須山佳子 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/keiko-suyama/ Wed, 01 Mar 2023 08:02:35 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 須山佳子 Archives - TOKION https://tokion.jp/tag/keiko-suyama/ 32 32 連載「ヨーロッパのJビューティ通信」Vol.7 日本発「和流」を世界へと届ける投資家  Jビューティを通して日本の哲学を伝える https://tokion.jp/2023/02/27/j-beauty-report-from-europe-vol7/ Mon, 27 Feb 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=168876 日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」須山佳子による、ヨーロッパのJビューティブランドを考察する連載企画。第7回は日本発「和流」。

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欧米の美容業界で注目を集める“Jビューティ”。伝統的に培われた美意識と、概念や習慣に由来する日本の美を象徴した美容法が、世界中の人々の日常の一部へと浸透し始めた。連載「ヨーロッパのJビューティ通信」は、欧米で知名度を上げるJビューティブランドを紹介し、日本古来の美容法を深く掘り下げていく。同連載の監修を行うのは、パリ在住20年以上で、日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」の須山佳子代表。ヨーロッパのJビューティトレンドの立役者である彼女がオススメするブランドの魅力と、それぞれが捉える日本の美意識に迫る。

第7回は、日本の伝統的な“調和した生き方”をビューティで体現する「和流」。日本で生まれた同ブランドにほれ込んだ、投資家で輸入業を営むマルコ・ピアチェンティーニがヨーロッパを中心に世界へと届けている。製品からパッケージに至るまで100%日本製にこだわり、スキンケアを通してバランスの取れたライフスタイルを提供することを指針とする。ピアチェンティーニは、「Jビューティは健康や社会的表現、人間の尊厳に深く根差している」と語り、世代を超えて受け継がれる儀式的な美容法に魅せられたと語る。世界最大の化粧品見本市コスモプロフの日本パビリオンの運営者でもある彼に、Jビューティの魅力について存分に語ってもらった。

マルコ・ピアチェンティーニ

マルコ・ピアチェンティーニ
イタリア北部のクレマ出身。ミラノポリテクニック大学で化学技術者の修士号、ETHチューリッヒ大学で技術科学の博士号、SDAボッコーニ・ビジネススクールでMBAを取得。ETHチューリッヒ大学の研究員として環境触媒を研究し、その後、2007年にスキンケアやパーソナルケア製品の梱包を行う国際的な企業でチーフ・イノベーション・オフィサーとして従事。2011年から、ユーロフィン・サイエンティフィック・グループで、ユーロフィン・コスメティック&パーソナルケア・イタリアのナショナル・リーダー(CEO)として、マネージング・ディレクターを務める。

須山佳子

須山佳子
東京生まれ、パリ在住20年。アンスティチュ・フランセ モード(INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE)にてブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本からのヨーロッパ市場への進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「Bijo;」を主宰。取引先はハロッズ、ボンマルシェ、リッツ・パリ、セフォラなど大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。

日本の伝統的な“調和した生き方”という哲学

−−まずは、「和流」について教えてください。

マルコ・ピアチェンティーニ(以下、ピアチェンティーニ):「和流」の哲学は、日本の伝統的な“調和した生き方”を表していると言えます。バランス、愛、尊敬、生きることへ意識を向けた人々のコミュニティーであり、これらの価値観が日本の伝統的な文化の芯にあることを見出しました。肌は体の外側の部分であり、私達が世界と接触するための器官です。肌は感情を表し、感情を語り、健康を反映するもの。したがって、肌は私達の価値観や調和を表現するものと考えます。だからこそ「和流」は、その哲学と価値を伝えながらケアすべき対象として、肌を選びました。

−−「和流との出合いは

ピアチェンティーニ:「和流」は、2014年に横浜にある日本の会社の中で生まれました。2016年に日本政府のゲストとして初めて日本を訪れたときに「和流」を紹介され、世界へと広めたいと思ったのです。その第1の動機としては、製品を作っている人達の心でした。デジタル化、そしてAI化が進む中で、「和流」は人の手で、人のために作られています。

−−「和流」のベストセラーとシグネチャー商品は?

ピアチェンティーニ:ベストセラーは、ダブルクレンジングセットとアイクリームの2つ。ダブルクレンジングセットは、ディープクレンジングでありながら、敏感な肌を尊重した優しい仕上がりとなっています。初めて使用した時から、肌が明るく、トーンが均一になり、より引き締まった印象になることが実感できます。自社で製造する優れた製品を主要な成分にしていることから、この高い効能を発揮するのです。また、天然エッセンシャルオイルを使用していることによって、繊細な香りを作り出し、肌を洗いながら本物のアロマテラピーを体験できます。

アイクリームは、そのマットな質感、即効性と引き締め効果で、目の輪郭、肌のたるみ、くま、小じわを改善すると高く評価されています。その他の代表的な製品は、エミュリューション(アクア、モイスト、リッチの3種類)とセラム。これらの商品は、日本の伝統的な花嫁衣装である「白無垢」をモチーフにしたユニークなデザインのパッケージに包まれています。このパッケージは、2014年ペンタワーズの化粧品パッケージ部門で金賞を受賞し美術館で展示され、カタログにも掲載されているんですよ。

健康や社会的表現や人間の尊厳といった価値観に深く根差しているJビューティ

−−各国に独自の美容文化がある中で、なぜJビューティに魅了されたのでしょうか?

ピアチェンティーニ:個人的な意見として、多くの国に習慣がありますが、儀式を持つ国はごくわずかです。その中で日本は、儀式を方法、ライフスタイルとして最もよく体系化していると思うのです。儀式は堅実で一貫性があり、世代を超えて伝えることができ、継承、表現、輸出することができます。さらにJビューティは健康や社会的表現、人間の尊厳といった価値観に深く根差しています。1つひとつの工程が、繰り返しの中で細部まで完成され、丁寧であること。だからこそ、Jビューティは、単に“メイド・イン・ジャパン”ではなく、日本の文化や価値観が染み込んでいるのです。

−−Jビューティをどんな言葉で定義しますか?

ピアチェンティーニ:何世紀にも渡って日本で育まれた、日々のパーソナルケアに関する伝統や手法のことを意味します。これらの伝統や方法を西洋の美容と比較すると、その特徴は予防的かつホリスティックなアプローチにあります。なぜなら、日本の子ども達は肌の老化が心配される前に、幼い頃からスキンケアやパーソナルケアについて学んでいるからです。スキンケアは老化の兆候を消したり、美の基準を真似たりするのではなく、肌を良好な状態に保つための常識的な習慣と考えられているのです。ホリスティックとは、日本ではスキンケアがヘルスケアの一部であることを意味します。スキンケアは見栄を張る行為ではなく、身体全体の健康に良い影響を与える意識的なセルフケアなのです。

−−昨今Jビューティがこれほど人気になっている理由は何だと思いますか?

ピアチェンティーニ:2016年、世界最大の展示会「コスモプロフ・ボローニャ」でのグローバルフェアの際にパブリックスピーチで「Jビューティが強くなる一方で、Kビューティも始まる」と話したのですが、おそらくJビューティのコンセプトを初めて大勢の前で伝えたので、当時としてはかなり大胆な発言と思われたようです。会場には日本の代表団も来ており、これがきっかけで同年の7月に日本政府から招待され、日本を訪問することになりました。今も同じ思いでいます。その理由は、日本が世界で化粧品会社やメーカーの数が多い国だから。そして、優れた製品を作るためのポジティブな素質がたくさんあるということもそう。資生堂と花王は2大メーカーですが、化粧品やパーソナルケアの分野では、メイド・イン・ジャパンのブランドの一部に過ぎません。最後の理由は、日本が今でも神秘的であり、プレミアムな国として認識されています。中国はマスマーケット、韓国はマーケティングとユーモア、日本はプレミアムとラグジュアリー。もちろん、これらの考え方はステレオタイプですが、欧米ではごく一般的なこと。ですから、Jビューティに対してすぐに好奇心や関心が高まるのは理解できます。

−−「和流」のユーザーからの反響は?

ピアチェンティーニ:ミラノの旗艦店は、高い顧客定着率を誇っています。顧客が再来店するのは、自分の肌が変化していることを実感し、カスタマイズされたサポートを常に受けられることを知っているからです。私達は単に製品を売るだけでなく、体験も提供しています。1人ひとりに合わせたスキンカウンセリングのアフターサービスを継続的に提供し、フィードバックや提案に耳を傾けるよう心掛けています。旗艦店をオープンした時にヨーロッパで初めてJビューティの体験型センターを作りました。顧客からも好評で、このような体験ができることを評価していただいています。

−−最後に、今後のビジョンについて教えてください


ピアチェンティーニ: 現在、私達は最も重要なJビューティの輸入業者の1つと考えています。ボローニャで開催される世界最大の化粧品見本市「コスモプロフ」の日本パビリオンを企画し運営も行っています。私達の成功は、地域社会の生活の質を向上させるための社会貢献活動によって、地域社会に還元されることです。また、スキンケアの方法と自己啓発について教える「和流」アカデミーのような新しいサービスを立ち上げています。ジェンダー平等を推進するため、「和流」チャレンジカップというゴルフをはじめとするスポーツイベント、アーティストや職人を通じて、日本のライフスタイルを表現する文化イベントにも投資しています。私達は、未来の世代のために、健康と尊敬を創造することを目指します。

Direction Keiko Suyama

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日本の美を体験する場「ビエン;」がパリにオープン ヨーロッパでのJビューティの立役者・須山佳子の新たな挑戦 https://tokion.jp/2023/01/16/interview-bien-yoshiko-suyama/ Mon, 16 Jan 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=164323 パリで日本の美を体験する「ビエン」がオープンした。立ち上げたのはTOKIONの連載「ヨーロッパのJビューティ通信」を監修する須山佳子と、ファッションデザイナーの星野貞治。

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2022年11月に、パリで日本の美を体験するショールーム兼コンセプトストア「ビエン;(Biën;)」がオープンした。立ち上げたのは、TOKIONの連載「ヨーロッパのJビューティ通信」を監修する須山佳子と、パリを拠点にファッションデザイナー兼アートディレクターとして活動する星野貞治だ。

須山は日本の優れた美容プロダクトをイギリス等のヨーロッパへと広めた、Jビューティの立役者でもある。2010年頃からブランドの代理としてセールスやPR、ブランディングまでを幅広く担い、2016年に日本の美容とライフスタイルをテーマにした「ビジョ;(Bijo;)」をスタートさせた。ロンドンのパンテクニコンとパリのボン・マルシェで常設コーナーを設ける等、着実に成長を続け、その世界観をさらに拡張させたのが「ビエン;(Biën;)」だ。“生活に宿る美”という、日本独自の美的表現をプロダクトや空間、サービスを通して表現している。自然光が吹き抜けから差し込む清々しい店内で、Jビューティの体験ができる「ビエン;」のコンセプトや展望について聞いた。

須山佳子
東京都生まれ、パリ在住20年。INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE でブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本の市場からヨーロッパ市場への進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「ビジョ;」を主催。取引先はハロッズ、ボン・マルシェ、リッツ・パリ、セフォラ等、大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。2022年11月に日本の美を体験するショールーム兼コンセプトストア「ビエン;」をオープン。

外側だけではなく、インナービューティや所作、機能美といった日本の美の概念を包括

−−店名の「ビエン;」の由来とは?

須山佳子(以下、須山):欧文では「Biën;」と表記しています。Bi=美、ën=縁・円・苑という日本語から成り立っており「さまざまな美と出会い、美のご縁が生まれますように」という願いを込めました。ここでいう“美”とは外側だけの美容ではなく、インナービューティや所作、機能美といった日本の美の概念を包括しており、それらを訪れる方に体験してもらうことを目的としています。

−−実際に「ビエン;」ではどのような体験ができるのでしょうか?

須山:月曜日から水曜日はアポイントメント制を取っており、時間をかけた商品説明と美容製品を試していただけるようにしています。その際、日本から取り寄せた白川村産の美しい檜のカウンターでお客さまを迎え入れ、日本茶と和菓子を提供します。このように丁寧に対応する日本文化に根付いた接客というホスピタリティを、プロダクト以上に重視しています。また、多目的スペースの中2階では、セルフマッサージのセミナーや風呂敷の講座、専門家とともに行う漢方茶作り等、さまざまなワークショップを通して日本文化を体験してもらう場となっています。「ビエン;」はショールームとしての機能も果たすため、クライアントや企業の方々に足を運んでいただいた際も、この日本美を意識した空間の中でプロダクトの説明をすることで、より深く理解してもらえると考えているのです。

−−空間作りとインスタレーションにも大変こだわっているようですね。

須山:「ビエン;」共同創業者兼クリエイティブ・ディレクターの星野貞治が内装デザインを手掛け、商品棚やランプシェード、椅子といったすべてを日本の製品で飾っています。店内は陰陽をテーマに、左側にライフスタイルプロダクトや作家の作品を置く“陰”のスペース、右側は美容とウェルネスのプロダクトが並ぶ“陽”のスペースに分けています。洗練された日本の美を体現するもので空間を作ることにこだわりました。

−−取り扱う製品についても教えていただけますか?

須山:「ビエン;」のコンセプトは美・衣・食・住です。美はJビューティに特化しており、TOKIONの連載で取り上げた「レイ トウキョウ」や「Shikohin」といった、日本古来の知恵と最先端技術を融合させた製品を扱っています。素材や品質だけでなく、見た目の美しさも重要で、例えば月桃ハーブを使った「ルハク」は海外市場向けにパッケージデザインも一新させました。革新的な日本製の美顔器「ヤーマン」や「スリムセラ」といったツールが大変好評を得ています。

衣のカテゴリーでは、京都西陣織の「細尾」や有松絞りの「Suzusan」、今治タオルといった日本ならではの繊維を用いた衣服を揃えています。

“美食同源”をテーマにした食は、「ビジョ;」が独自開発したオーガニック日本茶ブレンドやコラーゲン美容ドリンクを提供します。インナービューティは昨今ヨーロッパで注目されているキーワードであり、「ビエン;」も美しく健康であるためには体の中に入れるものへのこだわりこそが重要だと信じています。

住のライフスタイルのスペースのテーマは、“用の美(beauty in use)”です。繊細で静か、たおやかな佇まい、精巧で卓越した美しさ、そして職人の手仕事により生み出された機能美を兼ね備えるプロダクトを厳選しています。開化堂の茶筒や16代続く朝日焼の茶器、竹職人の公長齋小菅の花籠など。ヨーロッパの生活に馴染むという点も重視し、例えば中川木工の伝統的な檜のワインクーラーは、和の趣きを感じるデザインでありながらフランスの食卓に欠かせないアイテムとして、人気商品の一つです。作家やアーティストの個展も定期的に開催し、プロダクトと人とのご縁が生まれる空間になっていくことを願っています。

日本の作家や職人、ブランド創業者や生産者の声を代弁

−−オープンから1ヶ月半が経過し(取材時時点)、どのような手応えを感じていますか?

須山:Jビューティや日本の製品に関心がある、パリ在住の方々が足を運んでくださっています。ボン・マルシェ百貨店の「ビジョ;」の常設コーナーは混雑していることも多いため、製品の説明を聞いたり試してみたい、カウンセリングを行ってほしいというお客さまが、「ビエン;」の落ち着いた空間に満足していただけているようです。また、「ビジョ;」では展開していなかった衣・食・住のプロダクトもお客さまの好奇心を掻き立て、新たな発見を提供できていることを大変嬉しく思っています。

−−「ビエン;」の世界観をどのように発展していきたいと考えていますか?

須山:直近では、美容のスペースにドイツ発ブランド「アオイロ」の製品を追加する予定です。アロマセラピー×ビスポークのパフュームを展開するすてきなブランドで、繊細で詩的な香りとデザインに心惹かれました。中2階のスペースで提供する短時間のマッサージが好評を得ており、今後はスパサービスへと発展させることを計画中です。場所については要検討ですが、来年には要望にお応えしたいと思っています。

日本の作家や職人、ブランド創業者や生産者の声を代弁し、ものづくりへの思いやこだわりを代弁する場として、「ビエン;」を育んでいきます。そして、日本のものづくりをする人たちにとって、「ビエン;」が希望の場所になることを目指しています。

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連載「ヨーロッパのJビューティ通信」Vol.6 日本古来の知恵とドイツの最新技術のハーモニー「レイ トウキョウ」 https://tokion.jp/2022/08/28/j-beauty-report-from-europe-vol6/ Sun, 28 Aug 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=141718 日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」須山佳子による、ヨーロッパのJビューティブランドを考察する連載企画。第6回は「レイ トウキョウ」。

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欧米の美容業界で注目を集める“Jビューティ”。伝統的に培われた美意識と、概念や習慣に由来する日本の美を象徴した美容法が、世界中の人々の日常の一部へと浸透し始めた。連載「ヨーロッパのJビューティ通信」は、欧米で知名度を上げるJビューティブランドを紹介し、日本古来の美容法を深く掘り下げていく。同連載の監修を行うのは、パリ在住20年以上で、日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」の須山佳子代表。ヨーロッパのJビューティトレンドの立役者である彼女がオススメするブランドの魅力と、各々が捉える日本の美意識に迫る。

第6回は、須山が太鼓判を押すドイツ発のナチュラルコスメブランド「レイ トウキョウ」。日本古来の美容の知恵、 天然素材、ドイツの高度なテクノロジーを掛け合わせ、ドイツ在住の日本人、中嶌鈴が2020年に立ち上げた。美容業界で新たな挑戦に臨むきっかけになったのは、環境の変化による自身の肌荒れだったという。独学でコスメ開発について学び、日本古来の知恵とドイツの最新技術が共鳴し、形となった「レイ トウキョウ」。その軌跡とコンセプトについて詳しく聞いた。

ドイツの乾燥した環境にも対応できる、日本古来の天然素材を使ったスキンケア製品の必要性

−−まずは、「レイ トウキョウ」について教えてください。

中嶌鈴(以下、中嶌):「レイ トウキョウ」の製品は、日本古来の美容の知恵を基盤に、ドイツ製にこだわり、開発から生産まで一貫してドイツ国内で行っています。日本で古くから愛用されている椿油や米ぬかなど天然素材を主成分として、ドイツの信頼できる高度なテクノロジーにより製品化しています。

−−「レイ トウキョウ」を立ち上げた経緯とは?

中嶌:私は東京生まれで2006年からドイツで暮らしています。移住当初、仕事のストレスとドイツの硬水、乾燥した気候、食事の変化が原因で肌荒れに悩まされました。日本から持参したスキンケア製品はソフトで肌なじみは良いが、保湿力が持続しない。一方で、ドイツで購入した製品は保湿力こそあるものの、油分が強くてベトベトと肌なじみが悪いという印象でした。


その時、「ドイツの乾燥した環境にも対応できる、日本古来の天然素材を使ったスキンケア化粧品を作ったらどうだろう?」と思いつきました。 美容や化粧品業界には全く携わったことがなかったため、まずは化粧品の商品化についてリサーチを始めたのです。すると、以前勤務していたおもちゃメーカーで経験した製品企画から製造までの一連のプロセスが似ていて、化粧品業界でもその経験が生かせることに気付きました。また、ドイツに渡ってから翻訳・通訳会社の社長を務めており、そのジャンルでも多様なクライアントの事業形態を見てきたので、新エリアであるコスメ事業への参入には躊躇せずスタートできました。

もともと化粧品が好きで、さまざまな種類を試すのが趣味です。ビジネス・起業・利益目的で考え始めたのではなく、好きと好奇心が高じて「レイ トウキョウ」の立ち上げに至りました。モノ作りに情熱を注ぎ、すべてを自分でプロデュースするということをいつかやってみたいと抱いていた長年の夢も、ブランドを立ち上げた理由の一つです。

−−ドイツと日本の異なる美容文化を、どのように融合させましたか?

中嶌:ドイツでは世界の中でもナチュラル、またはオーガニックコスメに関連する研究・開発・技術等さまざまな領域で品質が高いことで知られています。日本では今からおよそ1000年前から、椿油や米などの天然成分が肌を美しくすることは知られていました。最近の研究でも改めてその美肌効果が注目されています。


自分がプロデュースして製品を作るならば、わずかなステップで完結する日本的な美容アプローチと、ドイツで好まれるミニマリズムにも通じるものを作りたいと思いました。和独折衷として、肌への親和性が高く、自然由来成分を使ったもの、それでいて肌の改善と変化を実感できるものを作ることを目指したのです。日本古来から伝わる美容成分とシンプルな美容ステップ、ドイツの最新技術を組み合わせることで、Dual Energy(二重のエネルギー)となり、“温故知新”を感じられるような製品が生まれました。

−−ドイツと日本の美容に対する意識の違い・共通点はありますか?

中嶌:ドイツでは近年、パーソナルケアの意識が高まってきていて、市場も成長しているようです。アンチエイジングや日焼け止め、ニキビ予防など、特定の目的をもったスキンケア製品が増えています。また、日本と比べて手頃な価格帯で展開されています。ドイツはエコロジーに対する意識が高いので、パッケージデザインも簡素で単一的、ナチュラルなものが好まれます。


もともとドイツの方々はお化粧をしない(嫌う)方が多く、基本的なスキンケアすら全くしない、でも夏は日焼けすることを好む、という方が大半であったようです。しかし、近年は美容意識が変化し、特にコロナ禍にはセルフケアする方々が増えた傾向にあります。消費者は「自身も使う製品も自然であること」の価値感と要望が高いため、製品基準も上がり、規制も厳しくなっています。

日本とドイツの共通点といえば、アンチエイジングに対する興味の高さ。自然由来の成分を配合しつつ、さまざまな皮膚科学アプローチを用いて美肌効果も期待できるドクターズコスメなど、両者の良いところ取りの製品が増えています。

−−品質の高いオーガニックコスメが浸透しているドイツで、Jビューティは人気になっていますか?

中嶌:私の個人的な感覚ではありますが、ドイツではまだ注目されていない印象です。昨年あたりからようやくファッション雑誌に“Jビューティ”という言葉が使われ始めた感じでしょうか。とはいえ、海藻、抹茶、柚子、こんにゃく、椿油、米ぬかなどの美容成分は先行して注目されており、ドイツ製のスキンケア製品にも取り入れられつつあります。“Jビューティ”として、これから注目度が高まることを期待したいです。

「シンプルでありながら機能性を重ね備えるという、ドイツと日本に共通する価値観」

−−美容以外で、ドイツに暮らしながら大切にしている日本文化はありますか? 逆にドイツの文化から学んだこととは?

中嶌:シンプルでありながら、機能性を重ね備えるというのは、ドイツと日本に共通する価値観だと思います。ただし、削って省くだけでなく、工夫を凝らす、努力をするという点は日本独特の美学ですよね。その繊細さを失わないように心がけています。

ドイツで暮らしてから自然と、コミュニケーション方法が変わったかもしれません。「意見+理由=結論」と秩序立てて説明する伝え方は、合理的で周りとの調和を取りやすく、目的にたどり着く早道なのかもしれないと感じています。

−−最後に、今後のヴィジョンについて教えてください。

中嶌:わかりやすくシンプルなアプローチでありながら、多機能な製品を企画中。現在、パリのボンマルシェ百貨店で開催中のポップアップ「Bijo; Japanese Beauty Bar」に参加しています。より多くの人々へ「レイ トウキョウ」をお届けできるように、販路も広げていきたいです。

中嶌鈴 ナチュラルコスメブランド「レイ トウキョウ」創設者兼ディレクター

中嶌鈴 
ナチュラルコスメブランド「レイ トウキョウ」創設者兼ディレクター。東京都生まれ、ドイツ在住。日本大学芸術学部卒業。日本で玩具メーカー等に勤務しグラフィックデザイン、商品企画・開発を経験した後、2006年にドイツに渡り、翻訳・通訳会社の社長を務める。2020年に「レイ トウキョウ」をドイツ・デュッセルドルフにて立ち上げる。

須山佳子

須山佳子
東京生まれ、パリ在住20年。INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE にてブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本からのヨーロッパ市場への進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「Bijo;」を主催。取引先はハロッズ、ボンマルシェ、リッツ・パリ、セフォラなど大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。

Direction Keiko Suyama

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連載「ヨーロッパのJビューティ通信」Vol.5  薬用植物+CBDによる相乗効果で、日本の究極の癒やしを届ける「Shikohin」 https://tokion.jp/2022/07/08/j-beauty-report-from-europe-vol5/ Fri, 08 Jul 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=125471 日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」須山佳子による、ヨーロッパのJビューティブランドを考察する連載企画。第5回は「Shikohin」の信原威が登場。

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欧米の美容業界で注目を集める“Jビューティ”。伝統的に培われた美意識と、概念や習慣に由来する日本の美を象徴した美容法が、世界中の人々の日常の一部へと浸透し始めた。連載「ヨーロッパのJビューティ通信」は、欧米で知名度を上げるJビューティブランドを紹介し、日本古来の美容法を深く掘り下げていく。同連載の監修を行うのは、パリ在住20年以上で、日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」の須山佳子代表。ヨーロッパのJビューティトレンドの立役者である彼女がオススメするブランドの魅力と、各々が捉える日本の美意識に迫る。

第5回は、カリフォルニア発のJビューティウェルネスブランド「Shikohin」。須山は「アジアの薬用植物にCBDを加えた点に独自性があり興味深い。スキンケアだけでなくボディとバスケアを展開しており、パッケージも洗練されている」と絶賛する。5月にローンチしたばかりの「Shikohin」は日本にルーツを持つ信原威が立ち上げた。世界各国を渡り歩いた経験を経てたどり着いたのは、“癒やし”をテーマとした日本のビューティブランドを届けること。単なる美容法だけでなく、心のケアにも焦点を当てた「Shikohin」について、信原威に詳しく聞いた。

「出発点は、私達の生活に何らかの繋がりや平和、そして喜びをもたらしたいという願望」

−−まずは、「Shikohin」について教えてください。

信原威(以下、信原):「Shikohin」は、アジアの薬用植物の知恵と現代の麻由来のCBDを組み合わせた、初のJビューティスキンケアブランドです。セルフケアのルーティンを高めるエレガンスと機能性、心配りを丹念に組み合わせて、相乗効果のあるホリスティックな癒やしの製品を届けています。1つの目的は、地球をより良い場所にして後世に残すこと。環境への悪影響を軽減するため、持続可能な調達方法で成分をクルエルティーフリーに徹底しています。

「Shikohin」はラグジュアリーな製品を作るだけでなく、人々がシンプルで豊かな生活を楽しめるような体験を生み出す場でもあります。同時に人々が互いに感謝の気持ちを示すためのスペースを作るウェルネスコミュニティの育成にも取り組んでいます。繋がりを育み、有意義な理想を描くことで身体的、精神的、感情的な幸せを高める全世界のネットワークを構築したいと考えているから。世代から世代へと受け継いで世界と共有したいのは、これらの集合的な叡智なのです。

−−「Shikohin」を立ち上げた経緯とは?

信原:子どもの頃、父と一緒に食用の野生植物やキノコを探し、ハーブをはじめとした植物の重要性を学びました。根や花から作られたお茶、温かいハーブバスによる治癒等、日本では植物に薬効があると考えられているのです。島で育った私達日本人は、人と自然が調和して共存するべきだと信じており、母なる大地からの恵みを大切にし、尊重してきました。一方、穏やかで平和な子ども時代とは対照的に、現代社会は忙しくペースが速い。ストレスを抱えて精神的・肉体的健康を害する身近な人を見てきたため、喜びと健康上の恩恵をもたらすビジネスを構築したいと思うようになりました。

ホリスティックな東洋医学と日本の漢方医学に長い間携わった私は数年前、CBDの優れた治癒の可能性について学びました。それを機に、最新技術によりアジアの薬用植物とこの天然成分の組み合わせがどのような相乗効果を生むかについての研究を始めたんです。

「Shikohin」の出発点は、私達の生活に何らかの繋がりや平和、そして喜びをもたらしたいという願望。真の健康と幸せは、肌に触れ、体に取り込むもの、つまり非常にシンプルなものから生まれるのだと信じています。

−−「Shikohin」と命名した理由は?

信原:「Shikohin」は日本語で“ささやかな楽しみ”を意味し、必ずしも必要ではないけれど、それなしでは生きていけないもの。究極の“ささやかな楽しみ”とは、呼吸し、リラックスし、ケアを行い、人生の美しさと喜びを感じる瞬間を与えることだと思います。嗜好品の概念に心惹かれるのは、自分自身に小さな喜びと楽しみの瞬間を与え、シンプルなセルフケアが日常を価値あるものにすると信じているから。「Shikohin」の製品を通して、人々がストレス社会から休息し、それなしでは生きられないような価値ある体験を与える何かを作りたいという私の思いが名前に込められています。

−−「Shikohin」のベストセラーとシグネチャー商品は?

信原:ベストセラーはエンライトニング・ナイトセラムです。ヒアルロン酸よりも水分を多く含む天然成分シロキクラゲ(トレメラ)の配合により、水分補給と老化防止の特性を持ちます。

ハンド&フットマッサージクリームの処方は、シロキクラゲからの植物由来のヒアルロン酸、保護松樹皮抽出物(ピクノジェノール)、そして幅広い効能のあるCBDオイルで肌を落ち着かせます。ヒノキ、柚子の皮、コパイババルサム、クロトウヒ、白樟脳のアロマセラピー効果と栄養価の高さが、ストレスの多い1日の疲れを癒やします。

小物類のベストセラーは、こんにゃくスポンジと陶磁器製のカッサです。こんにゃくスポンジは、食用こんにゃくの根の繊維から作られ、100%生分解性。こんにゃくは、お肌を優しく角質除去し、死んだ細胞や毒素を取り除くのに役立ちます。陶磁器製のカッサのユニークな形状は人間工学に基づいて設計されており、手に快適にフィットし、顔の輪郭を包み込みます。

「何世紀にもわたって日本の美容法や文化的伝統の一部であった、ホリスティックウェルネスの実践を取り入れる」

−−各国に独自の美容文化がある中で、なぜJビューティにそれほど惹きつけられたのでしょうか?

信原:私の文化的なルーツは日本であり、Jビューティの自然でクリーンな成分とゆったりとした美容法が魅力的だからです。Jビューティはミニマリズムとシンプリシティを極め、自然の美しさと予防的ケアに重点を置いています。その価値観に感化され、ホリスティックウェルネスの知恵と、内面の美が外側に現れるという私の信念が「Shikohin」で表現されています。

−−Jビューティをどんな言葉で定義しますか?

信原:私にとってJビューティとは、日本の天然成分と現代の科学的革新から生まれた、クリーンでシンプルな製品を使用すること。重要なのは、何世紀にもわたって日本の美容法や文化的伝統の一部であった、ホリスティックウェルネスの実践を取り入れる点にあります。肌の自然な輝きを最高水準の美しさとして昇華させるのがJビューティ。化学物質や化粧品を使って外見をつくろったりするのではなく、早い段階で肌や全体的な健康を気遣うことによる予防に焦点を当てているのです。

−−フランスとアメリカの美容メソッドを取り入れた「Shikohin」ですが、他国とJビューティとの美容文化の違いは何ですか?

信原:現在までロサンゼルスに11年間暮らしており、過去に携わったトルコ、イエメン、エジプト、グアテマラ、フィリピンでの仕事のプロジェクトは私に多様性の価値を教えてくれました。私達は世界各国で発見した癒やし効果のある天然成分と、日本の伝統的な漢方医学に使用される治癒効力の高い植物を組み合わせて処方されています。製品開発者は菌類学者であり、キノコを採取し、最新の科学記事を読んで最も効果的な治癒法を見つけることにも優れた人物。フランスと日本の美しさはどちらも非常にミニマルでエレガントなので、その自然に根ざした要素を製品に取り入れたかったのです。

−−昨今Jビューティがこれほど人気になっている理由は何だと思いますか?

信原:自然の美を受け入れ、日常生活をシンプルにしようとする人が増えているからではないでしょうか。自分の体に最もクリーンで安全な天然成分を求める彼らに、高品質で控えめなラグジュアリーと呼ぶべきJビューティが完璧に応えるのです。ますます多くの人が東洋の伝統の知恵に関心を寄せ、スキンケアに対して包括的なアプローチを採用していると感じています。10ステップ以上の多層的なルーティンとして人気のKビューティのトレンドとは異なり、肌の悩みに対する高機能で必要最低限の製品のみに焦点を当てたJビューティは、よりシンプルで手間のかからないルーティンを備えています。シンプルかつ実績のある処方により、バスルームの棚のスペースを占領する無限の製品にお金をかける必要もありません。現代生活のストレスと緊張が高まる中で、人々は平穏な瞬間を生み出し、憩いの場を見つける方法を探しているのだと思います。

−−美容以外で、あなたが日本からインスピレーションを得る要素とは何ですか?

信原:特に自然に感化されますね。日本の森林浴や天然温泉は、「Shikohin」のコレクションに多くの影響を与えました。自然の中で五感が研ぎ澄まされるように、治癒的で多感覚的な体験をしてもらいたいのです。静寂の森の中を歩いたり、心地よい天然温泉に浸かったりする気分で、顔や体を愛情込めてケアしていると感じてもらえたら嬉しい。

−−最後に、今後のヴィジョンについて教えてください。

信原:「Shikohin」は、心身の健康を高めるシンプルで心のこもった美容法で人々に力を与えることを使命としています。なぜなら、永続的な美しさを生み出すことは、念入りな日々の実践を要するプロセスだと考えているから。多くの製品、ステップ、人工的な手を加えず、自然の成分と自然な方法による心を込めた美容法、瞑想、自己認識、健康的なライフスタイルを通して心身に恩恵をもたらします。また、多様性、マインドフルネス、精神的・感情的な幸せ、そして内側から滲み出る美しさをともに育む、包括的かつ支え合いの精神を持ったコミュニティの育成にも情熱を注いでいきます。

信原威

信原威 
プレミアムスキンケア&ウェルネスブランド「Shikohin」創始者兼CEO。ロサンゼルスのさまざまな新興企業の指導者およびコーチを務めた経歴を持つ。また、大企業が革新的なビジネスを始めるのを支援する国際的なリサーチ&コンサルティング会社EXA Innovation Studioを創設した他、人々の日常生活に楽しい瞬間を生み出す製品とサービスに焦点を当てたインキュベーションファウンドE-StudioのCEOでもある。

須山佳子

須山佳子
東京生まれ、パリ在住20年。INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE にてブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本からのヨーロッパ市場への進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「Bijo;」を主催。取引先はハロッズ、ボンマルシェ、リッツ・パリ、セフォラなど大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。

Direction Keiko Suyama

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連載「ヨーロッパのJビューティ通信」Vol.4 “和”の心とイタリアの伝統美容の折衷「ウェイト」 https://tokion.jp/2022/05/17/j-beauty-report-from-europe-vol4/ Tue, 17 May 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=116190 日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」須山佳子による、ヨーロッパのJビューティブランドを考察する連載企画。第4回は「ウェイト」のラファエラ・グリーサが登場。

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欧米の美容業界で注目を集める“Jビューティ”。伝統的に培われた美意識と、概念や習慣に由来する日本の美を象徴した美容法が、世界中の人々の日常の一部へと浸透し始めた。連載「ヨーロッパのJビューティ通信」は、欧米で知名度を上げるJビューティブランドを紹介し、日本古来の美容法を深く掘り下げていく。同連載の監修を行うのは、パリ在住20年以上で、日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」の須山佳子代表。ヨーロッパのJビューティトレンドの立役者である彼女がオススメするブランドの魅力と、各々が捉える日本の美意識に迫る。

第4回は、イタリアで日本美容ブランドのディストリービューターを務めるラファエラ・グリーサが手掛けるオリジナルブランド「ウェイト」。須山は「日本の美学に触発された、真正なクリーンビューティブランド」と紹介する。50歳の頃に大きなキャリアチェンジを決意し、「ウェイト」を通じて“和”の哲学を伝えるラファエラ。そのきっかけとなった明治神宮でのスピリチュアルな体験や、Jビューティの美学、世界中を旅した経験で磨いた彼女の審美眼を語ってもらった。

「日本とイタリアの2つの文化の融合であり、美の折衷を具現化したもの」

−−まずは、「ウェイト」について教えてください。

ラファエラ・グリーサ(以下、ラファエラ):「ウェイト」は日本とイタリアの2つの文化の融合であり、美の折衷を具現化したものです。イタリアの視点で捉える美しさとは、まるで夏に咲き誇り繁栄する花のような、生命力と温かさを兼ね備えたもの。息をのむ美しいイタリアの海辺に座り、思考し、内省し、感じ、創造のプロセスのための新しいエネルギーを得る時、喜びの波で満たされます。

一方で日本は、物事の儚さを大切にします。季節が変わり、何かが目覚め、何かが眠りに落ちる自然界と同じように。日本の神聖な神社の中でじっと座り、待ち、匂いを嗅いで感じると、世界とそこにあるすべてのものに心がときめき、予期せぬ喜びがもたらされます。地中海の広大なブルーオシャンを目の前にして、ブランド名「ウェイト(WA:IT)」が明確に浮かびました。それは、WA(日本語で平和や調和)とIT(イタリアと接頭辞に由来)の2つのフレーズを繋げることで、待って、中を見て、減速して、時間をかけるというブランドの哲学を示しています。中間にあるコロンは、スローダウンする時間を強調しています。「ウェイト」は日本人の“和”のように内側と外側を融合させ、バランスを取り、感覚を刺激することで心を落ち着かせる香りとスキンケア製品を表しています。

−−Jビューティに着想を得た「ウェイト」を立ち上げた経緯とは?

ラファエラ:和を感じた旅がきっかけです。当時、環境に配慮した持続可能なゆったりとした生活を送りたいと思う反面、仕事では常に飛行機に乗り、ますますペースが速くなり、プライベートと仕事の間で衝突が起こっていました。変化を起こす必要があることを長い間知りながら、実際に気付きを与えられたのは、2018年に東京へ旅した時です。

緑に囲まれた明治神宮の庭園で天蓋を眺めていた時、身の回りにあるものすべてとつながりを感じました。やがてある種の深い瞑想状態に陥り、心を研ぎ澄まし、新らしい力と目的意識が芽生であり、私の前半の人生に区切りをつける時だと認識しました。「ウェイト」は萌芽として、私にとって新たな人生のスタート。日本では、美へのホリスティックなアプローチと、西洋ではほとんど知られていないユニークな成分についての知識も得ることができました。

−−各国に独自の美容文化がある中で、なぜJビューティにそれほど惹きつけられたのでしょうか?

ラファエラ:私は、Jビューティとは“儀式”だと思っています。今この瞬間ここにいることができ、何かを愛しているなら、惰性的な行動としてではなく、すべてが儀式に変わっていくのです。生き急ぐ現代社会の流れ、特に西洋文化では、次のステップのために今何をすべきかと考える傾向にあります。“次のステップ”に焦点を当てることの問題は、その瞬間に取り組んでいる行為そのものが意味を失うことにあると思うのです。これは、日本文化から得た最も重要な教えの一つでもあります。

−−では、Jビューティをどんな言葉で定義しますか?

ラファエラ:ミニマルでホリスティックな美へのアプローチ。“レス・イズ・モア”の思想が、伝統とテクノロジーによって完璧に美容に適用されています。

「日本からは、食べ物、薬品、美容を含む、美へのホリスティックなアプローチの意味を学びました」

−−Jビューティとイタリアの美容文化の違いは何ですか?

ラファエラ:イタリア人は美容に対してより“貪欲”なアプローチをとっているところです。結果がすぐに得られない場合は、美容ルーティーンを突然変更したりします。Jビューティのキーワードは予防であるのに対し、イタリアでは修復にあります。また、日本のスキンケアはクレンジングのステップに注力しますが、イタリアは保湿のステップにすぐさま取り掛かるような場合もあります。

−−昨今Jビューティがこれほど人気になっている理由は何だと思いますか?

ラファエラ:Jビューティならではの方法は、努力を必要とせず、心身のウェルビーイングに直結するからでしょう。さらに、ミニマリズムな精神は、より意識高く持続可能な生活へと導いてくれるからだと思います。

−−「ウェイト」のユーザーから、どのようなフィードバックを受け取っていますか?

ラファエラ:私の顧客は製品自体だけでなく、「ウェイト」の哲学と信頼性、コネクションを感じ取ってくれているようです。このプロジェクトが商業的ではないと理解してくれています。50歳近くで人生を変える決断を下すには、それを行う深い理由と強い意志が必要です。他の人がそれを理解し、感謝し、ブランドに共鳴してくれることは、本当に幸せなことです。重要なのは美しさだけではありません。同じ人生観と哲学を共有できる人々と、非常に強固なコミュニティを作りたいのです。

−−美容以外で、あなたが日本からインスピレーションを得る要素とは何ですか?

ラファエラ:日本からは、食べ物、薬品、美容を含む、美へのホリスティックなアプローチの意味を学びました。以前のキャリアで、頻繁に日本を訪れていました。ひどい頭痛に悩まされていたある日、日本人の仕事仲間が痛みを和らげるために、錠剤ではなく食べ物をくれたのです。それをきっかけに、古代中医学に基づいた伝統的な日本医学について学び始めました。身体と心は切り離せない関係にあり、肉体的および精神的な癒やしは人間の健康に不可欠なもの。私達はホリスティックに、心身の完璧なバランスを保つべきなのです。

そのため、「ウェイト」では、イタリアで古くから伝わる香水とアロマテラピーを融合させて考案した、天然の香りである“HITO”で心を癒やすことをファーストステップとして提案しています。その後、日本の伝統医学のスーパーフードに基づいたスキンケアで、心の中の神社をケアしていくような流れです。

−−最後に、今後のヴィジョンについて教えてください。

ラファエラ:持続可能性、ミニマリズム、マインドフルネス、効能、そして価値観と精神を包括する「ウェイト」の旅は進行中です。6月にミラノで開催されるエクスペリエンス・ラボ(国際美容展示会)で、墨絵アーティストのフィリッポ・マナセロによるペイントをモチーフにし限定版のトラベルキットとセラムオイルの新製品を発表予定です!

ラファエラ・グリーサ

ラファエラ・グリーサ
「ウェイト」創立者。1971年イタリアで生まれ、幼少期から家族とともに世界中を旅した。トリノ工科大学で経営工学を専攻。主にアジアに商品を輸出するイタリア企業のエンジニアリングのバックグラウンドを持つコンサルタントとしてキャリアを築き、世界中を横断。
WA:IT

須山佳子

須山佳子
東京都生まれ、パリ在住20年。INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE でブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本からヨーロッパ市場へ進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「Bijo;」を主催。取引先はハロッズ、ボンマルシェ、リッツ・パリ、セフォラなど大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。

Direction Keiko Suyama

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連載「ヨーロッパのJビューティ通信」Vol.3 “心身を慈しむ”日本の美容文化に魅了されて オランダECサイト「ステレ・ローズ・ビューティ」 https://tokion.jp/2022/04/03/j-beauty-report-from-europe-vol3/ Sun, 03 Apr 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=105720 日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」須山佳子による、ヨーロッパのJビューティブランドを考察する連載企画。第3回は「ステレ・ローズ・ビューティ」。

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欧米の美容業界で注目を集める“Jビューティ”。伝統的に培われた美意識と、概念や習慣に由来する日本の美を象徴した美容法が、世界中の人々の日常の一部へと浸透し始めた。連載「ヨーロッパのJビューティ通信」は、欧米で知名度を上げるJビューティブランドを紹介し、日本古来の美容法を深く掘り下げていく。同連載の監修を行うのは、パリ在住20年以上で、日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」の須山佳子代表。ヨーロッパのJビューティトレンドの立役者である彼女がオススメするブランドの魅力と、各々が捉える日本の美意識に迫る。

第3回は、日本の美容ブランドを専門に取り扱うオランダのECサイト「ステレ・ローズ・ビューティ」。創設者兼ディレクターのステレ・ローズ・スパレボームをよく知る須山は、「オーガニックでクリーンな製品にこだわり、ECだけでなく定期的にポップアップやPRイベントも開催していて、オランダのJビューティのアンバサダー」と紹介する。ステレは、長年ナチュラルビューティを探求する末にたどり着いたのが、Jビューティだったと語る。日本での美容研究を目的 とした旅を通して、美容だけでなくウェルビーイングや哲学にも魅了されていき、世界中の女性のセルフケアのためにJビューティに特化したECサイトの立ち上げに至った。沖縄での発見や日本独自の美意識、昨今の消費者のウェルネスへの意識の変化について語ってもらった。

沖縄の女性達が行うホリスティックなアプローチは、自分自身を慈しむための一貫した儀式のよう

−−まずは、ECサイト「ステレ・ローズ・ビューティ」について教えてください。

ステレ・ローズ・スパレボーム(以下、ステレ):シンプル・純度・効能に基づいて、自然成分、感覚的なケア、マインドフルで高い効果を発揮する日本の美容ブランドを、個人的な視点からセレクトしたナチュラルスキンケア&ウェルネスブランド専門ECサイトです。現在、10のニッチなJビューティブランドを取り扱い、厳選したビューティセットを提供しています。2019年4月にローンチして以来、世界中へと配送を行っています。個々の要望に応じたパーソナルサービス、最高品質のナチュラル製品、信頼性の高い美容アドバイスを提供することが、私達の重要な優先事項の1つです。

また、エコサート認証を受けた沖縄産のエコラグジュアリースキンケア製品である「ルハク」の、オランダでの独占販売代理店とコンサルティングも行っていて、アムステルダムの多くの美容サロンで展開しています。「ルハク」はベストセラーであり、私の個人的なお気に入り製品でもあるんですよ!

−−Jビューティに特化した「ステレ・ローズ・ビューティ」を立ち上げた経緯とは?

ステレ:昔からずっとナチュラルビューティとホリスティックなスキンケアに情熱を持っていて、常に自分の肌を自然にケアする最も良い方法を探求してきました。2018年、肌に優しく効能の高いJビューティのナチュラルスキンケアについて読み、試してみたいという意欲に駆られましたが、当時オランダの市場では取り扱われていませんでした。

そこで、Jビューティに没頭するため、“日出ずる国”日本へウェルネス旅行に出ることに決めたのです。日本独自のスキンケアについて研究し、多くのJビューティブランドと会い、広範な美容研究を実施しました。中でも、健康で長寿な人々が数多く居住するブルーゾーンで知られる沖縄でのスキンケア研究は、私のJビューティへの情熱に火をつけました! 沖縄の女性達と触れ合う中で、彼女達の肌をケアする方法に夢中になりました。ホリスティックなアプローチは内面の健康状態が肌へと現れており、自分自身を慈しむための一貫した儀式のようです。

−−各国に独自の美容文化がある中で、なぜJビューティにそれほど惹きつけられたのでしょうか?

ステレ:私にとってJビューティは、スキンケアに求めるすべての条件が完璧にそろっています。それは、効能のあるナチュラル成分(ゆず、緑茶、椿、米ぬか)、テクノロジーを組み合わせた革新性、水分補給と優しいケア、シンプルなステップ、高品質のパフォーマンスなど。そして、江戸時代にまで遡る100年前の芸者の美しさの秘密と、ホリスティックな哲学に、深い関連性があることも魅了される理由の1つです。

−−オランダと日本、美容文化の共通点・相違点は何ですか?

ステレ:両国の美容文化はかなり違うと思います。似ている点の1つは、オランダの女性は日本の女性と同じように、ギミックのあまりないシンプルな製品を好むこと。効果的で信頼性の高い製品を使用したシンプルなルーティンが長く愛される傾向にあります。

一方で、主な違いの1つは、日本の美容文化はより洗練されていることです。それは美の伝統の豊かで象徴的な歴史が背景にあるからでしょう。一般的に、日本の女性はスキンケアルーティンに専念し、長年、一貫したステップを持っているのだと思います。将来的に発生しうる肌の問題に対する予防的なアプローチや肌の保護について、若い年齢から始めているというのも日本の美容の特徴的な点です。

−−昨今Jビューティがこれほど人気になっている理由は何だと思いますか?

ステレ:消費者は、ウェルネスについて大局的な視点で捉え、生活のあらゆる面で個人のウェルビーイングを優先しています。全体的な調和とバランスの取れた健康的なアプローチは、Jビューティと非常に密接な関係にあると思います。

消費者は、高品質で高性能な製品に意識を転換しました――“量より質”で“少ない方が良い”というアプローチ。美容とウェルビーイング全般の製品に対して、人々が高い水準を求めているのは私にとって嬉しいことです。

自然を無条件に愛し、慈しみ、真の愛情と責任を後世に継承することは日本の伝統

−−“日本式の美容法”と呼ばれるJビューティについて、どのように定義しますか?

ステレ:Jビューティとは、日本の美容業界に関連する美容文化、哲学、習慣、技術、製品の総称です。その洗練された美容文化は、最高の美容基準で製造された最高品質のスキンケアを生み出しました。

Jビューティは水分補給、保湿、鎮静化の効果をもたらし、肌に優しいアプローチですべての肌タイプに適応します。10段階のステップではなく、有効成分を含む少数の製品を優先し、朝と夜、4つの能率化された段階で高品質の製品を使用する美容法です。

−−「ステレ・ローズ・ビューティ」の顧客から、どのようなフィードバックを受け取っていますか?

ステレ:リピートしてくださるお客様も多く、たくさんの肯定的なフィードバックを受け取るたびに、私は本当に喜びを感じています! 多くの女性が私と同じくらいJビューティにほれ込んでいるのだと気付いた時、とても嬉しく思いました。「私達がセルフケアを行うのを手伝ってくれる、あなたの情熱に感謝します」というレヴューが最もお気に入りの1つです。深く感動し、これこそが私を突き動かすモチベーションとなっています!

−−美容以外で、あなたが日本からインスピレーションを得る要素とは何ですか?

ステレ:自然との関係性がインスピレーションになってくれます。日本は、現代世界において人類と自然の間で最も結びつきが強く、最も親密で、調和の取れた関係を持っていると考えられています。自然を無条件に愛し、慈しみ、真の愛情と責任を後世に継承することは日本の伝統でもあります。

また、日本の美的原則である“禅”の哲学にも触発されます。例えば、静けさや寂しさ、活気に満ちた冷静さを意味する“静寂”。これは日本庭園にいる時の心の状態に関連しています。静寂の反対の表現は、騒音や妨害です。私達はどのようにして“アクティヴな落ち着き”や“静寂”を、日常にもたらすことができるのかを考えています……。

−−最後に、今後のヴィジョンについて教えてください。

ステレ:Jビューティブランドの取り扱いを拡大し、多くの人に楽しんでもらえるコンテンツと体験を通じて、さらに活気づけることを計画しています。過去には2019年に、製品を試用してもらい、美容トリートメントの施術や抗酸化作用のある日本製のお茶を試せるジャパニーズ・ビューティ・スタジオというイベントを開催しました。今後は、B2Bのネットワークを強化することで、個人的なサービスを継続的に改善し、お客様の生活に付加価値を与えられるようなサービスを提供していきます。

何よりも、日本の美容哲学と製品を通して、個々の美しさのバランスとウェルビーイングな感覚を得られるようお手伝いし続けたいと思っています。

ステレ・ローズ・スパレボーム

ステレ・ローズ・スパレボーム
日本製のナチュラルスキンケア&ウェルネスブランドを専門とするECサイト「ステレ・ローズ・ビューティ」創設者兼ディレクター。オーガニックスキンケア、アロマテラピー、ウェルネス、ホリスティックビューティ製品を独自の視点で厳選し、世界中にいる顧客へと届けている。

Photography Nanda Hagenaars

須山佳子

須山佳子
東京都生まれ、パリ在住20年。INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE でブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本からヨーロッパ市場への進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「Bijo;」を主催。取引先はハロッズ、ボンマルシェ、リッツ・パリ、セフォラなど大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。

Direction Keiko Suyama

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連載「ヨーロッパのJビューティ通信」Vol.2 「自然の至宝とテクノロジーの融合」を体現する、発酵米が原材料のナチュラルスキンケアブランド「ビゼン」 https://tokion.jp/2022/02/26/j-beauty-report-from-europe-vol2/ Sat, 26 Feb 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=97857 日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」須山佳子による、ヨーロッパのJビューティブランドを考察する連載企画。第2回は「ビゼン」。

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欧米の美容業界で注目を集める“Jビューティ”。伝統的に培われた美意識と、概念や習慣に由来する日本の美を象徴した美容法が、世界中の人々の日常の一部へと浸透し始めた。連載「ヨーロッパのJビューティ通信」は、欧米で知名度を上げるJビューティブランドを紹介し、日本古来の美容法を深く掘り下げていく。同連載の監修を行うのは、パリ在住20年以上で、日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」の須山佳子代表。ヨーロッパのJビューティトレンドの立役者である彼女がオススメするブランドの魅力と、各々が捉える日本の美意識に迫る。

第2回は、日本古来の美容の源である発酵米を原材料にした洗顔せっけんを作る「ビゼン」。創設者のフローレンス・ミエット・イシザカについて須山は「日仏文化に精通していて、とても聡明でおもしろい方」だと表現する。生粋のパリジェンヌであるフローレンスは、「カルティエ」「バーバリー」「ランセル」など大手ブランドの日本子会社の責任者を担ってきた経験から、現在はブランド戦略コンサルタントとして活動中。2021年に「ビゼン」を立ち上げ、自然由来の美容製品を作ると同時に日本の地域活性化にも取り組んでいる。

日仏両方の文化を深く理解した彼女がJビューティブランドを始めた理由について、「自然とテクノロジーは理想的な組み合わせ」だと説明する。現在は日本とヨーロッパに拠点を持ち、多角的な視点を養い続ける彼女に、日本文化と精神性、Jビューティのトレンドについて聞いた。

発酵によって増幅された米の力が凝縮されている「ビゼン」の製品

――まずは、「ビゼン」の製品について教えてください。

フローレンス・ミエット・イシザカ(以下、フローレンス):「ビゼン」は日本製のナチュラルスキンケアブランドで、内面と外面の両方の“美”への“全”体的アプローチとして、総体的やホリスティックが由来になっています。日本で先祖代々受け継がれる健康と美容の源である発酵米を原材料に、天然由来の成分のみで製造。「ビゼン」の製品に有害な成分は含まれていません。米の発酵プロセスは、アミノ酸、セラミド、繊維などの貴重な天然有効成分を引き出し、肌に水分を与えて保護し、老化を促進する酸化を防ぎます。また、循環的で持続可能な水田で栽培され、オーガニックの認定を受けた全粒米を使用し、休耕水田の再耕作により、地域の活性化にも力を注いでいます。

――ヨーロッパの大手ブランドでキャリアを積んできたあなたが、Jビューティをテーマにした「ビゼン」を立ち上げた経緯とは?

フローレンス:「ビゼン」を通して、日本の文化を世界に届けることこそ私の目的です。日本文化の特徴の1つは、自然との強い繋がりと、絶え間ない革新の探求。そして私にとって、自然とテクノロジーの同盟であるJビューティは理想的な組み合わせでした。「ビゼン」の製品には、発酵によって増幅された米の力が凝縮されています。

――“日本式の美容法”という呼ばれるJビューティについて、あなたはどのように定義しますか?

フローレンス:Jビューティは「ビゼン」のように、自然の至宝とテクノロジーの融合です。そしてそれが、日本の美の本質だと私は捉えています。厳密な美容習慣はJビューティの特徴の1つで、予防ケア、クレンジング、保護と、スキンケアの主な目的は修復ではなく“予防”にあります。このアプローチは、欠如を受け入れることと密接に関連しており、日本で“わびさび”と呼ばれる精神性です。不完全な美の認識と、静穏な心を導く道でもある。時間と不完全さによる古色は、人と物をより美しくします。私達は日本の美の本質に根付く、この精神性を大切にしなければならないと思います。日本の美容習慣の重要な一部である、オイルと泡を使ったダブルクレンジングを、「ビゼン」は今年新たにローンチする予定です。

――ヨーロッパの市場を知り尽くしたあなたの視点から、Jビューティがこれほど人気になっているの理由は何だと思いますか?

フローレンス:一時的な流行ではなく、日本独自の強い価値観はヨーロッパの人々にとって絶えず魅力的でした。日本の美容は、ミニマリズム、柔軟性、肌と環境への敬意であり、現代的で時代を超越する価値観です。最先端技術と天然成分の融合、さらに内面の美に重きを置いたアイデアはミレニアル世代に共鳴しています。健康と予防に関心のある現代社会では、長年にわたり日本文化の中心であった総体的アプローチが、自然な流れで最前線へと到達したのだと考えています。

――拭き取り式やミルク状のクレンジングが主流のフランスで、泡立てるタイプの「ビゼン」の洗顔せっけんに対して、使用者からどのようなフィードバックを受け取っていますか?

フローレンス:パリジャン(女性と男性)のお客さまから、水分補強力に対して高い評価を得ています。たっぷりの柔らかい泡を生成する、使用時の楽しさも大変気に入ってもらえているようです。また、伝統的な日本の米の包装からインスピレーションを得た、和紙を折ってせっけんを包み込む「ビゼン」のパッケージの美学についても、たくさんのポジティブなフィードバックを受け取っていますよ。

日本の“瞬間”を楽しむという考えがインスピレーションの源泉

――美容以外で、あなたが日本からインスピレーションを得る要素とは何ですか?

フローレンス:日本は、長い歴史と時間に対するユニークな概念を持つ国です。1000年以上の歴史を持つお寺が現存する一方で、人の一生を一瞬の儚い命を持つ桜と同等だと捉えていますよね。一時的なものは私達の永遠に近づけ、この“瞬間”を楽しむことが大切だという考えは、私にとって素晴らしいインスピレーションの源泉です。日本が尊重するタイムレスなアプローチは、今日のデジタルの世界において、日常生活にバランスを求める人々の共感を呼んでいます。時の試練に耐えてきた100年前の美容成分を使用することは、過去と現在の両方に繋がる方法なのです。

――最後に、今後のビジョンについて教えてください。

フローレンス:私のビジョンは、マイクロモーメント(意図を伴う行動の瞬間)を通してお客さまに安らぎをもたらすことです。日本の美容と物語は、この体験を可能にする宝庫なので、より多くの人々と共有したいと思っています。

フローレンス・ミエッテ・イシザカ

フローレンス・ミエット・イシザカ
国際市場におけるラグジュアリーブランドマネージメントのスペシャリスト。「カルティエ」「バーバリー」「ランセル」で日本の子会社の責任者、マーケティングおよび製品マネージャー等、さまざまな役職を経験。現在、ブランド戦略コンサルタントであり、日本のブランドのヨーロッパでの開発をサポートしている。2021年「ビゼン」を創設。

須山佳子

須山佳子
東京都生まれ、パリ在住20年。INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE でブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本からヨーロッパ市場への進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「Bijo;」を主催。取引先はハロッズ、ボンマルシェ、リッツ・パリ、セフォラなど大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。

Direction Keiko Suyama

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連載「ヨーロッパのJビューティ通信」Vol.1 「個性を持った1人ひとりの肌に適応する製品を」 フランス発の日本製スキンケアブランド「イレーン スキン」 https://tokion.jp/2022/01/29/j-beauty-report-from-europe-vol1/ Sat, 29 Jan 2022 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=91119 日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」須山佳子による、ヨーロッパのJビューティブランドを考察する連載企画。第1回は「イレーン スキン」。

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欧米の美容業界で注目を集める“Jビューティ”。伝統的に培われた美意識と、概念や習慣に由来する日本の美を象徴した美容法が、世界中の人々の日常の一部へと浸透し始めた。新連載「ヨーロッパのJビューティ通信」は、欧米で知名度を上げるJビューティブランドを紹介し、日本古来の美容法を深く掘り下げていく。同連載の監修を行うのは、パリ在住20年以上で、日本の美容ブランドのヨーロッパ市場進出をコンサルティングする「デッシーニュ」の須山佳子代表。ヨーロッパのJビューティトレンドの立役者である彼女がオススメするブランドの魅力と、各々が捉える日本の美意識に迫る。

第1回は、フランス人チームが作る日本製スキンケアブランド「イレーン スキン」。ファウンダーのクリスティン・チェンについて須山は、「成分とフォーミュラに対する造詣が深い方」だと語り、彼女が主宰する日本の美容とライフスタイルをテーマにしたポップアップストア「Bijo;」でも取り扱っている。

2017年創設の「イレーン スキン」は現在、7種類のセラムとクレンジングを展開中。日本の美容法であるレーヤリングにならい、複数のセラムを混ぜ合わせ悩みに応じてパーソナライズされたスキンケアを提案する。欧州とアジアで長く美容業界に携わり、各国の美容法に精通するファウンダー、クリスティンはなぜJ-ビューティに着目したのか?「イレーン スキン」創設の背景と、J-ビューティのトレンド事情を聞いた。

「Jビューティのタイムレスなアプローチは、私達現代人の精神や価値観と一致している」

――“Jビューティ”というワードは昨今、欧米では馴染み深くなりましたが、単なる“日本式の美容法”という枠に収まっていないように思います。あなたは“Jビューティ”をどのように定義しますか?

クリスティン・チェン(以下、クリスティン):“Jビューティ”とは日本古来の美容法に触発されたものを意味しますが、同時に、革新とテクノロジーによって再発明された新たな美容法と言えます。Jビューティの世界は他に類を見ない、伝統、自然、科学の完璧な組み合わせで成り立っています。エフォートレスなアプローチでミニマルなスキンケアルーティーンに焦点を当て、素朴な日常の中の芸術に忠実であるのがJビューティです。予防に特化し、献身と規律を要する、シンプルで効果的なスキンケア法だと思います。

――欧米でJビューティがこれほど流行している要因は、何だと考えられますか?

クリスティン:Jビューティには“レス・イズ・モア”の精神が宿っており、天然成分に基づきながら科学を重視しているためではないでしょうか。近年、環境への関心が高まる中、消費者はサステナビリティを推進しています。また、ウェルネスや健康的な生活への需要も高まっていますよね。ミニマルなアプローチであるJビューティは、その信頼性と、自然由来のスーパーフード成分の使用により、現在のトレンドと見事にマッチしているのだと思います。

――あなたはアジアとヨーロッパで暮らし、美容業界に10年以上携わっていますよね。各国に独自の美容文化がある中で、なぜ日本製にこだわり、Jビューティに特化した「イレーン スキン」を立ち上げたのでしょうか?

クリスティン:日本は独特の文化と伝統を持つ美しい国です。日本文化の他の多くの側面と同様に、美の理想とスキンケア法は、伝統的な価値観と概念に直接結びついています。日本の歴史と伝統からインスピレーションを得て、それを科学と融合させることは、東洋と西洋の両方の文化を超越するブランドを作るという私の夢でした。何よりも、Jビューティのタイムレスなアプローチは、私達現代人の精神や価値観と一致していると感じています。日本は品質の水準が高いため、すべての製品を日本で作ることは私にとって当然のことのように思えました。

――美容以外で、あなたが日本からインスピレーションを得る要素とは何ですか?

クリスティン:私は常に、日本の文化、美意識、デザインに刺激をもらっています。特に、不完全で、無常、未完成な自然美をありのまま尊重する“侘び寂び”の精神という、日本の伝統的な美意識に触発されます。この精神は私に、真の自己と、実生活の不完全さを受け入れるよう促してくれるのです。

「イレーン」は有害な2000以上の成分を禁止した、最初の日本のブランド

――他ブランドと差別化を図る、「イレーン」の革新的でユニークな特徴とは何ですか?

クリスティン:より優れた浸透性と有効性を可能にした、私達の特許技術であるActif-Xカプセル化にあります。7種類の「スーパーフルーツ ブースター カスタマイズ セラム」は、混ぜ合わせ調合することで特定の肌の悩みに対応します。合計35の組み合わせと、Actif-Xカプセル化で強化された独自の処方により、目に見える結果をもたらす有効な処置であることを保証します。

――100%自然由来、クルエルティーフリー、透明性の高い生産環境に加え、科学的証拠に基づいて2000以上の有害な成分を禁止していますよね。自らに課した制約の下において、製品開発の課題とは何ですか?

クリスティン:「イレーン」は科学的にクリーンと定義されない有害でアレルギー誘発性のある2000以上の成分を禁止した、最初の日本のブランドです。一般的な成分を使用できないという制約があるため、満足のいくテクスチャーや安定性を得られないという課題に直面することがあります。研究開発チームが長期間の実験と研究を行い、最良の質感と結果を得て、新境地を開拓することができています。

――最後に、今後のビジョンについて教えてください。

クリスティン:Jビューティの文化は、性別、肌質、肌の色に関係なく、すべての人に役立つと信じています。私達の製品は、個性を持った1人ひとりの肌に適応するため、カスタマイズできるように作られており、これらを通じたインクルージョンを支持します。また、よりカスタマイズ可能なアイデアを見出し、スキンケア製品を進化させて、より包括的な美容のビジョンを取り入れていくつもりです。加えて、ジェンダー平等の実現も推進していきます。

現在、科学業界にいる女性達を後援するプログラムや奨学金制度を実施しており、これを世界のより多くの地域に広げていく取り組みを強化します。最後に、地球上で人々が安全に生存できる活動領域を尊重するために、さらに多くのサステナビリティ・イニシアチブを計画しています。

クリスティン・チェン

クリスティン・チェン
化粧品企業でキャリアをスタートさせ、10年以上美容業界に従事。アジアとヨーロッパの各国で暮らした経験から、西洋と東洋の美容法に精通している。なかでも日本の美容法と文化に大きく影響を受けた。自然、伝統、科学を融合させ、現代のライフスタイルに合った製品を提供するため、2017年「イレーン スキン」を創設。

須山佳子

須山佳子
東京生まれ、パリ在住20年。INSTITUT FRANCAIS DE LA MODE にてブランド経営学のMBAを取得。2010年に日本からのヨーロッパ市場への進出、ブランド戦略、セールス、コミュニケーション専門のコンサルティング会社「デッシーニュ」を立ち上げる。2016 年、Jビューティとライフスタイルブランドをキュレーションするコンセプトプロジェクト「Bijo;」を主催。取引先はハロッズ、ボンマルシェ、リッツ・パリ、セフォラなど大手デパートからセレクトショップまで約20ヵ国、150店舗。

Direction Keiko Suyama

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パンデミックにより美容業界が活況 ヨーロッパのトレンド“DIYスキンケア”に見る美容の役割 https://tokion.jp/2020/09/04/pandemic-booms-diy-skincare/ Fri, 04 Sep 2020 06:00:18 +0000 https://tokion.jp/?p=3359 外出自粛の影響で個人消費が落ち込むヨーロッパ。不景気のニュースが続く中、美容トレンドに浮上しているDIYスキンケアの背景にある消費者意識とは。

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新型コロナウイルスは人々の心身の健康だけでなく、経済にも大きなダメージを与えている。ヨーロッパ連合(EU)の統計局の発表によるとユーロ圏19ヵ国のGDPは4〜6月の伸び率が 1~3月に比べて実質12.1%減と、統計を取り始めた1995年以降最悪の水準となった。経済活動の縮小要因について、外出自粛の影響で個人消費が大きく落ち込んだことや、欧米向けの自動車の輸出が大幅に減少したことなどが考えられる。フランスではマスマーケットのファッションブランド「アンドレ」「ラール」などが従業員を大幅に解雇したほか、老舗高級食材店「フォション」が破産申請を行うなど各業界に影響を与えている。そんな景気の悪いニュースが続く中、「ル・モンド」紙はオーガニックコスメブランド「アロマ・ゾーン」がロックダウン中にオンライン販売において新規顧客10万人を獲得し、売り上げを3倍に伸ばしたと報道した。

20年前に化学者のピエール・ヴォーセリンが創設したオーガニックコスメブランド「アロマ・ゾーン」は、原液や高濃度の植物性オイル、エッセンシャルオイル、植物の粉末などの商品を豊富にそろえ、それらを組み合わせ自分の肌状態に合わせて自作するDIYスキンケアコスメを提唱する。創設当初から広告は一切出さない方針をとっているが、消費者のオーガニックへの関心の高まりと、DIYのアイデア、商品が3.5ユーロ(約420円)〜と安価なことから年々成長を続け、2019年度の売上高は8000万ユーロ(約96億円)を記録した。さらに今年は売り上げが1億ユーロ(約120億円)を超え、粗利益率は約25%になる見通しだ。現在パリに2店舗、リヨンに1店舗、新たに7月末にはブーシュデュローヌに700㎡以上の店舗をオープンさせた。ロックダウン期間(4〜5月)はオンライン販売で、消毒効果の高いティーツリー、ニンニク、タイムのエッセンシャルオイルやDIYコスメキットと家庭用クリーニング製品を 中心に人気となり、化粧品で70%、エッセンシャルオイルで40%も売り上げを伸ばしたと同社は語った。ヴァーセリンは「消費者はロックダウン中に得た新たな生活習慣を長く維持するだろう」と予想し、さらなるビジネスの成長を見込んでいる。今後はトゥールーズに新店舗、海外にも店舗を構える予定だという。

「アロマ・ゾーン」が提唱するDIYスキンケアは現在、欧米の美容業界において大きな流行となりつつある。2016年に創設されたカナダ発「ジ・オーディナリー」も、臨床技術に基づいて作られた美容成分の原液や濃縮液を幅広くラインアップしている。各商品には成分が細かく表示されており、ビーガン処方、クルエルティーフリー(動物の犠牲を強いる動物実験をしていないことを示す)と肌への安全性と環境に配慮している。美容液が5ユーロ(約600円)〜と価格帯が低く、スキンケアデビューを果たす若年層からエイジングケアに力を入れたい中高年層まで顧客の年齢層も広い。商品をそのまま使用することももちろん可能だが、コンディションや肌悩みに合わせて手持ちのスキンケアや他商品と混ぜて自分好みにDIYすることを提案している。

昨年誕生した「ティポロジー」もフランスで話題のスキンケアブランドである。オーガニック、ビーガン処方、クルエルティフリー、100%フランス製をうたい透明性の高いクリーンな原料を元に、各商品の成分数を10以下に抑えてスキンケア、ボディーケア、ヘアケアを展開している。筆者が購入したヘアシャンプーは、ベースとなるシャンプー剤とヘアオイルが分かれており、ヘアオイルを頭皮マッサージ用に使ったりシャンプー剤と混ぜ合わせて使ったり、自分好みにカスタマイズできる仕様になっていた。美容液は10ユーロ(約1200円)〜と、「ジ オーディナリー」と同じく手に取りやすい価格設定だ。また、これらのブランドは、パッケージにリサイクル可能なガラスやプラスチック不使用のアルミを使用しているという共通点がある。

これらDIYスキンケアが美容トレンドに浮上している背景にはどのような消費者意識があるのか、パリでビューティ&デザインのコンサルティング会社「デシーニュ」を経営する、フランス在住20年の須山佳子に聞いた。

「ナチュラルビューティ、オーガニック、クリーンビューティの行き着く先がDIYスキンケアです。欧州ではより商品の透明性が重視される中で、内容成分がクリーンであることの究極にあると思います。リッチなクリームやセラムなどを購入して多くの成分を取り入れても実際に肌に入るものは少なく、自分に本当に必要なものも多くないということを消費者が理解し始めたのです。パーソナライズという流れもあり、必要な成分を原液で注入したほうが、より効果的で肌が良くなるということをさまざまな情報から理解し、最終的に内容成分を全部自分で確認し、必要なものを作り使いたいという思いが強いのでしょう」。

須山は日本の美容文化やプロダクトをテーマにしたプロジェクト「ビジョ」の主宰者であり、2016年以降パリ市内でポップアップストアを開催している。特に、老舗高級百貨店ル・ボン・マルシェで開かれるポップアップストアは毎回盛況だ。ロックダウン明けの7〜8月に開催された3回目のポップアップストアでは、来店客の大幅な減少にもかかわらず前年の同時期よりも売り上げを10%伸ばした。開催直前に同百貨店のバイヤーから「外出制限で疲れ切っているフランス人に対して、日本の美容とおもてなしで癒す企画」をテーマにしてほしいとの要望を受けて、心と体の癒しに注力したという。「ウカ」の自律神経に働きかける癒し効果の高いアロマをベースにしたボディーケアシリーズは「今これが必要」と顧客が反応し、売れ筋商品となった。スカルプブラシ(頭皮用ブラシ)100個、カッサ200個、フェイスマスク600枚が完売し、高級ボディーブラシや浄化グッズの売り上げが上がったのも今回の特徴だという。「プロテクションや浄化ということに非常に興味を持ち、心の切り替えを香りを通して行うフランス人が多かったです。自分への投資、自分をいたわる時間を大切にしようという意識が芽生えているように感じます」と語る。

 さらに須山は「今回のパンデミック然り、社会状況が不安定な時代であるからこそ、きれいにしていることが心を支える大きな要因になっているのでしょう。美容を諦めてしまうと、本当の非日常がやってきます。きれいにすることは心を整え、自分を見つめる行為なのだと思います」と消費者が美容に投資する理由を分析する。第二次世界大戦の戦時下においても女性達はパーマをかけたり、メイクをするなど美容への意識を高めたという歴史もある。先行き不透明な時代をサバイバルするために、美容にお金と時間をかけることが心のよりどころとして機能しているようだ。

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