴュー -後編-
誰もが楽しめるオープンスペースとしてのアート ステファン・マルクス インタヴュー -後編-

地域を反映し、誰もがアクセス可能な民主的所在のパブリックアート

−−タイポグラフィの作品の中には、ある種のビルボードのように、都市空間の中で大きなスケールで設置されているものもありますね。このプロジェクトについて教えてください。

ステファン:ドイツの都市の30ヵ所にパブリックアートを設置するプロジェクトがあり、そのうちの3ヵ所……ボーフム、ドルトムント、エッセンにオファーを頂きました。その後、スイスのバーゼル等、他の都市でもオファーを頂きました。デュッセルドルフではクンストハレという美術館の内部の壁に描いた作品を、外部からも誰でも観ることができるようになっています。

パブリックアートは誰もが無料で鑑賞できるという民主的な点が好きなんです。制作は非常に大変で、作品を描くのにふさわしい大きな壁を見つけてオーナーに許可をもらったり、高所作業が可能か確認してリフトの費用を確保したりと、なかなか一筋縄ではいかないことが多いですが、すごく楽しんでやってます。たくさんの人々に自分の作品を知ってもらうきっかけにもなりました。

−−公共スペースにてスケールが大きな作品を制作する際に気をつけていることはありますか?

ステファン:街中で大きなスケールで制作する場合、基本的に色はモノクロにします。最近ではカラーの作品も制作していますが、白黒の方がシンプルで周囲に溶け込むのではないかと考えています。白と黒という対照的なコントラストで表現を引き立たせるのが好きなんです。

パブリックアートの場合、大きなスケールの作品を多くの人が目にする空間に設置するため、その場所の成り立ちや歴史を調査しながら制作を進めます。

最初に実施した3つの都市はかつて鉱業が盛んな地域だったので、19世紀に労働者の間で親しまれていた歌の歌詞からインスピレーションを受けて言葉を選びました。

また、壁のサイズや形を考慮して、作品がどんな見え方になるか、建築的、空間的に何度も検証しながら作品を制作していきました。

日常世界を観察し多様な形態の作品を描き続けることで、あらゆる人に楽しんでもらいたい

−−今回TOKYO ART BOOK FAIRに初参加されました。新作の本についてご紹介ください。

ステファン:NY Art Book Fairは初期から毎年参加してますが、TOKYO ART BOOK FAIRは今回初めて参加しました。友人のHIMAAさんや、ユトレヒト、twelvebooks等、サポートしてくれる仲間から「いつ来るの?」と毎年言われてたので、実現できたのが嬉しいです。

今回の新作は4冊あります。まず蛇腹折りの本が2冊。公園のある一点に立ち、同じ位置で360°回転しながらパノラマの絵を描くシリーズを書籍化したものです。1冊は2023年の4月に東京を訪れた際、「スタイリスト私物」の山本康一郎さんが駒沢公園を案内してくれた時に作ったもの。もう1冊は代々木公園で描いたものです。2006年以来、来日するたびに毎回代々木公園で絵を描いていて、あるレコードのジャケットにもなっています。

それとNYの「Dashwood Books」と制作した本が1冊、ベルリンの伝統的な出版社「Hatje Cantz」から出版された塗り絵の本が1冊です。後者は、2019年8月にThe NY Timesに毎日連載していた31点の挿絵を塗り絵できるようにしたものです。子ども達が大胆に色を塗り込めるように大きいサイズにして、簡単にめくれるよう、ごく軽量の紙を採用しました。

この本は子ども向けではありますが、同時に大人がアーティストブックとしても楽しめるようにしています。

−−なぜ子ども向けの本を制作することにしたのでしょうか?子ども向けということで特別配慮したことはありますか?

ステファン:本を作る時はいつも、特定の誰かのためにとは考えてなくて、どんな人でも楽しめるものを作りたいと考えています。以前スイスの「Rollo Press」と子ども向けの本を作った時も、子どものプレゼントのために買ってくれる人も多かったのですが、同時に大人も楽しんでくれていました。

基本的に自分の表現をあまりカテゴライズしたくなくて、常にみんなが楽しめるものを目指しています。言語と違って、絵というものは世界中の人が一目見て瞬時に理解できるものです。そういう絵の作用をベースにしてシンプルに表現することが、多くの人々の共感を生むのではないかと思います。

僕のファインアートの作品は高価で誰もが買えるものではないですが、レコードやZineはいろんな人に手に取ってもらうことができます。多様なアウトプットを提供することで、すべての人がアクセスできる民主的な場を作りたい。ファインアートだけでなくコマーシャルの活動も続けています。Tシャツはその最たる存在だと思います。

この姿勢は、自分の日常や周りにあるものをよく観察して、感じたものを描き続けることにも通じていると思います。

創造スペースを分かち合うことでさらなる発展を生み出す、アーティストとのコラボレーション

−−これまでにさまざまなブランドとコラボレーションされていますが、「コム ギャルソン」とのコラボレーションでは、構築的なシェイプのドレスの全面にステファンさんの作品が大胆に施されていました。お互い非常に芸術的な指向が強いと思いますが、コラボレーションはどのように進めていったのでしょうか?

ステファン:始まりは唐突でした。ある日曜日の夜、NY Art Book Fairに行くためのパッキングをしていたら、川久保さんのアシスタントの方から突然メールが来たんです。「コム デ ギャルソン」のコレクションで僕の作品を使いたいという内容でした。彼等が使いたい作品は決まっていて、それがどのようにデザインされるかは「コム デ ギャルソン」に全て委ねるという条件。ショーで発表されるまでは、どんなものになるのか誰にもわからない状況でした。僕は条件を全て理解した上で、受けるか否かの返事をしなければならなかったんです。

「コム デ ギャルソン」のコラボレーションの方法は非常にストレートなものですが、自分もレコードジャケットのデザインの際に同じようなやり方をしているので、どこか共感できるものがありました。即座に「やりましょう」と返事をしました。

実際にコラボレーションの内容はショー当日まで全くわからない状況でした。PRのチームもショーで初めて見たそうです。前衛的なヘアスタイルのモデルが着たドレスはすごく良くて、結果には大変満足しています。

「コム デ ギャルソン」のコラボレーションはとても勉強になりました。お互いにリスペクトがあるからこそ創造的なスペースを分かち合い、自由に取り組むことによって、さらに創造性を発展させることができるんです。

−−これまで何度も来日されていますが、先述の『Listen to the Rain』のように日本でインスピレーションを受けたものや、おもしろいと感じたものはありますか?

ステファン:日本は友達がいるし好きな食べ物もあるので大好きな場所です。思い出深いプロジェクトを複数経験できたこともありがたく思っています。これまでに書店のユトレヒトやギャラリーの「SALT AND PEPPER」で展示をしたり「GASBOOK」とさまざまなプロジェクトを行ったり「ユニクロ」や「ビームス」と仕事もしました。

日本は街中にある何気ないものにまで細やかに配慮が行き届いているところにインスピレーションを受けます。また、都市や街・建築がさまざまなレイヤーでどのように構成されているか観察するのが好きなんですが、東京は他の都市とは全然違う感じがしています。地下鉄のしくみや社会、コミュニティーの様相は、一見複雑に見えますが不思議と機能している。その観点では他のアジアの都市とも東京は違うように感じますね。

−−今後創作を続けて実現したいこと、さらに挑戦したいことについて教えてください。

ステファン:2023年はアートショーや展示で世界中を飛び回っていたので、2024年はアトリエにこもって静かに創作に向き合いながら新しいことにチャレンジしたいと思っています。具体的にはイタリアで石やジュエリーを使って友達と作品制作をするプランがあります。彫像のような3Dのものではなく、プレートのように、フラットに石を用いるドローイングのようなアプローチを考えています。

Photography Masashi Ura
Edit Akio Kunisawa

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誰もが楽しめるオープンスペースとしてのアート ステファン・マルクスインタヴュー -前編- https://tokion.jp/2024/02/27/interview-stefan-marx-part1/ Tue, 27 Feb 2024 10:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=224773 ファインアートからコマーシャルの分野まで多面的に活躍してきたステファン・マルクスに、創造の原点について話を聞いた。

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ステファン・マルクス

ステファン・マルクス
1979年ドイツ生まれ。ハンブルクからベルリンを拠点に移し、活動するアーティスト・イラストレーター。ドローイング、スケートボード、本、スケッチブックなど、彼が「愛するもの」を活動源とし、作品集の出版、アートエキシビション、パブリックアート、レコードジャケットのデザインなど幅広い分野で才能を発揮している。ドローイングや絵を通して彼の世界観、思想、スケートボーダーとしてのインディー精神を表現し、独自の目線で世界を描く。弱冠15歳でインディペンデントT シャツレーベル「Lousy Livin’Company」を立ち上げ、少数生産ながらクオリティー・クリエイティビティの高いT シャツをデザインしている。また、ブランドや企業とのコラボレーションも多数手掛けており、「マゼンタ・スケートボード」や「ファイブ ボロ」等のスケートボードブランドから「イケア」までプロジェクトは多岐にわたる。これまでに「Nieves」や「Dashwood Books」等の出版社から数々の作品集が出版されている。
@stefanmarx

ドイツ・ベルリンを拠点に活動するアーティスト、ステファン・マルクス。彼は少年時代から愛好しているスケートボードや音楽などのカルチャーの影響から、Tシャツやレコードジャケットのデザインといった創作活動を始め、その後ファインアートの分野に進出。インスピレーションが凝縮された浮遊感のあるタイポグラフィは、読み取る各人の想像力を利用し、非限定的なイメージの拡張をもたらすデバイスのような効果を持つ。

また、日常の観察と絶え間ないプラクティスによって生み出されるドローイングは、ストリートグラフィティよりも柔和で愛らしくコミカルな印象で、素直な感性が幅広い層に共感を呼び起こしている。

さらに彼の作品が構築的な空間やアーキテクチャ・プロダクト上に施されることにより、形而下の意味を超えた暗示のようなインパクトが生じ、場所や存在に新たな意味をもたらす。

自身の創造性を発展させつつも、彼のインディペンデントな姿勢は不変で一貫しており、近年では「シュプリーム」や「コム デ ギャルソン」等のファッションブランドとのコラボレーションをする等、アートとコマーシャルの融合についても可能性を広げてきた。

今回来日したステファンにインタビューを実施。前編では彼が創作活動をスタートした背景、ストリートカルチャーへの熱中と溢れ出るアイデアをレーベル活動へと昇華させていった少年時代、グラフィックと音楽のクロスオーバー等、キャリア初期からのアティテュードについて話を聞いた。

多様なカルチャーの人々が交差する地点を目指して

−−アートを志すようになった経緯、バックグラウンドについて教えてください。

ステファン・マルクス(以下、ステファン):ドイツのシュヴァルムシュタットで生まれ、トーゼンハウゼンで育ちました。とても小さな街です。小さい頃からアートやタイポグラフィ、グラフィックアートが好きで、その後スケートボードのカルチャーに興味を持つようになりました。当時はまだインターネットが普及していなかったので、雑誌などが主な情報源でしたが、田舎では洗練された雑誌を見つけることはすごく難しかったですね。

そんな環境下だった15歳の時、スケートボードをする友達のために服を作りたいと思い、「Lousy Livin’ Company」というTシャツのレーベルを始めました。

その後ハンブルクの大学に進学しましたが、学業だけでなく、自分のレーベルのTシャツデザインを継続し「CLEPTOMANICX」というスケートボードの会社にグラフィックを提供する仕事もしていました。

大学卒業後、ハンブルグを拠点に活動するKarin Guentherというキュレーターとの出会いが転機となり、ギャラリーで作品を発表できることになりました。ファインアートの創作活動と並行してコマーシャルワークは続けていて、自分のレーベルのカタログを作ったことをきっかけに、自分自身のドローイング作品をまとめたZineを作るようになりました。スイスの出版社「Nieves」のベンジャミンがそのZineを気に入ってくれて、翌年ベンジャミンと一緒に本を制作しました。そこから毎年、「Nieves」から本を出版し続けています。

−−少年時代の情報が限られていた環境下で、アートやタイポグラフィ等への興味や関心をどのように発展させていったのでしょうか。

ステファン:何か特別なきっかけがあったわけではないですが、幼少期から視覚的な表現に興味があり、「絵を描く」という行為に楽しみを見出して没頭していました。常に何かを描いてましたね。誰しも子どもの頃は絵を描くのが好きだったと思いますが、僕は大人になっても描くのをやめずにずっと続けている感じです。絵を描くことが純粋に好きなんです。

また絵を描くことによって、自分の身の回りにあるものを観察してヴィジュアル的にエッセンスを吸収し、イメージを人と共有することができる。それが大きなモチベーションとなっていて、今でも絵を描き続けているのではないかと思います。

−−15歳という若さで自身のレーベル「Lousy Livin’ Company」を設立されたことについて、当時の具体的な活動内容や目標を教えてください。

ステファン:当時スケーターの友人の間でアメリカのスケートブランドの人気が高かったんですが、ドイツではとても高額で買えなかったので、代わりのものを自分で作ろうと思い、レーベルを始めました。

スケートボードに関心を持った時、それを取り巻くカルチャー全般、ファッションやグラフィック、音楽等にも興味を持ち、それが服作りにも繋がっていきました。既存のデッキやTシャツのデザインについて、「もっとこうしたらおもしろくなる」というアイデアがいっぱいあったんです。

レーベルを始めたばかりの頃は、アイテムの作り方や運営方法など全く知識がなかったので、周りの大人達に聞いて情報を集めました。そしてシルクスクリーンでTシャツにプリントしてくれる会社を見つけたんです。姉に制作費用を借りて一番最初のTシャツを作りました。

レーベルは1人で運営していたので、デザインだけでなく自分でできることは何でもやりました。スケートショップの卸の会社に行って自作のTシャツの営業をしたり、学校の校庭で友達に売ったり(笑)。自分が作ったものを見てもらいたくて、楽しみながらやっていました。すべては友達が喜ぶのを見たい一心でしたね。周りの友人は僕が頑張って服作りしていたことを知っていたので、みんなで僕の服を着て、活動をサポートしてくれました。

レーベルの活動を続けていくうちに、スケーターの友達に着てもらうアイテムを作るだけでなく、スケートボードをしない友達にも理解されたい、もっと広範囲の人々に関心を持ってほしい、という思いが強くなりました。当初はスケートボードのブランドとしてスタートしましたが、結果的に多くの人々が身に着けてくれるブランドに成長しました。さまざまな人々がブランドを通して交差する、そういう場を作りたかったんです。

音楽にグラフィックが視覚的要素を与え、リスナーのイメージを拡張する

−−幼少期から音楽に親しまれ、レコードのジャケットのデザインも数多く手掛けていらっしゃいます。どのようなきっかけで音楽に関わる仕事を始めたのでしょうか。

ステファン:レコードジャケットのデザインは小さい頃からの夢でした。でも僕がデザインのキャリアをスタートした時期は、ちょうどレコードがCDに移行して、CDもMP3に移行するというタイミングだったので、レコードジャケットの仕事はもうできないだろうと思っていました。

それでもインディペンデントの分野ではアナログで作品を発表するアーティストが残っていて、偶然にもIsoléeというミュージシャンの「We Are Monster」のレコードジャケットをデザインする機会を得ました。それが大ヒットになったのがきっかけで、ハンブルクのアンダーグラウンド・テクノ/ハウスのレーベル「Smallville Records」からリリースされるレコードジャケットのデザインをすべて僕が担当することになったんです。

「Smallville Records」のデザインを始めた当初は、レーベルが長続きするとは思っていなかったので、5枚くらいデザインができれば十分という気持ちでやってました。でも予想に反してレコードは結構売れて、レーベルは20年近く継続しています。コロナの期間は業績が良くなかったので、自分とパートナーで会社を作り、「Smallville Records」の権利を全て引き受けました。現在はレーベルの株式の50%を保有して、運営にも携わってます。

「Smallville Records」でのデザイン手法はシンプルで、すべてのレコードジャケットの構成が、表面は僕の絵のみ、裏にミュージシャンの名前やクレジットが表記されるというスタイルです。この方式がジャケットデザインとして斬新だったので功を奏したのだと思っています。

−−レコードジャケットのデザインにおいて大事にしていることをお聞かせください。音楽作品の内容からイメージを広げていくのでしょうか。

ステファン:レコードジャケットのデザインはソニック・ユースの感覚が好きで、同じような効果を出したいと考えています。ソニック・ユースはレイモンド・ペティボンやマイク・ケリー、ゲルハルト・リヒター等、さまざまなアーティストにレコードのジャケットのデザインを依頼していましたが、新規にデザインされたものではなく、既存の作品をソニック・ユースがセレクトして使っていました。おそらく自分達の音楽作品にどこかリンクするイメージを選んでいたのでしょう。

レコードジャケットの存在を通して、リスナーは頭の中で視覚的な要素と接点を持ち、さまざまな解釈をしながら音楽作品を聴くことになる。時には違和感もあると思いますが、リスナーのイメージを拡張するようなデザインが重要だと考えています。ジャケットをデザインするにあたっては、事前に対象の音楽作品を聴くことはせずに、タイトルやトラック名を見てイメージを膨らませます。テキストから想像してタイポグラフィやデザインに落とし込むんです。

僕はデザインに関しては、アーティスト側の要望は一切受けません。いつも2、3のアイデアを出して、その中からアーティストに選んでもらうというやり方です。アーティストがデザインについて要望を出すケースもあるでしょうけど、僕の場合はそれをしていないんです。

レコードとは別に制作していた作品がレコードジャケットになったこともあります。そもそもレコードジャケットのデザインはレコードのためにデザインしているのではなく、自分の他の作品、エディションが付いたアート作品と同じように捉えて制作に取り組んでいます。

Photography Masashi Ura
Interview Akio Kunisawa

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写真家の瀧本幹也の25年に及ぶ広告作品をまとめた仕事集『Mikiya Takimoto Works 1998-2023』が2月末に出版 3月には特装版も発売 https://tokion.jp/2024/02/27/mikiya-takimoto-works/ Tue, 27 Feb 2024 07:30:00 +0000 https://tokion.jp/?p=225770 日写真家の瀧本幹也の、ャリアのスタートから25年に及ぶクライアントワークをまとめた初めての仕事集。

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青幻舎は、トップランナーの1人として日本の広告写真界をけん引する写真家の瀧本幹也の、キャリアのスタートから25年に及ぶクライアントワークをまとめた初めての仕事集『Mikiya Takimoto Works 1998-2023』を2月末に刊行する。また、3月上旬にはオリジナルプリントが付いた特別仕様の「特装版」を部数限定で発売する。

広告写真をはじめ、コマーシャルフィルム、作品制作活動、映画など幅広い分野の撮影を手がけ、さまざまな表現ジャンルをクロスオーバーさせながら、その独自の表現を深化させ続けている写真家の瀧本幹也。本書はその多岐に渡る活動の中でもクライアントワークにフォーカスし、25年に及ぶ広告の仕事を1冊にまとめた、瀧本にとって初めての仕事集となる。

本書は広告写真とコマーシャルフィルムの2部構成で、前半の広告写真のパートでは、バラエティに富んだ約120作を収録。続くコマーシャルフィルムパートでは、約70のコマーシャルフィルム作品を収録している。

また、スペシャルコンテンツとして、お互いの独立当初から仕事を重ねている盟友ともいえる存在である、アートディレクターの佐野研二郎との対談「写真とデザインの理想的な関係」も収録。掲載作品のセレクトは瀧本自ら行い、これまでに手がけてきた膨大な仕事の中からほんの1割程度に厳選したものの、それでも結果的には総頁数約600ページというボリュームになった。

時代がめまぐるしく変化し、あらゆるデバイスの中で「広告」が氾濫する現在。常に変化を求めながら深化を続ける、唯一無二の「広告芸術」とも呼ぶべき瀧本幹也の世界観を堪能できる1冊だ。

瀧本幹也
写真家。1974年愛知県生まれ。1994年から藤井保に師事。1998年に写真家として独立し、瀧本幹也写真事務所を設立。広告写真やCM映像をはじめ 国内外での作品発表や出版など幅広く活動を続ける。写真と映像で培った豊富な経験と表現者としての視点を評価され、是枝裕和監督から映画撮影を任された『そして父になる』『海街diary』『三度目の殺人』では、 独自の映像世界をつくり出している。代表作に、ドイツの造形学校バウハウスを構成的にとらえた『BAUHAUS DESSAU ∴ MIKIYA TAKIMOTO』(2005)、世界7大陸を巡り観光地の非日常性に集まる人々を撮影した『 SIGHTSEEING』(2007)、『LOUIS VUITTON FOREST』(2011)、地球の原風景「LAND」と文明の象徴としての宇宙開発「SPACE」の相対するシリーズをまとめた『LAND SPACE』(2013)、『Le Corbusier』(2017)、『CROSSOVER』(2018)などがある。

■『Mikiya Takimoto Works 1998-2023』
著者:瀧本幹也
アートディレクション:矢後直規 
出版社:青幻舎
判型:B5変形/上製本
ページ数:596ページ
定価:¥9900
ISBN:978-4-86152-927-6 C0072 

■特装版『Mikiya Takimoto Works 1998-2023』
3月上旬発売
定価:¥ 60500
部数:125部限定(5種×25部)
詳細:特製BOX入、写真集1部、プリント、作品証明書
プリント詳細
サイズ:八つ切り(165×216mm)
エディション:各25(5種)
*マット付 
*プリント裏に手書きでエディションナンバーとサイン入り

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アーティスト・大竹彩子が語る、制作の原点と現在地 ギャラリーでのヨーロッパ初個展「COLOURIDER」開催に寄せて https://tokion.jp/2024/02/22/colourider-saiko-otake/ Thu, 22 Feb 2024 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=224905 アーティスト・大竹彩子がヨーロッパでの初個展をロッテルダムのSato Galleryにて開催。展覧会に際しヨーロッパを旅している大竹に、制作活動の原点や今見つめているものなどを尋ねた。

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ペインティング、写真、コラージュなど幅広い作風を持ち、豊かな色彩と大胆な構成で私達を惹きつける大竹彩子。2018年の初個展以降、PARCO MUSEUMやNADiff a/p/a/r/tなどで毎年展覧会を行い、実力とキャリアを積み上げている彼女が、現在、ロッテルダムのSato Galleryにて、個展「COLOURIDER」を開催中だ。これはギャラリーで開催される個展としてはヨーロッパ初開催となる。フェミニン・パワー、サイケデリックな美学、モダン・アートがカラフルにぶつかり合う大竹の作品は、ノスタルジックな雰囲気と現代的なレイアウトを併せ持つ。展覧会に際し、ロッテルダム、ロンドン、パリなどヨーロッパを自身の好奇心の赴くままに周っているという。そんな旅の途中の彼女に制作の原点やインスピレーションの源、そして今見つめているものなど幅広く話を聞いた。

作品に息づく独自の色彩と構図はいかにして培われたのか

――今回のヨーロッパでの初個展おめでとうございます。開催の経緯を教えてください。

大竹彩子(以下、大竹):2019年に仕事でパリを訪れた時にSato Galleryのオーナー、ジュリアンと知り合ってからコロナ禍を経て実現できました。初のヨーロッパでの展示ということもあり悩んでいたところ、彼から「楽しんで描いて!」と言われていたので、今まで日本でやってきたことを進化させたものを発表したいと思いました。外国で展示するという夢が1つ叶いました。

――本個展で発表されたものをはじめ、大竹さんの作品は力強く豊かな色彩が印象的ですが、大竹さんにとって色の役割について教えてください。

大竹:子どもの頃に1960年代頃のサイケデリックアートを知って、蛍光色を使った独特の配色やタイポグラフィー、色のインパクトに惹かれて、その時から色の持つ力というのをすごく感じています。ただ派手なものというわけではなく、配色の妙とでも言いますか、組み合わせた時に持つ力や強い印象に惹かれています。組み合わせや見せ方は無限にあるので、都度その魅力を出せたらと思っています。

――個展のタイトル「COLOURIDER」はぴったりですね。ですが、色だけでなく構図や配置も独特で絶妙だと感じています。

大竹:幼い頃はもともとポスターを作る人になりたいと思っていました。今でも絵画というより模様や色の組み合わせる構図を意識するのはポスターに対する憧れに近いのかもしれません。古いポスターや広告を見るのは好きなので制作に影響していると思います。今回は女性の他に、恐竜とモンスターという実在しないものも描きました。

それはサイケデリックなポスターからの影響があるのかもしれません。つながっているタイポグラフィーのような物で空間を埋めていくようにひたすら描いた作品もあります。

組み合わせることで境界を曖昧にする写真作品/日常のインスピレーションを蒐集する本のシリーズ

――今回はペインティングだけでなく、2枚の写真を組み合わせた作品も展示されています。一見全く関係のないような写真が組み合わさることで別のイメージを生み出しています。どうやって生まれたんですか?

大竹:ロンドンにいた時にテート・モダンで開催された森山大道さんの展示のワークショップに参加したんです。壁にモノクロの写真が貼ってあって番号を選んで自分でレイアウトするというもの。そのワークショップがとても刺激的で、自分が撮ったものをまとめてみようと思い、一見関係のない写真を並べたことがきっかけです。隣同士に合わせることがおもしろかった。2枚の全く別の写真を組み合わせることで、時間や場所、色の境界線を曖昧にするという感覚を持たせた作品なので、レイアウトは色や形のバランスを特に意識しています。今回の展示では海外と日本というテーマで左が外国、右が日本で撮った写真を組み合わせました。

――そこから本のシリーズも生まれたんですか?

大竹:そうですね。以前から余白なしの本を作りたいと思っていたので、セント・マーチンズの卒業制作の1つとして、3冊、2022年までに15冊を自費出版しています。それぞれの写真は日常の風景からインスピレーションを受けた物を蒐集する感覚で撮りためたものです。

――具体的に日常のどういった風景からインスピレーションを受けるんですか?

大竹:古くから残されているものや人の手が加わったものに興味があります。ポスターの一部や剝がれた壁、古いマネキンなどに惹かれます。場所だと博物館や昔からあるような文房具屋さん、ヴィンテージショップ、いろいろなものが置いてあるマーケットとか。あと、外国だったらトイレや看板、落ちているゴミも見逃せません。そうしたものにも日本にはない独特の色彩がありますから。

初めて訪れたオランダの印象、ヨーロッパを巡る旅の過ごし方

――なるほど。次は今回の旅について聞かせてください。オランダには初めて訪れたそうですが、どんな印象を受けましたか?

大竹:窓が大きくて外から家の中が丸見えでびっくりしました。質素倹約を好むプロテスタントの影響があり、かつてはつつましい暮らしの証明という意味合いだったのが現代になって見せびらかせる風習に変わってきているというのを聞いておもしろいと思いました。通りを歩くと家族が食卓を囲んでいたり、人々の生活が垣間見えて、まるで映画のワンシーンを見ているような感覚に陥ります。オランダに長く住んでいる方々からいろいろなお話を聞いてより一層魅力的な街だと感じました。比較的ビザが取りやすかったり、アーティストに対するサポートも手厚かったりするとのことですし、実際旅をしていても人が優しい印象です。

――旅はロンドンから始まり、オランダを経てこの後はパリへと続くそうですね。どのように過ごしているのですか?

大竹:最初にロンドンで(ロナルド・ブルックス・)キタイの展示を見れてテンションが上がり、街並みや匂い、パブの佇まいのすべてを懐かしく感じました。ロッテルダムでは作品がなかなか届かずハラハラしましたが、無事に個展をオープンできてホッとしました。さらにデン・ハーグとアムステルダムにも知人を訪ねに行きました。久々に刺激的なものを吸収できてずっとハッピーな毎日を過ごしています。

この後はオランダのライデンにある日本博物館シーボルトハウスを訪れてみたいです。作家の吉村昭さんが書いた本がおもしろくてシーボルトや彼の周りの人達に興味を持っています。パリでは(フィリップ・)ワイズベッカーの展示とポンピドゥ・センターでのジル・アイヨーの展示、またリヨンの方まで足を伸ばしてオートリーヴにあるシュヴァルの理想宮にも行きます。(フェルディナン・)シュヴァルという郵便配達員だった人が作り上げたお城で、アウトサイダー・アートに分類されるのですが、小さい頃から興味があった場所なのでとても楽しみにしています。

――現代アートからアウトサイダー・アート、さらに歴史まで興味関心の幅が広くて驚かされます。

今回の旅でゴッホやピカソ、マティスなど、本物の絵を間近で見られるのはとても楽しみですが、既に価値を与えられた有名なものだけでなく、そこの境界線を超えていろいろなことに好奇心を持って対峙していきたいです。

――表現者として今までの道のりは?

大竹:幼い頃から色んな物を見るのが好きで、スケッチブックに人の絵を描いたり、雑誌を見て描いたりしていました。でもアーティストになろうとも、食べていけるとも思ってなかったので、単に(アーティストである)父のサポートができたらいいなという気持ちでした。それがやっぱり自分で描きたい、表現したいと思うようになり、色々な機会を与えてもらってここまで来れたという感じです。

――ヨーロッパでの初個展を迎えて、今の気持ちは?

大竹:ひとまずオープンできてほっとしていますし、日本以外での個展第一回目として満足しています。次は色を使ってもっと大きい作品を発表できたらおもしろいかなと思いました。開催は3/3までなので今後のフィードバックが不安でもあり、楽しみでもあります。今、地球全体が大変なことになっていて落ち込むこともあって大変でしたけど、だからこそ色の持つ力を伝えたいという気持ちを今回の展示に込めています。自分自身も色を見て元気になるというのを感じているので。

■SAIKO OTAKE 「COLOURIDER」
会期:2024年1月25日(木)~3月3日(日)
会場:Sato Gallery
住所:Insulindestraat 78, 3038 JB Rotterdam, Netherlands
料金:入場無料
URL:https://www.sato.art/ja/exhibitions/23/overview/

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グラフィティアーティストのスティーブン エスポ パワーズが個展『SELF FULFILLING PROPHET SEES』を2月29日から開催 https://tokion.jp/2024/02/21/self-fulfilling-prophet-sees/ Wed, 21 Feb 2024 03:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=224952 会場は東京・原宿の「GALLERY TARGET」で、会期は2月29日〜3月23日。東京で制作した50点以上の新作がインスタレーションと共に展示。

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東京・原宿の「GALLERY TARGET」は2月29日から3月23日まで、グラフィティアーティストのスティーブン エスポ パワーズ(Stephen ESPO Powers)による個展『SELF FULFILLING PROPHET SEES』を開催する。

約6年ぶりとなる今回の個展では、東京で制作した50点以上の新作がインスタレーションと共に展示される。パワーズが2023年から東京で生活を始めて初となる今回の個展は、彼の中で東京がどのような存在なのか 、作品を通じて鑑賞できる機会となる。

パワーズは1999年の展覧会『UNTITLED』以降、24年間に渡り東京を訪れ続け、街で見かけるグラフィックやキャラクターに触発され、彼の芸術に取り入れてきた。2023年6月には自身のショップである「ESPOKYO」をオープンし、東京でのビジネスにも取り組み始めた。

本展覧会に向けパワーズは、作品に日本独自のスタイルが反映しているかどうか自信はないが、漢字やカタカナ等、彼の作品の中で最も重要な要素である文字を絵画に滑り込ませはじめたと語っている。「自己成就の予言とは、良いことが起こると信じると、それが実現することです。悪いことにも適用されるので、信じるものには注意が必要です。私は自己成就の預言者です。なぜなら、私自身と愛を信じているからです。その他のことはおのずと明確になるでしょう」

初日の2月29日18:00〜20:00には誰でも参加できるオープニングレセプションを開催する。

■『SELF FULFILLING PROPHET SEES』by Stephen ESPO Powers 
会期:2024年2月29日〜3月23日
会場::GALLERY TARGET
住所:東京都渋谷区神宮前5-9-25 1F
時間:12:00〜19:00 
休日:月曜、日曜、祭日
https://www.gallery-target.com

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「ネペンテス ニューヨーク」が新進アーティストを紹介するエキシビジョン 米ペインターのジュリアン・カリディによる「Sometimes It’s the Sun」をレポート https://tokion.jp/2024/02/15/nepenthesnewyork/ Thu, 15 Feb 2024 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=224229 今年最初の展示となる「Sometimes It’s the Sun」が開催

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2010年のオープン以来、アメリカや日本のアーティストによるストア内でのアートエキシビションやポップアップを精力的に開催している「ネペンテス ニューヨーク」。2024年の最初のエキシビジョンとなるのが、ペインターのジュリアン・カリディによる「Sometimes It’s the Sun」だ。

ジュリアンは1994年コロンビア・バランキージャ生まれ、 ニューヨークのトライベッカ育ち。同エキシビジョンでは、彼の最新の作品群が展示されていて、アブストラクトなストロークと色彩で美しく滲むウォーターカラー(水彩絵の具)のペインティングがタペストリーのようにストア内に飾られている。

「最初に、キャンバスとなる工事現場でも使うような防水シートやリネンを染めるところからはじめる。バケツに顔料で染色液を作って、大体1日ファブリックを漬けて、液から取り出した瞬間からその上に描きはじめるんだ。ものすごい速さでね(笑) ほとんどのペインティングは集中して描き込んだり、ただ眺める時間をとったり、時間をかけて作業したりするんだけど、この新しいペインティングはとにかく乾くのが速い。ウォーターカラーのように、とにかく乾く前に作業を終わらせる。この布は裏面だけ防水になっているから、滲み方も独特。布にインクが滲んでいく時、毎秒、違うテクスチャーが生まれていくんだよね。この日本の伝統的な墨汁をよく使うんだけど、これは最高」 。

ジュリアンは昨年、ニューヨーク州のアップステートにあるコールドスプリングからサウスウィリアムズバーグにスタジオを移したばかり。アップステートは自然に囲まれた環境はよかったけれど、ニューヨークシティからスタジオ・ビジットに来てもらうには距離があった。だがブルックリンのスタジオに移ってからはアクセスもよいため、作品を見せる機会も増えたそうだ。「ネペンテス」もスタジオ・ビジットに来てくれたことがきっかけで今回のエキシビジョンに繋がった。アートエキシビジョンに併せて、東京発のブランド「ネイタルデザイン」と久留米産の半纏 「クワノ ホーム」によるポップアップストアも3月27日まで開催中。

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髙橋優香によるブックストア「Hi Bridge Books」が誕生 人と人をつなぐ、ジャンルにとらわれない自由な空間 https://tokion.jp/2024/02/02/hibridgebooks-yukatakahashi/ Fri, 02 Feb 2024 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=222795 「小宮山書店」でキャリアを積んだ髙橋に、オープンに至った経緯からアート業界に歩むことになった理由までを聞いた。

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髙橋優香(たかはし・ゆか)

2023年11月末に東京・代々木八幡にオープンしたブックストア「Hi Bridge Books」。オーナーを務めるのは、神保町で80年以上続く老舗の古書店「小宮山書店」でキャリアを積んだ髙橋優香さんだ。住所は非公表で、来店は完全アポイント制。店内にはビジュアルブックを中心に、新書から古書まで並んでいる。そんなシークレットスポットのような空間に足を運び、オープンに至った経緯からアート業界に歩むことになった理由までを聞いた。

――「小宮山書店」から独立し、自身のブックストアを立ち上げた経緯を教えてください。

髙橋優香(以下、髙橋):「小宮山書店」を退社した時は、具体的なことはまだ決めていなかったんです。場所やオープン日などは辞めてから徐々に進めていこうと思っていましたが、ありがたいことに話はとんとん拍子に進み、形になったという感じ。もともとは原宿に出店しようと考えていましたが、縁があり場所を代々木八幡に決めました。

――アポイント制にしている理由は?

髙橋:お客さんとのコミュニケーションを大切にしているので。足を運んでくれた人からはよく「接客されるのが新鮮」と言われます。滞在時間は1時間程度。気になる本があれば自由に広げて見てもらったり、その人の好みを聞いて、少し違う切り口でおすすめの本を提案したりもしています。新しい出合いや発見を楽しんでもらいたいので、お客さんが知らなかった、わくわくするような1冊を手に取ってもらえたら嬉しいです。

――ショップ名の“Hi Bridge”は、ご自身の名字髙橋からとったそうですね。

髙橋:「ベドウィン&ザ ハートブレイカーズ」で勤務していた時、同会社に「Bridge」というショップがありました。“Bridge”という名前はなんか親近感があり、とても好きなショップで。店名を決める時、自分の名字にも“橋(Bridge)”が入っていることにふと気付き、“Hi Bridge Books”と名付けました。私の仕事は、人と人をつなぐ懸け橋の役目もあります。作家や買い手とのコミュニケーションをとることで、新しい出会いやカルチャーが生まれる。私も橋のような存在になれたらいいなぁという思いもあり付けました。

――店内に並んでいる写真集や雑誌はどんなジャンルのものが多いでしょうか?

髙橋:写真集や雑誌などのビジュアルブックが中心。新書から古書までを取り扱っていますが、あえてジャンル分けをせず棚に並べています。ジャンルという固定観念にとらわれてしまうと、1冊1冊の本質を知ることができない。良い紙を使っているから価値がある、サイズが小さいから安価というわけではありません。ものとしての美しさがすべて評価されるから、そこに価値の基準やジャンルはないと思います。人を何かでくくってしまうと固定観念に縛られてしまい、その人の本当の良さを見落としてしまいます。本もそれと同じではないでしょうか。

ファッション業界から異業種へ

――「ベドウィン&ザ ハートブレイカーズ」に勤務後、ブックキュレーターに転身されております。ファッション業界からアート業界の道に進もうと思ったきっかけは?

髙橋:「ベドウィン&ザ ハートブレイカーズ」を退職後、ニューヨークに2年間留学しました。その時に小宮山書店がアートブックフェアに出店していたんです。荒木経惟さんのような日本を代表する写真家の本を販売していたので、手に取って見ると、写真がもつ力強さに感動したのを今でも覚えています。海外にいる時は日本のことがとても新鮮に感じたり、今まで知らなかったことに気付けたりしますよね。海外の方は自国に対するプライドや知識がありますが、私の場合は本を通して日本を見るまでは自国を深く知ろうと思わなかった。それがきっかけでアートに興味を持つようになり、帰国後に親交があった小宮山書店に入社することを決めました。

――ファッション業界を経て、アート業界に身を置いてから感じる本の魅力とは?

髙橋:ファッションは時代性を映すものなので、時代で物事を見ていきます。私の場合は本をセレクトする上でもそれを感じることが多いですね。本は知らない人の話を聞けるのが魅力。自分が生まれていない時代のことを知れることができるし、知の範囲が広がります。なかでもビジュアルブックは言葉がないけれど、読む人に気付きを与えてくれる。人によって捉え方や見るところも異なるし、時代性や登場人物の内面を知ることもできる。本1冊だけでもさまざまな見方があるので、自分の視点を誰かにシェアできるのも良いですよね。私もお客さんや作家さんなどの多角的な視点を得ることでたくさん学びがあります。

――髙橋さんが引かれるアーティストに共通する点はありますか?

髙橋:周りに左右されずに、自分の意志を貫いている人でしょうか。あとは悲しみを知っている人の作品には心動かされる事が多いです。本当の悲しみを知っているからこその強さがあり、人の心を動かす力も持っているのではないかと感じています。

――最近おすすめの本はありますか?

髙橋:ストリートカルチャーマガジンの『LILYPAD』。ニューヨークとモントリオールを拠点とし、年1回発行しています。ドユン・ベックとバーゲン・ヘンドリクソンが編集し、毎号彼等のコミュニティーの仲間を取り上げています。DIY精神で制作している雑誌は、90年代の純度の高いZINEのようで、ページをめくるたびにワクワクします。この「ISSUE 4」は他国では反響を呼び完売したほど。昨年彼等が日本に来ていた事もあり、今号は交流のある日本人作家もたくさん掲載されています。ニューヨークの友人と彼等が親しくて日本に来た際に仲良くなりました。本号が発売された時、ちょうど「Hi Bridge Books」がオープンしたタイミングで、「ISSUE 4」を国内ではうちだけに置いてくれることになりました。

――最後に、書店オーナーとしての視点も備わった今、今後はどんな活動をしていきたいと考えていますか?

髙橋:展示スペースもあるので、1カ月半に1回のペースで国内外の作家さんの作品を展示していきたいと考えています。今年はブックローンチも予定しており、みなさんに新しい本を紹介できればいいなと。アーティストと本を作ろうという話も控えているので、たくさんのプロジェクトが進行しています!みなさんに楽しんでもらえる良いお店を作っていければと思っています。

Photography Miyu Terasawa

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アーティストのJACKSON kakiが最新作の展示を福岡のオルタナティブスペース「0ffice」で開催 https://tokion.jp/2024/01/30/remaining-ambiguity/ Tue, 30 Jan 2024 07:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=222937 会期は2月16日〜3月17日。2月16日にはオープニングパーティとアーティストトークショーを開催。

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アーティストのJACKSON kakiは最新作品「Remaining ambiguity」の展示を福岡のオルタナティブスペース「0ffice」で2月16日から3月17日まで開催する。

JACKSON kakiは3DCGのビジュアル・映像作品を中心に、VR/AR/MR のデバイスを用いた作品や、パフォーマンス、インスタレーションなどの作品を制作してきた。またDJ/VJとしてさまざまなパーティやアーティストとコラボ―レーションをし、クラブと アート、音楽とパフォーマンス、美術、さまざまな領域や表現手法を横断している。

今作では2023年に発売されたVR HMD「Quest3」のMR機能と、被写体を3Dモデルのように扱うことのできる映像と3DCGの間のメディアとなる「ボリュメトリックビデオ」を扱いながら、身体と、その周辺にあるオブジェクトや環境の境界と輪郭が、映像や写真とは異なるイメージが形成される状況を、自身の身体を用いながら実践する。

また、関連イベントとして、2月16日にはオープニングパーティとアーティストトークショーの開催や、2月18日には福岡で開催される「迂曲転換 TURN!NG」にAudio Visual DJ set / VJとして出演する。3月中旬には、「0ffice」主催のクロージングパーティも予定している。

■Remaining ambiguity
会期:2024年2月16日〜3月17日
会場:0ffice 
住所:福岡県福岡市中央区平尾1-4-7 土橋ビル202 
時間:(2月16〜29日)月、水、金15:00〜20:00、土日12:00〜20:00、 (3月1〜17日)金15:00〜20:00、土日12:00〜20:00 
料金:¥500+1Drink Order 
アーティスト:JACKSON kaki
プロデュース:KOI (0ffice) 
展示協力:0ffice
https://www.instagram.com/0fficeeeee/

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ソウル発のフォトマガジン『CHALKAK MAGAZINE』による国内初の展覧会が開催 渋谷パルコで1月26日から2月12日まで https://tokion.jp/2024/01/25/chalkak-magazine/ Thu, 25 Jan 2024 12:45:03 +0000 https://tokion.jp/?p=222739 アジアの気鋭写真家たちの作品が集う"CHALKAK MAGAZINE EXHIBITION 「NEW ASIAN PHOTOGRAPHY & SEOUL VIBE」が渋谷パルコで開催。

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『CHALKAK MAGAZINE(チャルカックマガジン)』はアジアの若⼿写真家を紹介する韓国・ソウル発のフォトマガジン。そんな同誌の世界観を表現した国内初の展覧会”CHALKAK MAGAZINE EXHIBITION 「NEW ASIAN PHOTOGRAPHY & SEOUL VIBE」”が渋谷パルコで開催となる。会期は1月26日から2月12日まで。

本展の参加作家に名を連ねるのは、これまで『CHALKAK MAGAZINE』が紹介してきた15名のアーティストたち。ソウルのファッションシーンで注目を集めるキム・ムンドッグ、デジタル素材を用いて新たな表現をつくり出すペインターのハン・ジヒョン、ジェンダーの相対性に問いを投げかけるリ・ユシらの作品が展示される。

日本からも、アートとファッションの分野で活躍する写真家の石田真澄や川谷光平、木村和平、草野庸子らが参加。

また、ソウルのカルチャーを牽引する10名のディレクターたちにフォーカスしたライフログも紹介される。

■CHALKAK MAGAZINE EXHIBITION 「NEW ASIAN PHOTOGRAPHY & SEOUL VIBE」
会期:2024年1月26日~2月12日
会場:パルコミュージアムトーキョー
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ4階
時間:11:00〜21:00
※入場は閉場の30分前まで
※最終日は18時閉場
※営業⽇時は変更となる可能性あり。渋⾕PARCOの営業⽇時要確認。
渋谷パルコHP:https://shibuya.parco.jp/
展示詳細ページ:https://art.parco.jp/museumtokyo/detail/?id=1392

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