合六美和, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/miwa-goroku/ Thu, 27 Apr 2023 22:47:55 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 合六美和, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/miwa-goroku/ 32 32 「リュウノスケオカザキ」岡﨑龍之祐インタビュー 左右対称のフォルムに込めた生命の本能。祈りに共鳴する彫刻の個展「002」 https://tokion.jp/2023/04/28/interview-ryunosuke-okazaki/ Fri, 28 Apr 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=183019 個展「002」を開催中の「リュウノスケオカザキ」のデザイナー、岡﨑龍之祐に新作に込めた想いを聞いた。

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岡﨑龍之祐

岡﨑龍之祐
「リュウノスケオカザキ」デザイナー。1995年広島県生まれ。2021年東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻を修了。2021年9月に1度目のランウェイショー「000」を開催。2022年3月に2度目のランウェイショー「001」を発表。2022年「LVMHプライズ 2022」ファイナリストに選出。東京を拠点に活動中。
https://ryunosukeokazaki.com
Instagram:@ryunosuke.okazaki

身近な素材からダイナミックな造形美を有機的に描き出し、特大のインパクトを放ったデビューショー「000」(2021年)、同じくランウェイショーの発表で独自のドレススタイルを知らしめた2シーズン目「001」(2022年)。その直後、「LVMH プライズ 2022」のファイナリスト入りが決定し、デビューから1年足らずにしてパリで発表の場を得るという快挙を果たした「リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKEOKAZAKI)」のデザイナー岡﨑龍之祐。およそ1年ぶりとなる今回の「002」は、ショーではなく個展の形式。現在、代官山のクリエイティブスペース「THE FACE DAIKANYAMA」で一般公開中(5月4日まで)。壁一面に木材彫刻が並ぶアートギャラリーのような空間で、新作に込めた想いを聞いた。

——ファッションの展示会とはだいぶ様子が異なって、アートギャラリーのようなムードです。作品を壁に展示するのは初めてですか?

岡﨑龍之祐(以下、岡﨑):はい。これまではモデルに着てもらう立体の発表だったので、このように静的な展示は初めてです。天井から吊っている赤い布を使った作品も、壁掛けができるようになっています。「リュウノスケオカザキ」を見てくださっている人に、また新たな一面を感じてもらえたら嬉しいです。今回、初めて木材を使いました。

——壁掛け作品でも、岡﨑さんが作ると立体的になるんだなと思いました。

岡﨑:立体と平面、どっちかといわれれば、僕の場合はやはりこうなるんですよね。いろんな角度から重ねたり、横につけたりの手作業です。左右対称性を決めながら作っています。

——左右対称であることをどのように考えて表現していますか?

岡﨑:左右対称性の原風景にあるのは、神社の鳥居です。僕が生まれ育ったのは広島の宮島口で、厳島神社がすぐ近くにありました。小学生の頃は毎日のように釣りをして遊んでいて、すぐ対岸にはいつも鳥居が見えていました。幼稚園時代にダンボールを積み上げて真っ赤な鳥居を作ったことも、原体験になっていると思います。すごくかっこいいと思ったし、幼少期から漠然とですが特別なものを感じていました。

——建築の世界では左右非対称であることが人間的だと捉える歴史もありますよね。

岡﨑:確かに日本も西洋も、建築様式を見ていくと左右非対称が多いですよね。その一方で、シンメトリックなものには秩序や意志が通っていて、僕はそこに生命を感じます。それは本能的なものだと思います。人間も虫もあらゆる生き物は厳密にいえば非対称ですが、フォルムで見ると基本的に左右対称ですから。

木材を使った作品への挑戦

——木材を使った新作のシリーズ名は“PIMT”。どんな意味ですか? 

岡﨑:知覚(Perception)、意思(Intention)、素材(Material)、時間(Time)の英語の頭文字をつなげた造語です。素材を“知覚”して、フォルムの“意志”を感じながら、“素材”とともに作りあげていく“時間”が、僕の中で大切にしている“祈り”の行為と結びつきました。「ピムト」と呼んでいるのですが、その響きも気に入っています。

——“JOMONJOMON(ジョモンジョモン)”(縄文土器に着想を得たドレスのシリーズ)も、そういえば響きがいいですね。

岡﨑:ありがとうございます。そうなんです、音を大事にしています。作品は愛でるものだから。

——素材が布から木に変わっても、ひと目で「リュウノスケオカザキ」であることが伝わってくるのがおもしろいです。作る過程も一緒ですか?

岡﨑:全く一緒です。いろんな素材と向き合いながら、そこに生命が宿るようなイメージを僕は作品に込めています。1つひとつに個性があり、生きているような感覚です。

——デッサンは描かないと聞きました。

岡﨑:手を動かすことで偶発的にフォルムを生み出していきます。たぶん絵を描いている時と同じ感覚なんです。絵って完成がないじゃないですか。僕のドレスも完成がない。それは経験とともに変わっていきます。自分の手に経験が入って、そうすると手の動きも変わっていく。それが作品にあらわれる。そして人が着ることで完成されるというところにおもしろさを感じます。

——今回、新たに木材と向き合うことになったきっかけはありますか?

岡﨑:きっかけは、昨年4月に旅行で訪れた日光東照宮です。そこで見た木組みの建造物がすごく印象に残っていて。木組みというのは、宮大工さんが神社仏閣を作る時に用いていた日本の伝統的な工法です。僕の場合、本来の木組みのようなやり方はしていないのですが、木を組んでいく工程だったり、組んだ時のたたずまいだったりにインスパイアされました。そしてすごくカラフルなところも。

——確かにカラフルな作品が多いですね。目にした瞬間ガンダムっぽいと思いました。

岡﨑:よくいわれます。実際のところ、僕はガンダムのアニメを観たことがないんですが、つながりはあると思います。日本はキャラクターデザインなどにおいて空想の生き物を創るのがうまいと思うんですけど、それは日本人が昔から自然の中に神の存在を見いだしてきたという歴史が背景にあるからではないでしょうか。ロボットアニメも、日本の祈りの文化につながっていると僕は感じるので、ガンダムっぽく見えるのは必然かもしれません。

——そしてたくさん作りましたね。

岡﨑:実はこの会場の裏にも、展示していない作品がたくさん控えています。昨年参加した 「LVMH プライズ」の展示が終わってから、ずっと作り続けていました。

——ということは、1年近く木材と向き合っていたのですか?

岡﨑:木の作品と同時並行でドレスも作っていました。布に向き合う時間、木に向き合う時間がうまく調合されて、ドレスがより彫刻的で繊細になったと感じています。今回はモデルがいないので、ちょっと見上げるような高さの作品を、より自由に作ることができました。作品と対峙するような空間作りは、僕の中で大切な表現方法です。

——アトリエで作業しているのですか?

岡﨑:はい。大きい作品が多いのでスペースが大変です。今回こうして自分の作品と対峙することができて、僕自身が一番喜んでいるかもしれません。多くの人に見てもらいたいです。

ファッションとアートの区別なくやっていく

——作品はすべてユニークピースですよね。これまでも、これからも?

岡﨑:はい。そうあり続けると思います。作品とコミュニケーションを取りたいし、見てくれる人ともコミュニケーションを取りたいから。その時々に感じているものを生み出していくことを大切に、作り続けています。

——中学の頃からファッションの世界に憧れていたとのことですが、1995年生まれの岡﨑さんが見ていたのは具体的にどんなファッションですか?

岡﨑:特定のブランドを覚えていないのですが、コレクション映像もファッション雑誌もいろいろ見ていましたし、自分が着るのも好きでした。モードの文脈というより、ファッションのたたずまいに惹かれていたのだと思います。コレクション映像を観た時の、人が人じゃなかったりするような、人が解放されて自然に還ったり、造形の中に人がいたりするような。

——装うという行為そのものに興味があった?

岡﨑:そうですね。ショーで見るアートピースのようなファッションは特に、着ることの本質的な部分を表現しているように見えていた気がします。地球に生きている人間が、どういうものを着るのか。人も自然の一部だし、特に日本人はそこを意識してきた生き物です。学生時代にファッションをおもしろいと思ったのは、自然の中で虫を採って、魚を釣って、絵を描いてという幼少期の原体験があった上での興味だと思います。広島に生まれて「祈り」をテーマにしていることも、すべてがつながっています。

——「000」のデビューから一躍世界に知られる存在になりました。どんなところから声がかかっていますか? 

岡﨑:ファッション業界です。ファッションの人が興味を持ってくれて、そこから一気に広がりました。「LVMH プライズ」でファイナリストに選ばれて、パリで発表できたのはとても良い経験になっています。またパリで発表したいし、ニューヨークではアートの発表もしてみたい。ファッションとアートはマーケットが違うので一線が引かれていますが、僕としては区別せずにやっています。表現者はもっと自由でいいし、自分の好きなものを突き詰めるべきです。いろんな目標があるので、そのために今はとにかく作って、いろんなところで発信しながら、自分の作品を強めていきたいです。

——今年のご予定はありますか?

岡﨑:変わらず作り続けていきます。その中で発表する作品が、世界とコミュニケーションを取ってくれると思います。

——「003」「004」……と連番で続いていくのですね。

岡﨑:はい。人生をかけて100回はやりたいです。ターニングポイントになった「000」から、3桁までやるぞという意気込みです。シンプルな連番にすることで、人生と制作を積み重ねて歴史を作っていくことを表現しています。

Photography Tameki Oshiro

■RYUNOSUKEOKAZAKI Solo Exhibition「002」
会期:2023年4月15日〜5月4日
会場:THE FACE DAIKANYAMA
住所:東京都渋谷区猿楽町28-13 ROOB-1 B2F
時間:11:00〜19:00 
料金:無料

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折り紙には未来がある 折り紙作家/手漉き和紙職人の有澤悠河インタビュー 後編 https://tokion.jp/2022/09/29/origami-artist-japanese-handmade-paper-craftsman-yuga-arisawa-part2/ Thu, 29 Sep 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=145826 難解折り紙ブームを経て、次世代作家が目指す新たな展開とは。彼が拠点を置く岐阜県美濃の手漉き和紙工房「コルソヤード」を訪ねた。

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折り紙と聞いてまず思い浮かぶのは「折り鶴」だろう。この他「やっこさん」「風船」等に代表される昔懐かしの伝承折り紙と、ここ数十年でブームになっている現代折り紙は、ともに1枚の紙を扱う点は同じ。ただし、伝承折り紙が作者不詳であるのに対し、現代折り紙には作品ごとに「作家」の存在がある。

では、折り紙作家とはどんな人々か。クリエイティヴな職業の多くがそうであるように明確な定義はないが、1ついえるのは著作があるかどうか。書籍やメディアで公開された創作作品(とその構造を示す展開図、あるいは折り図)があれば、その作者が作家といえる。日本では現在、名前の知れた折り紙作家が数十人はいる。

有澤悠河もその1人であり、さらに紙づくりから手掛けている点でユニークな存在。奈良時代から続く紙の名産地、岐阜県美濃の工房で手漉き和紙職人として活動する顔も持つ。現代折り紙の系譜と彼独自の創作スタイルに迫った前編に続き、後編では紙づくりのアングルからそのこだわりとキャリアについて話を聞いた。

紙のエネルギーに応える

−−難度の高い作品を折るのに、市販の折り紙だとサイズや強度などがネックになりますよね。

有澤悠河(以下、有澤):僕の場合、中学生の頃にその壁にぶつかって文房具屋をまわる中、札幌にある「紙のめぐみ」というお店にたどり着きました。坂本直昭さんという和紙染描家の紙を扱う店です。坂本さんは世界中の紙漉きの現場を訪ねていて、その場所の空気を感じながら紙を染めるというエネルギッシュな活動をされています。ご本人は東京在住で「紙舗直」というお店を白山(文京区)に構えているんですけど、「紙のめぐみ」はそんな彼の作品を専門に扱う全国唯一のお店で、たまたま僕の地元にありました。すごくかっこよくて、お小遣いを貯めて1枚買って、部屋に飾っていました。

−−そんな紙との出合いで、折り紙の取り組み方も変わった?

有澤:坂本さんの紙を眺めているうちに、何かに見えてきたんです。爬虫類とか動物とか。紙がなりたい姿がある気がして、その連想から形を考えて折るようになりました。

−−折り紙作家としてはめずらしいパターンですよね。

有澤:そうかもしれません。

−−自然が持つエネルギーに惹かれるのでしょうか。紙もまた本来自然のものですから。

有澤:紙のエネルギーは確かにあります。自然もそうだし、多くの人の手を経たストーリーもある。江戸時代までの日本は、すべての紙が100%自然でした。僕が今つくっている紙は、江戸時代の紙と限りなく近いです。この手法で手漉きをしている工房は現在、全国でも数十軒あるかどうか。

本来の紙を1つの選択肢に

−−コルソヤードの紙づくりについて、少し教えてください。

有澤:紙の原料としてパルプをよく聞くと思いますが、パルプは木の幹を砕いて繊維を集めたもの。日本古来の伝統的な紙は、幹ではなくて木の皮を使います。剥いだ皮をふやかして、表面の黒皮と甘皮を削ぎ落として、煮てアク出しをして、残ったチリや硬い繊維を手作業で取り除いて、柔らかくほぐれた繊維だけの状態にします。ここまでの下準備に約2週間。紙を漉く段階で、トロロアオイという植物のとろみを加えます。これがローションの役割となり、繊維と繊維がくっつかず、均一な紙を漉くことができます。このとろみはネリと呼んでいて、紙になった時はなくなっています。

−−日本古来の紙は、純粋に木の繊維100%でできている。

有澤:そうなんです。トロロアオイのとろみの弱点として雑菌にすごく弱いというのがあって、昭和に入るとホルマリンやクレゾールなどの保存殺菌剤を混ぜて紙を漉くのがスタンダードになりました。現在は手漉き和紙でも、工房によっては何らかの薬品を使っているところのほうが多いと思います。ただやっぱり明らかに人間にとって不自然な成分だし、うちでは廃止することにしました。代わりに冷蔵庫のマイナス温度で保存することで鮮度を保っています。

−−モノとして、ナチュラルな紙はどんな特長がありますか。

有澤:いいところはたくさんあります。不純物を含まない紙は、呼吸するほどいい紙になります。時間が経つほど強く、色はより白くなります。

−−そうなんですか?! 古紙は黄ばむイメージがありました。

有澤:黄ばむのは、紙に含まれている薬品が焼けるからです。繊維100%の障子紙なら、太陽の光で漂白されて3〜5年後により白くなっていきます。あと、湿気を吸ったり吐いたりするうちに繊維同士の水素結合が強くなって、年数を重ねるほど強度も増します。障子なら10年以上、いいコンディションで使い続けることができる。それが本来の紙の姿です。

例えば中世ヨーロッパの聖書なんかはボロボロに崩れていますよね。ヨーロッパの紙は昔からいろいろ混ざっているからです。そこでいうと日本の紙は究極。繊維しかない状態だから、劣化しても腐ることはほとんどありません。江戸時代の紙職人は、どんなに使い古した紙であっても漉き直していたようです。ナチュラルだと、無限にリサイクルできます。

−−紙づくりが機械化された現代において、ナチュラルな紙は贅沢品といえます。そのニーズや可能性をどこに見出していますか。

有澤:欲しい人に届けばいいなと思っています。今、ひと月に紙漉きするのは2〜3回。だいぶ少ない方だと思いますが、そのくらいのペースで漉く方が、道具も長持ちするし、原料もたくさん使わなくて済みます。江戸時代も、紙は高級品でした。

手漉き和紙工房コルソヤードでの紙漉き風景。1分強で紙1枚を漉くペース

折るレザー、3D折り紙

−−折り紙専用の紙を開発していますね。

有澤:紙に選択肢があることを知ってほしいと思う時、1つの需要として折り紙は合致します。今日漉いている「FO-01」という紙がそうなのですが、紙の原料である楮(コウゾ)と雁皮(ガンピ)をオリジナルの比率で混ぜてあります。簡単に説明すると、コウゾの繊維は空気の層を持つので強くて厚い紙がつくれるけれど、フワッとしていて毛羽立ちやすい点が折り紙の細かい作業には不向き。一方のガンピは繊維が緻密でフラットだからパリッとした紙がつくれるけれど、厚さが出せないので薄過ぎて折りづらい。それぞれを適切な配合で混ぜることで、強いのに毛羽立ちが少なく、シャープな折り筋をつけることのできる紙になります。

−−どんな人が買いますか?

有澤:漉いたままの全紙(約64×98㎝)で販売していた最初の2年間は全く売れませんでしたが、15㎝、30㎝角にカットして種類別にパックすることで、オンラインを中心に売れるようになりました。イベントに持っていくと「FO-01」は大人気です。折り紙好きの小学生が親御さんと一緒に買いに来てくれたり。若い世代が興味を持ってくれるのはすごく嬉しい。

−−折り紙を起点に創造する仕事。紙以外のもので設計することもありますか?

有澤:あります。例えば神戸牛の皮。レザークラフトには不適格な皮の使い道に困っているという話が神戸レザー共同組合からあって、折り紙に活用できる薄い革を一緒に開発しました。昨年は、ユナイテッドアローズが展開する「スティーブン・アラン」のプリーツスカートのデザインをしました。直近だと、バンダイとの取り組みで、僕の折り紙作品が3Dスキャンのガチャになっています。ネコやゾウなど5種類あって、バンダイのHPではそれぞれの折り図を公開しています。

−−ガチャの折り紙、折ってみましたが、かわいい見た目に反して難しすぎて、最後まで折れなかったです……。

有澤:笑。僕の本のタイトルのママ(『カワイイ! けれど難しすぎるおりがみ』)で嬉しいです。

−−海外からのリアクションもありますか?

有澤:折り紙作家としてはやはり本が動いています。中国からまとめて十数冊のオーダーがTwitter経由で入ったり。最近、韓国も折り紙がすごく活発で、若手の作家達が仲間内で本を出したりしています。韓国の紙も折りやすいんです。

−−紙漉きと折り紙。二足の草鞋はいろいろ踏み出す先がありそうです。

有澤:手漉き和紙のニーズがあるうちは、紙の仕事をしっかりしていきたい。提灯やうちわの職人さんなど、納品先もまた紙を使うプロの方々です。だからクレームを頂くこともありますが、そういうやりとりの中でスキルは伸びます。この2年で紙漉きから出荷まで僕1人でやるようになりましたが、注文数は落ちていない。プレッシャーの中で成長できたと思います。その傍らで全く別業界の企業からは折り紙のオファーが来て、紙づくりの合間に設計して、夜は自宅で本を書いて……毎日大変ですが、改めて気付くのは、折り紙はまだまだ仕事として未開拓だなということ。だからこそ折り紙には未来があるぞと思っています。

有澤悠河
1997年北海道札幌市生まれ。幼稚園の時に折り紙と出合い、12歳から難解な折り紙に取り組み始め、創作活動をスタート。高校卒業後の2016年、美濃手漉き和紙工房「Corsoyard(コルソヤード)」に弟子入りし、折り紙と手漉き和紙の両方を生かした商品開発や設計を行う。著書に『おりがみ王子のカワイイ!けれど難しすぎるおりがみ』(2019年/KADOKAWA)、『折り紙王子の凄ワザ!折り紙』(2020年/河出書房新社)、『折り紙王子の凄ワザ!折り紙 ジャポニスム』(2022年10月発売予定/河出書房新社)。なお「折り紙王子」の呼称は「マツコの知らない世界」出演時の命名をきっかけに定着。バンダイ、明治、ロールス・ロイス、ユナイテッドアローズ他、さまざまな企業とのコラボ多数。

Photography & Videography Shin Araki

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折り紙をゼロから生み出す 折り紙作家/手漉き和紙職人の有澤悠河インタビュー -前編- https://tokion.jp/2022/09/25/origami-artist-japanese-handmade-paper-craftsman-yuga-arisawa-part1/ Sun, 25 Sep 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=145557 難解折り紙ブームを経て、次世代作家が目指す新たな展開とは。彼が拠点を置く岐阜県美濃の手漉き和紙工房「コルソヤード」を訪ねた。

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この数十年で、“折り紙”の景色が激変しているのをご存知だろうか。一般的に折り紙といえば子どもの遊び、あるいは「千羽鶴」が象徴するような願掛けや伝統的文化のイメージを持っている人が大半だろう。そんな伝承折り紙とは一線を画す、「スーパーコンプレックス」と呼ばれる系統の折り紙が、世界で人気を集めている。正方形を基本とする1枚の紙だけで、切り貼りは一切せずに「超複雑」な立体造形を折り上げるのが特徴。折る工程が400前後に及ぶ大作もあり、仕上がったところでのその作品の佇まいは、折り手のスキルやセンス、使う紙によってもかなり異なってくるのがおもしろい。SNS上では日々オリガミスト(折り紙作家や愛好家)達による投稿が、作品や作者名のハッシュタグでつながりながら、年齢も国境もないユニークなコミュニティーを形成している。

「スーパーコンプレックス」は2000年代に第一次ブームを迎えた。「TVチャンピオン全国折り紙王選手権」(1999年〜)が火付け役で、折り紙王者の神谷哲史が5連覇をかけて出演した2008年がブーム最盛期といえるだろう。同年、東京大学折紙サークルOristも発足し、理論派の折り紙が主導権を握った2010年代、全国各地ではさらなる未来を担う次世代キッズ達もまた着々と育っていた。その1人が、今回インタビューする有澤悠河だ。中学時代から難解な折り紙に取り組み、その過程で紙そのものが持つ魅力にもハマり、高校卒業と同時に手漉き和紙工房に単身弟子入りした。紙づくりから手掛ける(ちなみに紙の原料となる植物も自家栽培している)折り紙作家として、おそらく日本では唯一の存在だ。

2000年代のTVチャンピオン出演組が「折り紙王」と崇められたのに対し、有澤悠河は通称「折り紙王子」(「マツコの知らない世界」出演時に命名)として愛される。近年は企業からのオファーも相次ぎ、3Dガチャ(バンダイ)、公式マスコットやロゴの設計(ロールス・ロイス、マウントレーニア)、プリーツスカートのデザイン(ユナイテッドアローズ)など、ジャンルを超えたところで折り紙の新しいプレゼンスを高めている。現在24歳。そのハイブリッドな活動に迫りながら、前編では現代折り紙の魅力と可能性について話を聞いた。

折り紙との出合い

−− 折り紙をはじめたのはいつですか?

有澤悠河(以下、有澤):幼稚園の頃。みんなと同じタイミングです。当時の折り紙は、書店や図書館で手に入る本がすべてで、自分に折れないものはないと思っていました。その自信が一気に崩されたのが、小学3年生の頃に観た「TVチャンピオン全国折り紙王選手権」。こんなに難しい折り紙があったのかとショックを受け、ますますのめり込んでいきました。

−−小中学生の頃は、どんな折り紙を折っていましたか?

有澤:「TVチャンピオン」王者の神谷哲史さんの作品集があることを小学5年生の時に知り、親におねだりして出版元の「おりがみはうす」から通販で取り寄せてもらいました。そこから難解な折り紙にハマって、中学では自分でもオリジナル作品を創作するようになりました。

−−神谷哲史さんは、スーパーコンプレックス折り紙の第一人者ですね。

有澤:そうです。当時、神谷さんレベルの複雑さを操る作家は他にいなかったと思います。神谷さんは創作ペースも早くて、新作がどんどん出てくる。それだけでも鳥肌が立ちますが、実際に折ってみると、何よりその構造の美しさが衝撃的でした。

−−神谷さんの代表作といえば、最初の作品集の表紙にもなっている「エンシェントドラゴン」や、世界で最も複雑な作品と評されている「龍神」がありますよね。有澤さんは「アスールドラゴン」と「IBUKI」(写真上)。折り紙作家にとって、ドラゴンはやはり挑戦したくなるテーマなのでしょうか。

有澤:折り紙作家それぞれのドラゴンが確かにありますね。ドラゴンはパッと見てわかりやすいのが1つの理由かもしれません。僕よりひと世代前に、東大、早稲田、京大など有名大学の折り紙サークルが流行ったんですけど、その時に折り紙の理論がかなり進化して、画期的な構造を組み込んだ作品が出てきました。ただし、そのすごさは一般の人には伝わりにくかった。僕も構造の研究を続けていますが、渾身の作品をまわりの友達や家族に見せても、リアクションはイマイチだったりするんです。その点、ドラゴンは複雑な構造を持ちながら、なおかつ見栄えがしてわかりやすい。

−−有澤さんの作風として、ユニークなキャラクターも多いですよね。「クリスマスツルー」(クリスマスツリー×鶴)、「カドマツル」(門松×鶴)、「魔女鶴」など、誰もが知っている「折り鶴」をアレンジしたような作品が人気です。

有澤:そうですね。あとは「馬人間」(※ 体が人間で顔が馬)とか。これは僕のブログ時代の定番ネタだったんですけど、反響が良くてシリーズになっています。クラリネットやトロンボーンなどの楽器作品を持たせたりして。作品そのものが楽しそうなのがいい。

伝承折り紙から現代折り紙へ

−−シンプルでわかりやすく誰もが楽しめるのは、元来の折り紙の姿でもありますよね。折り紙の系譜をたどると、吉澤章さん(1911-2005年)という作家に辿り着きます。明治生まれの彼が、それまで平面&直線の構造だった折り紙を、立体&曲線を持つ創作の世界へと導いたパイオニアだと思うのですが、それでもまだ造形はシンプルで有機的でした。

有澤:吉澤さんは現代折り紙の父といわれています。ひと昔前の折り紙にも興味があって、吉澤さんの没後に開催された作品展を見に行ったことがあります。彼は折り紙に初めて「創作」の概念を持ち込んだ人です。海外での折り紙人気も、元をたどれば吉澤さんの影響だと思います。決まった折り方しか存在しなかった当時の時代背景を考えると、あのクオリティーは本当にすごい。

−−ちょっと調べたら、吉澤さんは1950年代から晩年までの半世紀、日本のアートを世界に広めたかった外務省や国際交流基金の派遣で世界54ヵ国を回ったようです。

有澤:けっこう最近の話ですよね。吉澤さんの折り紙を見て育った世代が、次の世代を生み出して、また次へ……という流れが、この数十年の現代折り紙にはあります。その中で時々、突然変異的な変化をもたらす作家さんも出てきたり。

−−例えばどんな?

有澤:「角度系」と呼ばれる構造で折り紙の「設計」を始めた前川淳さん。90度を4等分した22.5度の倍数核だけで構成していくと、整合性の取れた展開図を作れることができますが、これを用いて理論的に折り紙を設計できることを見つけた人です。それまでの折り紙は「ぐらい折り」という、これくらい折るみたいな感じで、気持ちいい形に紙を持っていく折りたたみ方が多かったんです。それが前川さんの登場以降、折り紙は「設計」になった。今の折り紙のほとんどは、前川さんの土台に乗っかっています。

あとはやっぱり神谷哲史さん。僕もそうでしたが、神谷さんの影響で折り紙にハマるキッズ達は今もたくさんいて、小学1年生から「エンシェントドラゴン」を折る時代になっています。ほんの10年前までは考えられなかった状況。うらやましいくらいです。

形にするだけじゃない領域へ

−−折り紙の可能性をどう捉えていますか?ずばり、折り紙で食べていくことはできますか?

有澤:本の出版やワークショップなどで稼ぐことはできますが、純粋に創作だけでご飯を食べている作家は日本にはいないと思います。そこでいうと、海外のほうが折り紙はアートになっているので、ビジネスとして成立しています。

−−海外でのORIGAMIはアートの文脈でも語られていて、より表現の幅が広そうです。

有澤:そう思います。紙の隅をちょっと折っただけ、みたいな作品が、海外では折り紙として成立していますから。僕達が探究している折り紙はまず目的の形があって、それをいかに折り出すかがすべて。その過程が楽しい。だから折り紙作家としては、できたものへの執着はあまりないかもしれません。

−−これまで創作した作品は大量にあると思いますが、どのように保管を?

有澤:コンテナや段ボール箱にどんどん詰め込んでいます。紙は崩れやすいので、ひとつの箱にまとめて保管することで、作品同士が支え合って緩衝材になるメリットもあります。コンディションを保つ意味でも、部屋に飾ったりなどはしません。

−−現代折り紙は、職人というよりデザインの世界なのですね。

有澤:仕事としての折り紙は、ほとんどが設計です。例えば2019年秋に受けたロールス・ロイスからの依頼は、スピリット・オブ・エクスタシー(ロールス・ロイスの公式マスコット)の精霊を折り紙でデザインして、エキシビションの時にパフォーマンスをしてほしいという内容でした。エキシビションの来場者に配る折り図も書いて、ポスターのグラフィックも作成して、自分で手漉きした紙に印刷して納品しました。

−−何かを創作する時、その手の内まですべて公開してみせるというのが折り紙作家の1つ特性としてあります。折り図にするところまでが仕事。

有澤:本を出すのもそうで、折り紙作家が出す本は、1冊でトータル1,500工程以上を絵におこす作業なので、膨大な時間がかかります。ちなみにオリガミスト達は折り図がなくても、折り線だけを引いた展開図で解読します。上級者になると、完成品を見るだけでだいたい折れちゃいます。

空中で形を変えていく折り紙。折り紙専用紙「FO-01」を使用

−−音楽の耳コピみたいな?

有澤:まさに。折り紙作家の間では「にらみ折り」っていうんですけど、じっと対象をにらんで折り方を予想しながら折っていくやり方です。

−−できるんですね……そんな凄腕がそろう折り紙界で、有澤さんはさらに紙から自分でつくる職人でもあるというのは異色の存在です。

有澤:創作を始めた子どもの頃から、おもしろい形がつくりたい以上に、紙そのものへ思いがあって。人の手から生まれた紙にはエネルギーがあります。そのエネルギーを生かす方向に、僕は形を変えるだけ。折り紙はいつもそんな気持ちで創作してきました。手漉き和紙にチャレンジしたいと思ったのは、折り紙のための理想の紙が欲しいというのももちろんありますが、何よりモノとしてゼロから生み出したい思いが強かったから。変えるだけじゃなく、生み出すためには、どうすればいいのか。紙づくりから行うことで、その唯一性にたどり着けると思ったんです。(後編に続く)

有澤悠河
1997年北海道札幌市生まれ。幼稚園の時に折り紙と出合い、12歳から難解な折り紙に取り組み始め、創作活動をスタート。高校卒業後の2016年、美濃手漉き和紙工房「Corsoyard(コルソヤード)」に弟子入りし、折り紙と手漉き和紙の両方を生かした商品開発や設計を行う。著書に『おりがみ王子のカワイイ!けれど難しすぎるおりがみ』(2019年/KADOKAWA)、『折り紙王子の凄ワザ!折り紙』(2020年/河出書房新社)、『折り紙王子の凄ワザ!折り紙 ジャポニスム』(2022年10月発売予定/河出書房新社)。なお「折り紙王子」の呼称は「マツコの知らない世界」出演時の命名をきっかけに定着。バンダイ、明治、ロールス・ロイス、ユナイテッドアローズ他、さまざまな企業とのコラボ多数。

Photography & Videography Shin Araki

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サンローランが6都市とコネクトした4日間 東京の「都市とファッション」を写したホンマタカシの話 https://tokion.jp/2022/07/23/interview-takashi-honma-self-07/ Sat, 23 Jul 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=134218 世界6都市で開催された「サンローラン」のアンソニー・ヴァカレロによるアート・プロジェクト「SELF 07」。東京展について、マグナムのゲストフォトグラファー、ホンマタカシに制作背景等を聞く。

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2022年6月9日、「サンローラン」のクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロが束ねるアート・プロジェクト「SELF 07」が世界6都市で同時スタートした。円柱に囲まれた吹き抜けのスペースで、各都市1名のフォトグラファーの作品を展示。一周ぐるりと鏡面になっている外観が周囲の景色を映し出し、都市と溶け込むように同化する。

「サンローラン」というブランドは多くを言葉で語ろうとしない一方、アートとのつながりが深く、これまでも多様なフォトグラファー、映画監督やアーティスト達とコラボレーションしてきた。そのルーツをさらに自由に拡張し、多彩なつながりをリアルに可視化させたのが、今回の「SELF 07」だ。建て込みのディテールを都市ごとに最適化させながら、共通事項としていずれもサークルの中央に木が植えられている。まるでそこにあらかじめ根を張っていた木を取り囲むように展示された6都市6様の写真。国、都市、文化、そこに生きる個人とファッション。複雑な個性を内包する「サンローラン」の今が、各都市に生きるフォトグラファー達のまなざしを通して浮かび上がる。

アンソニー・ヴァカレロがキュレーションするアート・プロジェクト「SELF」。森山大道を迎え、パリフォトで作品展示を行った2018年のスタートから7回目を迎える今回は、写真家集団マグナムとのタッグで、東京はホンマタカシがゲストフォトグラファーとして参加している。

渋谷・宮下公園の屋上に広がる芝生ひろばのど真ん中に、東京会場はポップアップ。サークルの裂け目から入って左手、渋谷駅側のウォール全面を覆うのは、カメラオブスキュラで写し取られたビル群のイメージだ。ホンマタカシは活動初期からカメラオブスキュラの技法を実践しており、今回もどこか都内ホテルの一室をカメラに見立てて、窓の外の景色を捉えたようだ。ボタン穴ほどの小さな1点を除き、完全に光を遮った部屋に充満するイメージは、まさに今回の展示と近い見え方なのだろうか、と一瞬想像するが、今回の設営は屋根がないので、カメラオブスキュラの壁の上はスコンと抜けて空。初日はあいにくの雨だったが、最終日には太陽の光が燦々と差し込み、見たことのない景色を立ち上げていた。対面のウォールには、サンローランの服を着た男女のモデル写真と、都市の写真がそれぞれ10枚ずつ、額装なしのランダムなレイアウトで貼られている。

「今しか撮れないもので、先々まで残る写真。それを僕は撮っています」

−−ひと目でホンマさんとわかる、都市とファッションが共存する写真でした。

ホンマタカシ(以下、ホンマ):このプロジェクトの話を最初に頂いた時、まず先方に質問したのは、いつもの僕のスタイルでやっていいのかということ。「もちろん。だから選んだ」といってもらえました。僕が、例えば白バックでロックな写真を撮るのは違うでしょう。その点、森山大道さんの回は、「サンローラン」の世界観とも合っていましたよね。

−−東京の都市をテーマにした撮影は、これまでも多くありましたよね。

ホンマ:そうですね。海外から声がかかる時は、大体「東京のストーリー」を撮ってといわれます。撮るのは、服と着たモデルと都市の写真で、レイアウトも自分で組みます。どのメディア、どのブランドでも、それが僕のスタイルでいつも変わらない。

−−今回、モノクロの写真が混ざっていたのは、ちょっと新鮮に映りました。

ホンマ:そこは新しいアレンジでした。

−−車道や横断歩道、ガードレールや標識など、記号的な要素がいつもより印象的に入り込んでいる印象です。

ホンマ:僕等の行動は、実は東京という街の圧によって、制約され、誘導されている。今回の展示リリースには、そんなコメントを寄せました。

−−パリの空港で撮ったハリー・グリエールの写真も、人の流れを誘導するサインが目立ちました。他都市の写真を、ホンマさんはどうご覧になっていますか。

ホンマ:パリの写真はものすごく作り込んであってすごいと思いました。今回のプロジェクトは、6ヵ所で次々にスタートするっていう同時開催のコンセプトがおもしろいと思う。4日間しかないので、できることならワープして自分も見に行きたい。他都市の写真とミックスして並べて、バーチャルでも見れるようになったら楽しいですね。

−−これぞという決定的瞬間を捉えてきたマグナムの方向性と、写り込んでしまうハプニングの要素も楽しむようなホンマさんの写真のアプローチは一見相いれず、意外な座組みだなと思いました。

ホンマ:どうかな。全く方向性が違うかというと、そうでもない。なぜならファッション写真は、ドキュメンタリーだから。その時の洋服で、その時のモデルを東京で撮る。今しか撮れないもので、先々まで残る写真。それを僕は撮っています。

ホンマタカシ
1991~1992年にかけてロンドンに滞在し、カルチャー誌「i-D」で活躍する。1999年、写真集『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』(光琳社出版)で第24回木村伊兵衛写真賞受賞。2011年から2012年にかけて、個展『ニュー・ドキュメンタリー』を日本国内3ヵ所の美術館で開催。著書に『たのしい写真 よい子のための 写真教室』、近年の作品集に『THE NARCISSISTIC CITY』、『TRAILS』(ともにMACK)がある。また2019年に『Symphony その森の子供 mushrooms from the forest』、『Looking Through – Le Corbusier Windows』を刊行。 現在、東京造形大学大学院客員教授。

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世界的アーティスト、ココ・カピタン さまざまなメディアで実践する表現への挑戦 https://tokion.jp/2022/05/02/world-renowned-artist-coco-capitan/ Mon, 02 May 2022 09:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=114703 写真、散文、絵画、インスタレーション…… マルチメディアの海で回航する表現者ココ・カピタンが日本初個展「NAÏVY: in fifty (definitive) photographs」で来日。その個展会場で話を聞いた。

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「グッチ(GUCCI)」2017-18年秋冬コレクションでの、手書きのメッセージをのせたコラボレーションが記憶に新しいスペイン人アーティストのココ・カピタン(Coco Capitán)。ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート在学中、生活の糧を得るべく始めた写真のインターンシップで早くも頭角を現し、あっという間に世界中のブランドキャンペーンを手掛けるスターダムへ。写真と並行し、ライティング(#cococapitanwriting)でも注目を集める存在だ。素朴でストレートな筆致はまるで子供の落書きのよう、それでいて含意はピリッと哲学的ですらある。

日本での個展は今回が初。渋谷のPARCO MUSEUM TOKYOの会場入り口では、大きな3枚のフラッグが私達を出迎える。スケッチだけで発表していたという二次元のオブジェクトがここでは実体を持ち、吹いていない風を受けてはためいている。

「日本で展示するなら写真だと思った」

——「NAÏVY」は10年にわたって撮り続けているテーマと聞きました。本展はタイトルに (definitive) photographs=決定的写真、とありますが、これまでの集大成あるいは最終章としての位置づけになるのでしょうか?

ココ・カピタン(以下、カピタン):そうですね。でも10年かけて撮りためたというよりは、過去10年で撮り続けたパーソナルな写真の中に、自分の内なる感情のつながりを見出す試みでした。自分の感情をベターな形で伝える50枚になっていると思います。

——「NAÏVY」は、ロンドン(2020年)、アムステルダム(2021年)と巡回し、日本では初の個展となります。通底していること、新しい視点はありますか?

カピタン:同じコンセプトでやっているので同じタイトルではありますが、東京で展示しているプリントはすべて今回のために準備した単独のコンテンツです。ずっと日本で展示したいと思っていました。日本には尊敬しているアーティストがたくさんいますし、歴史にも興味があります。そして感覚的にも、日本には写真に対して敏感な感性を持っている人が多い気がします。なので日本では、写真のフォーマットにフォーカスした個展をやりたいと思って、こういう形にしました。

—— 具体的には、日本のどんなアーティストが好きですか? 

カピタン:日本の写真で好きなのは東松照明(とうまつ・しょうめい)です。沖縄の一連の写真に惹かれます。中でも写真集『Chewing Gum and Chocolate』がお気に入りの1冊です。森山大道もとても好きです。伝統的な浮世絵版画にも興味があって、ビッグウェーブを描いた人……名前をいま思い出せないけど。

——葛飾北斎。

カピタン:そう。照明、大道、北斎。この3人が私のフェイバリットです。

——以前、Twitterのプロフィール欄でご自身のことを“New traditionalist photographer” と表現していましたね(2013年1月14日のInstagramにスクショ投稿あり)。写真やアートの伝統に対し、どんなスタンスで向き合っていますか?

カピタン:トラディショナルな形式を知ることに興味があります。どんなアートでも、もっとクリエイティブになるためには、技術的な基礎を学ぶのはとても大切だと思います。自分のことを“New traditionalist(新しい伝統主義者)”と呼んだのは、自分が実践しているメソッドがとても伝統的だから。今もフィルムカメラを使っているし、レンズの選び方、使い方、現像まで、オールドスクールなやり方を学ばなければいけませんでした。技法の基本をマスターしてこそ、たくさんの自由が得られるし、新しい要素で遊ぶことができて、もっとフレッシュなものを生み出すことができると思っています。

——就学先にロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートを選んだ理由は? 

カピタン:スペイン南部のセビリアという小さな街で育って、18歳の時にロンドンに移りました。小さい頃からアートやカルチャーが好きで、同じような興味を持つ人々との出会いに憧れて、大きな街に住むことをずっと夢見ていました。ニューヨークかロンドン。ロンドンを選んだのは、スペインから近いし、十分にインターナショナルな都市だから。

—— 写真家としてのキャリアは、どのようにスタートしましたか? 

カピタン:写真は小さい頃から好きでしたが、キャリアとして考えたことはなかったです。ロンドンに移って、なりたいと思ったのはアーティスト。でもどんなアーティストになりたいのかは、まだぼんやりしていました。なので、アートスクール(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)に進学して、ファインアートに加えて、写真も専攻しました。

18歳から経済的に自立していたので、学校に通いながらインターンシップでフォトグラファーの仕事を始めました。お金を稼ぐための実用的な選択でしたが、仕事はとても楽しかった。そしてどんどん仕事が増えていって……と、フォトグラファーとしてのキャリアは偶然始まった感じです。私のフォーカスは最初からファインアートで、写真との出会いはもっとカジュアルです。

「何か1つを追求するのはつまらない」

——写真に加え、ライティング、ペインティング、インスタレーションと、いろんなメディアを使って表現しています。それぞれのメディアは補完し合うものですか、それともコラボレーション的に掛け合わせるもの?

カピタン:新しいことにトライするのが好きなんです。私の場合、1つのことにフォーカスするのはちょっとつまらないと思ってしまいます。何か1つのテーマを突き詰めていくほうがベターという考え方もありますが、それによってもっと上手になることや権威になることには気持ちが向きません。私のアートは、もっといろんなメディアに挑戦しながら、それぞれのメディアの中で自分の限界を見つけるプロセスです。1つのメッセージをいろんなメディアを介して伝えたい。ペインティングから写真へ、そしてライティングへとジャンプを続けることで、それらがどのように接続していくかを見たい。だから、多くの形式を1つの空間に共存させることができる展覧会は好きです。カジュアルな感覚で、それぞれの存在やコンセプトを埋め合うように選んでいます。

——ライティングの特徴として、すべて大文字だったり、鏡写しになっている文字があったり。筆致がノスタルジックで親しみも感じます。子供の頃から変わらないスタイルですか、それともアートを追求する過程で発見した?

カピタン:子供の頃からいつもノートブックを持ち歩いていました。とてもシャイだったので、思いを言葉で伝えることが難しくて、いろんな考えや感情を一度メモにとってから、言葉にする練習をしていました。絵も描いたし、まさに子供っぽいやつです。

写真への興味も、その頃始まった気がします。雑誌や本の切り抜きを集めて、自分が理解しやすい分類をして、ノートに貼っていました。それぞれにタイトルをつけたり、なぜそれが好きなのか理由を書き加えたり。そんなノートがたくさんありました。自分だけの Googleデータベースみたいな。

——写真とライティングのミックスメディアの原点ですね。

カピタン:ライティングがアートになるとは思っていませんでした。写真もそうでしたが、ライティングも思いがけないところから始まりました。自分の作品について真面目に考え始めた学生の時、自分は自分のアートをどう感じているのか、あくまで自分で向き合うための手段として文を書き始めました。それを友人に見せたら、作品よりもライティングの方に興味を示してくれることも多くて。そこから発展して、オンラインでシェア(#cococapitanwriting)するようになりました。

「グッチ」とのコラボレーション(2017-18年秋冬)も、始まりはとてもカジュアルです。もともとフォトグラファーとしてグッチの仕事をしていたのですが、アレッサンドロ・ミケーレがある時、私のノートブックを見て気に入ってくれて。写真のキャンペーンではなく、ライティングでやらないかという話になりました。

——「グッチ」のキャンペーンで知名度が上がり、Instagramは現在20万人超のフォロワー。写真2投稿+ライティング1投稿のスタイルが確立されていて、作品としても楽しめる構成です。

カピタン:以前はもっとパーソナルというか、リサーチも含めたカジュアルなプラットフォームでしたが、フォロワーが増えて、とても大きくなってしまいました。今は完成した作品やプロセスの一部を見せる場所で、ビジネス寄りになっています。ちょっと真面目すぎるというか、自分的にはナチュラルではないので、退屈に思うこともあります。もっと遊び心のあるプラットフォームがあったらなとも思いつつ、でもInstagramはライティング、ペインティング、写真をつなげるフォーマットとして面白いので、これからも続けます。

——Instagramでリサーチをする、とおっしゃいましたが、インターネットとどのように向き合ったり、遊んだりしていますか。作品を見る限り、写真はすべて手焼きのプリントで、オブジェに刺繍をしたりと、有機的なアプローチが多いです。

カピタン:人とつながることができるのはインターネットの利点で、特に小さな街で育った私にとって、最初はとても便利なツールでした。ただしソーシャルメディアは中毒になるようにデザインされているから、束縛されがちです。それがクリエイティビティにとっては命取りになると思う。なので、なるべく振り回されすぎないように気をつけています。帰宅後はInstagramのアプリを終了する。週に何度かポストするときは、リロードしてフィードを追わない。スタジオにいる間はスマホを引き出しにしまって、読書や人と過ごす時間に集中するなど。

例えばバスを待つ時間、つまらないと思ってデジタルで時間を埋めてしまう人が多いですが、本当はつまらなくないと思います。アイデアは、気を揉むことから生まれるから。何が自分のまわりで起こっているのかを、自分で見ることができるというのが大切です。

——観察する視点の写真が、そう言われると多いかもしれません。

カピタン:ロンドンの地下鉄で周囲の人をじっと見つめても、誰も気づきません。みんなスマホに夢中だから。写真を撮られても気づかない人々の写真シリーズ、やろうと思ったらできそうです。

「パーソナルとコマーシャルは別々に共存する」

——「NAÏVY」の話に戻りますが、写真では何を撮ろうとしているのか。考えがあったら教えてください。被写体は親しい間柄の人たちですよね。後ろ姿、パーツに寄った画角などが印象的です。

カピタン:即興です。いい写真を撮りやすい環境をつくることはもちろんありますが、基本的には準備しません。被写体は近しい友人やパートナーで、彼ららしさがよく撮れていると思います。何かに夢中になることで注意をそがれた時ほど、その人らしさのエッセンスが滲み出る。その瞬間を撮るのが好きなんです。後ろ姿が多いのはたぶん、私が人を観察するのが好きだから。ディテールへのこだわりが強いのもあるかもしれません。もし人が正面を向いていたら、そこの情報量が多くなって、細かいディテールを見失いがちだから。「NAÏVY」はとてもパーソナルな作品です。これがコマーシャルの仕事になると、もっと具体性が必要になるから、事前にスケッチを準備することもあります。

——パーソナルワークとコマーシャルの撮影で、技法的な違いもありますか?

カピタン:使っているカメラについて聞きたいですか? 私のカメラコレクションは日本製が多いです。コマーシャルはほぼすべて「CONTAX 645」。理由は、多くの写真をクイックに撮れるから。中判でありながらネガが16枚撮れるし、オートフォーカスでシャッター速度が速いです。いつでも撮れる体制でいるために、撮影現場ではアシスタントの中で誰が一番早くフィルムを装填できるか競争させています。ただし重いので、パーソナルには向いていません。パーソナルの撮影の時は、もっとカメラとロマンティックな関係でありたい。持ち運びやすい軽量重視で、最近「CONTAX Aria」を買いました。35mmはフレキシブルさが最高。普段は中判が好きで、「FUJIFILM GF670」のレンズが美しく気に入っています。その前は「LEICA R6」を愛用していました。

——コマーシャルとパーソナル、それぞれエンジョイしていますね。

カピタン:私のベストは、両方のコンビネーション。それぞれまったく別の撮り方で、同時にバランスよく進めるのが好きです。

——今回の東京滞在中、行きたいところはありますか?

カピタン:ノートにたくさんリストアップしています。来日前後がバタバタしていたので、整理しなきゃと思っているところです。私が見たいのは、人々の当たり前の生活です。都内だけではなく、少し離れた郊外まで足をのばして、日常の風景を見たいと思います。

ココ・カピタン

ココ・カピタン(Coco Capitán)
1992年、スペイン・セビリア生まれ。ロンドンとマヨルカ島を行き来しながら活動している。2016年にロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで写真分野の修士課程を優等で修了。彼女のアート活動はファインアートとコマーシャルアートの世界にまたがっており、その作品には、写真、絵画、インスタレーション、散文などが含まれる。最近の個展に、「Naïvy」(マクシミリアン・ウィリアム・ギャラリー/ロンドン/2021年)、「Busy Living」(ヨーロッパ写真美術館/パリ/2020年)、「Is It Tomorrow Yet?」(大林美術館/ソウル/2019年)、グループ展に「Infinite Identities」(ハイス・マルセイユ写真美術館/アムステルダム/2020年)がある。写真集に『Naïvy』『If You’ve Seen It All Close Your Eyes』『Middle Point Between My House and China』がある。
https://cococapitan.co.uk
Instagram:@cococapitan

Photography Mayumi Hosokura

■Coco Capitán Exhibition NAÏVY: in fifty (definitive) photographs
コロナ禍の2020年、ロンドンを皮切りに、昨年アムステルダムに巡回した個展「Naïvy(ナイーヴィー)」を踏襲した待望の日本初個展。本展では、常に進化し続ける彼女の写真家としての活動を軸に、先ごろ完結した「Naïvy」シリーズの完全版となる50点の写真作品を、カピタンが自ら制作したさまざまなファウンド・オブジェとともに初公開展示する。
会期:4月15日〜5月9日
会場:PARCO MUSEUM TOKYO
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ4階
時間:11〜20時 ※最終日は18時閉場 ※入場は閉場の30分前まで 
⼊場料:¥800
https://art.parco.jp/museumtokyo/detail/?id=938

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