MANGA / ANIME Archives - TOKION https://tokion.jp/category/genre/manga-anime/ Thu, 28 Dec 2023 10:07:40 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.2 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png MANGA / ANIME Archives - TOKION https://tokion.jp/category/genre/manga-anime/ 32 32 「自分がかっこわるいからマンガを描いてるんだと思います」——『スーパースターを唄って。』作者・薄場圭インタビュー https://tokion.jp/2023/12/28/interview-kei-usuba/ Thu, 28 Dec 2023 10:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=221036 話題のマンガ『スーパースターを唄って。』の作者・薄場圭インタビュー。

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「自分がかっこわるいからマンガを描いてるんだと思います」——『スーパースターを唄って。』作者・薄場圭インタビュー

薄場圭
1998年、大阪府生まれ。漫画家。『飛べない鳥達』で第84回新人コミック大賞<青年部門>佳作を受賞。「月刊!スピリッツ」2020年3月号にて『君の背に青を想う。』でデビュー。現在連載中の『スーパースターを唄って。』が初連載。
X:@usubane_
Instagram:@kei_usuba

一部のマンガ読みや日本語ラップマニアの間で話題になっている『スーパースターを唄って。』という作品をご存知だろうか。本作は感情を殺してドラッグを売っていた少年が、さまざまな仲間達の力を借りて、心の内に閉じ込めていた澱(おり)をラップに落とし込んでいく物語。どこまでも人間臭い登場人物、緻密な背景の描写、音楽や映画好きに刺さるディティールとが相まってストーリーが進んでいく。12月27日に第2集が発売されたのを記念し、作者の薄場圭に話を聞いた。

「自分が今、音楽をテーマにマンガを描くならラップかな」

——マンガを描き始めたきっかけを教えてください。

薄場圭(以下、薄場):昔から絵を描くことが好きで、映画を観たり、物語を作るのも趣味みたいな感じでした。他にできることもないのでマンガを描いてみようと思ったのがきっかけです。

——シナリオも書かれてたんですね。

薄場:そんな大したものじゃないです。絵が好きな人が授業中に落書きしてる感覚で、自分はちょっとした物語というか文章みたいなものを書いたり想像したりしてました。

——好きなマンガや映画を教えてください。

薄場:映画だったら『リリイ・シュシュのすべて』とか。日本のノワール映画も好きです。マンガだと松本大洋先生の『Sunny』とか。堀越耕平先生の『僕のヒーローアカデミア』も大好きです。あとは宮沢賢治の小説も読んでました。他にもめちゃくちゃいっぱいあります。マンガの描き方で強く影響を受けたのは、真造圭伍先生です。

——もともと真造圭伍先生のアシスタントをされていたんですよね。

薄場:はい。何も知らない状態でアシスタントに入らせてもらったので、マンガの描き方のほとんどを真造先生から教わりました。だから教わってないことは今でもできない(笑)。真造先生が手描きだったから、僕も全部手描きだし、真造先生が自分で背景まで描いていたから、僕も自分で描いてます。今、自分にもアシスタントが数名いますが、現状は仕上げ作業をお願いするくらいです。

——背景の汚れた雰囲気に真造先生を感じました。

薄場:それはすごく嬉しいですね。背景ってキャラクターよりもコマを占める面積が大きいんですよ。だから誰が描くかでマンガの空気感みたいなものは変わってくると思います。

——アーティストのGILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEさんとはお友達?

薄場:辞めてしまったんですけど、大学時代に知り合いました。腐れ縁的な。

——お互いに高め合う存在?

薄場:それはないです(笑)。ただの友達ですね。

——ではヒップホップを題材にマンガを描こうと思ったのはなぜですか?

薄場:最初からヒップホップを描きたいと思ったわけじゃなくて、まず週刊連載をしたかったんです。僕の作風で週刊誌の連載をしようと思った時、何が柱になるかなと考えて、「音楽がいいかも」と思いつきました。自分自身もラップが好きで、ラッパーがヒーローだったので、こういう話になりました。

——先日別媒体でSEEDAさんと対談されてましたよね? あと第2集にはANARCHYさんの『GROWTH』が背景にさらりと登場しててお好きなのかなと思いました。

薄場:SEEDAさんもANARCHYさんも大好きです。『GROWTH』は小学5年生くらいの頃に聴いて衝撃を受けました。

——ということは京都が地元?

薄場:いえ、大阪の泉州あたりです。レゲエ文化が根強い地域で、小学校の給食時間にJ-POPと同じ流れでレゲエがかかるんです。そんな環境だからか、ヒップホップもかなり身近というか。レゲエも好きだけど、ヒップホップにハマりましたね。

「あくまで自分が見てきた肌感覚を描いています」

——以前のインタビューで主人公の雪人(ゆきと)に自分を重ねたと発言されてましたね。

薄場:僕はキャラクターを作る時に、最初に自分を当てはめるんです。他のキャラクターにも自分のある部分が反映されてたりします。その発言に関しては、自分には姉がいるので、そういう面が雪人に反映されている。ただそれは雪人の設定を作る最初期段階の話で、物語が動き出すとむしろ自分が10代の頃に一緒に遊んでた友達が投影されていきました。自分を重ねて描いている部分が多いのは完全にメイジです。

——なぜこんな質問をしたのかというと、各キャラクター達が放つエネルギーがものすごいからです。どうやってあんなキャラクターを生み出したのかなと思って。

薄場:そこはしっかりと作ったからだと思います。自分の想像から離れるくらいまでキャラクターができてくるとエネルギーを感じさせるような強いセリフを言ったりします。

——あと貧困やドラッグの描写があまりにもリアルでびっくりしました。

薄場:実はその辺に関してはほとんど取材してなくて、完全に肌感覚で描いてます。緻密に取材するスタイルのマンガだと、小学館には『闇金ウシジマくん』や『九条の大罪』の真鍋昌平先生がいらっしゃるので。僕はあんなに緻密に取材することはできないので、あくまで自分が見てきたものを描いています。友達の話とか、10代の頃にこういう人いたなとか。地元感の描写に関してはむしろあまり取材しないようにしてるかもしれないです。ただ音楽に関してはわりといろんな方にお話を聞かせていただきました。

——第1集の巻末の取材協力に音楽レーベル・SUMMITの増田岳哉さんやライターの渡辺志保さんのお名前がありましたね。

薄場:友達に誘われて、去年(2022年)渋谷の「WWW」の年越しパーティに行った時に、増田さんも現場にいらしたので簡単に自己紹介して、乾杯して「今度お話を聞かせてください」とお願いしたら快諾していただきました。

——ちなみに増田さんにはどんな話を聞いたんですか?

薄場:増田さんは日本語ラップの流れを見続けてきた方だと思うので、キングギドラが出てきた頃、TOKONA-Xが出てきた頃、さらにフリースタイルバトルが出てきた一方で、違うカルチャーも出てきたりという時に、どんなことを感じていたのか、そして増田さんから見て、それらがどのようにカルチャーに浸透していったと思うか、みたいなことを伺いました。またどういう人のどういうところに才能を感じるか、とかも。あとシンプルにSUMMITの増田さんに実際に会ってお話ししてみたかったっていうのもあります。

プロット段階の仮タイトルは「花と雨」だった

——ANARCHYさんのどんなところに惹かれたんですか?

薄場: ANARCHYさんの曲をちゃんと聴き始めたのは中学生くらいの頃なんです。自分は結構ひねくれた部分があるんですね。その中学時代はひねくれがすごくて、むしろ卑屈になってたんですよ。何もかも「どうせ俺なんて」みたいな。そんな時にANARCHYさんの「死ぬまでの生い立ち泣いてても仕方ない」ってリリックを聴いたんです。MACCHOさんの「どの口が何言うかが肝心」じゃないけど、ANARCHYさんに「泣いてても仕方ない」って言われたら、仕方ねえなって思うじゃないですか。

——間違いないですね。

薄場:言葉単体だけ抜き出すと普通にテレビとかでも言ってることじゃないですか。でもANARCHYさんが言ってたってことが僕にとっては意味がありました。

——第1集では雪人もよく殴られてますが、すごく痛そうに描いてるのが素晴らしいと思いました。暴力と貧困とドラッグ、そこに寄り添うヒップホップ。メディアが報じない世界を描こうと思ったのはなぜですか?

薄場:その質問に関して、めちゃくちゃ正直に答えると「わからない」です。僕は友達のことを描きたかったってだけなんです。貧困がどうのこうのとか、社会を映し出すみたいな意識は一切ない。むしろもう会わなくなった友達に向けて描いてる部分が大きいです。

——自分は癖でつい批評っぽく作品を読んでしまったんですが、むしろ今の薄場さんの発言を聞いて完全にラッパー的なマンガの描き方だと思いました。間違いなさすぎます。

薄場:ありがたいです。でもやっぱマンガは作者と作品が切り離されてるとこがあると思うんです。自分は、自分の思想とマンガのキャラクターを切り離して描いてます。マンガはラッパーよりも作者の匿名性が高いし、作品が面白ければ読んでもらえる。音楽とかになると、自分は本人がどういう人なのかで曲を聴くことが多いです。実際にお会いしたSEEDAさんも、周りの音楽をやってる人達も、みんなめちゃくちゃかっこよかったんです。僕は、自分がかっこわるいからマンガを描いてるんだと思います。

——今、SEEDAさんのお名前が出ましたが、やはりこの作品の設定からは「花と雨」を思い出してしまうんです。

薄場:「花と雨」は大好きです。というか、プロットの段階では「花と雨」という仮タイトルにしていました。連載が決まった時に、正式に『スーパースターを唄って。』というタイトルをつけました。

ライブシーンに込めた想い

——僕はオッサンやクラブ・MOON DOLLの店長の孫さんのような大人に感情移入して読んでました。

薄場:オッサンに関してはどのコミュニティにも大人になれなかった大人がいるような気がしていて。このマンガは子供がスーパースターになる話なので、どこかで大人が助けてくれないと無理だなって思って、オッサンや孫さんを出しました。孫さんに関しては、友達のラッパーにお願いしてクラブの楽屋を取材させてもらいました。どんな雰囲気か、どんな話をしてるか、空気感を知りたくて。あとは僕個人の経験も大きいです。この企画の連載を通すまでもいろんな大人が助けてくれたし、今も編集部の人達にいっぱい助けてもらっています。それは増田さんも、渡辺志保さんも多分、シーンの若手に同じことをしていて、やっぱり子供だけじゃなくて、導いてくれる大人が必要だと思います。

——そういうふうに考えてくれる若い世代がいてくれるのは嬉しいです。今SNSを見ると世代間の断絶ばかりが目立つので。

薄場:この作品に関して言うと、意図的にステレオタイプな悪者を出してないんですよね。みんなそれぞれ事情がある。第2集でわかることもかなりあります。もちろん悪い人も出てくるけど、その人はそう生きると決めてる人。それはそれでちゃんと描く予定です。

——第1集のハイライトはライブのシーンだと思います。音楽を絵で表現するのは難しくなかったですか?

薄場:そうですね。ライブのシーンまで雪人の心情は吹き出しじゃなくて、コマの外に書いてたんですよ。ライブのシーンではそれを絵にしたんです。目で観てわかるように。だからセリフもない。

——だからあのシーンでフォントを変えたんですね。

薄場:そこは編集担当の西尾さんがやってくださいました。僕は昔描いてた短編でもコマの外にポエムを書きがちで。たぶんそのへんは宮沢賢治からの影響だと思います。

——ライブシーンの観客の反応もめちゃくちゃリアルだと思いました。

薄場:当然刺さる人もいれば刺さらない人もいると思ったんで。今年「POP YOURS」に取材に行かせてもらったんですね。その時Tohjiさんのライブが終わって民族大移動みたいな感じで人がいなくなって、今度は喫煙所からAwichさんのファンの人達が入れ替わるようにやってきたんです。僕はTohjiさんもAwichさんも好きだから普通にずっと観てたけど、その入れ替わる感じがすごく印象的だったんです。さっきも言ったけど、このマンガは雪人、メイジ、リリー達がスーパースターになっていく話なので、いろんな人達に刺さるクルーにはいろんなタイプのやつがいると思ったんです。

——ライブ前に雪人が「ナイキ」の「エアフォース1」から「アディダス」の「スーパースター」に履き替えるのは?

薄場:ヘッズは真っ白の「エアフォース1」を履くと思うんですよ。僕も今日履いてますけど。雪人はボロボロになるまで「エアフォース1」を履いてた。あのライブで「スーパースター」を履くのはラッパーになったってことを明示したかったからです。あとはシンプルにRUN DMCへのオマージュでもあります。

——話せる範囲で構わないので、今後はどのような話になっていくか教えてください。

薄場:第1集は雪人の話で、次の第2集はメイジの話になります。その後は群像劇的に主要キャラクター達の話を掘り下げていく予定です。最終回はもう決まってます。最終回が一番面白いです。だから楽しみにしててほしいです。

——ちなみに今後描いてみたい漫画のテーマはありますか?

薄場:ガンダムを描いてみたい。僕は太田垣康男先生の『機動戦士ガンダム サンダーボルト』が大好きなので。ガンダムが出てこないゲリラの少年の話とか面白そう。

Photography Tameki Oshiro

『スーパースターを唄って。』

■『スーパースターを唄って。』
第2集が12月27日に発売
第1集発売即重版。貧困と友情の極限ドラマ。
主人公・大路雪人。18歳、売人。
幼い頃に最愛の姉を含む、全ての家族を失った彼だが、
信じてくれる唯一の親友がいた。
益田メイジ。18歳、ビートメイカー。
「お前は言いたいことだけ言え。」
「オレが売ってやる。」
メイジに誘われ、再び音楽の道を歩み始めるも、
劣悪な職場と地元のしがらみが容赦無く雪人を襲う。
ボロボロの姿で初ライブのステージに立った先は……
メイジと雪人の過去と絆が今、紡がれる。

『僕のヒーローアカデミア』堀越耕平先生、絶賛!!
今年最注目の人間叙情詩、最新2集!!

著者:薄場 圭
発行:小学館
https://bigcomics.jp/series/1de5c7e1986fe

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元「デザート」編集長の鈴木重毅に聞く少女マンガの引力 恋愛作品や感情表現の豊かさが教えてくれること https://tokion.jp/2023/12/25/girls-comic-editor/ Mon, 25 Dec 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=218221 マンガ編集歴約30年の鈴木重毅に「少女マンガとは?」をインタビュー。

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鈴木重毅

鈴木重毅
マンガ編集者。1996年、講談社に入社し「週刊少年マガジン」編集部に配属される。1998年「デザート」編集部に異動。2013年より同誌編集長に。2019年、講談社を退社し、マンガ家のマネジメント会社スピカワークスを設立。主な担当作に『好きっていいなよ。』(作・葉月かなえ)、『となりの怪物くん』(作・ろびこ)、『ライアー×ライアー』(作・金田一蓮十郎)、『たいようのいえ』(作・タアモ)、『春待つ僕ら』(作・あなしん)、『ゆびさきと恋々』(作・森下suu)、『うるわしの宵の月』(作・やまもり三香)、『恋せよまやかし天使ども』(作・卯月ココ)などがある。マンガ家や志望者向けのオンラインイベント「少女まんが勉強会」や、マンガ編集者のためのサークル活動「まんが編集の会」などを実施している。
X(旧Twitter):@henshu_shigel

「少女マンガ」と聞いてあなたが思い浮かべるイメージはなんだろう。キラキラした絵柄や恋愛模様、あるいは学校が舞台のドタバタコメディだろうか。「同じように捉えられがちなジャンルだけど、どの物語にも違いがあるんですよ」。そう話すのは2013年から2019年まで少女マンガ誌「デザート」の編集長を務めた鈴木重毅だ。鈴木は1996年に講談社に入社後、「週刊少年マガジン」編集部で2年間、「デザート」編集部で21年間勤務した経歴を持つ。これまでに担当した少女マンガの累計発行部数は4000万部を超え、その中には『ゆびさきと恋々』(作・森下suu)、『うるわしの宵の月』(作・やまもり三香)、『好きっていいなよ。』(作・葉月かなえ)、『となりの怪物くん』(作・ろびこ)、『春待つ僕ら』(作・あなしん)、などのヒット作が並ぶ。

少女マンガは現在に至るまで大勢の読者を獲得し、映画化やドラマ化、アニメ化といったメディアミックスの波を生み出してきたが、その一方で「恋愛モノが多い」「女性向け」のイメージから、未だ手を伸ばしたことのない人もいるだろう。今年9月にマンガの描き方を指南した書籍『「好き」を育てるマンガ術』(フィルムアート社)を上梓し、少女マンガ家をサポートし続ける鈴木に少女マンガの魅力を聞いた。

少女マンガと少年マンガの違い

—— 鈴木さんはもともとマンガ編集者を目指されていたのですか?

鈴木:いえ、はじめはマンガ家になりたかったんです。僕が小学生だった時は、ちょうど「週刊少年ジャンプ」(集英社)の人気が急上昇している頃でした。『キャプテン翼』(作・高橋陽一)に影響を受けた子ども達が、サッカーボールを蹴りながら登下校したり、キン肉マン消しゴム(通称「キン消し」)が大ブームになったりした時代で。夕方の時間帯にマンガを原作にしたテレビアニメがたくさん放送されていたこともあって、マンガが一気に子ども文化のメインストリームに躍り出てきました。そういうわけで僕も「マンガ家ってかっこいい!」と思い、マンガを描くことにしたのですが、僕よりもめちゃくちゃ上手い同級生が周りにいて……。「こういう人がマンガ家になるんだな」とすぐ心が折れてしまったんです。そんな時に藤子不二雄先生の『まんが道』を読み、マンガ編集者なるものがこの世に存在すると知りました。その体験が大人になるまで頭の片隅にずっと残っていたので、就職活動の時には編集者を目指すようになりました。

——2年間の「週刊少年マガジン」編集部を経て、少女向けマンガ誌の「デザート」編集部へ異動したんですよね。

鈴木:異動辞令が出た時は青天の霹靂のように感じました。「デザート」が創刊してからまだ1年もたっていない頃だったので、そもそも媒体の存在も知らなかったんです。「そんなお菓子の専門誌があったっけ?」と思ったほど(笑)。それまで少女マンガは自分にあまりなじみのないジャンルだったこともあり、戸惑いながらも最初に『花より男子』(作・神尾葉子)を少女マンガのお手本として読み込みんだのを覚えています。そうして少女マンガを読んでいくと、おもしろい作品がたくさんあることに気付かされ、いつの間にか自分も「すごい少女マンガ作品を生み出すことに関わりたい」と考えるようになっていました。その後徐々に経験を積んで「この編集部で自分はやっていけるかも」と思えるようになってからは、2019年に講談社を退社するまで、結果的に少女マンガ畑にい続けることになりました。先輩いわく、そのおもしろさに気付いて僕のように少女マンガ編集部に異動したきりになった人も実は多かったそうです。

——少女マンガのどのような点に魅力を感じていますか?

鈴木:日頃、僕達が忘れがちになっている物事を丁寧にすくい上げ、その価値を再発見させてくれる点が魅力的です。また、絵をはじめとした表現の方法もそうですが、世界や人間の見方、捉え方が繊細ですてきだなと思います。少女マンガをあまり読まない人から見ると、少女マンガというのはすべて同じように捉えられる傾向にあるジャンルだとは思うのですが……。少年マンガと一番異なるのは、登場人物の感情に大きく焦点を当てていることです。

少女マンガは人間関係を中心に物語を進行することが多く、人と人の絆から生まれる恋心などの感情を取り上げようとするものが多いのですが、個人的な実感としては、社会でどう生きていくかを考えた時に、若い女性のほうが若い男性よりも身近な物事に問題意識が向きやすいからかなと思っています。卑近な例が僕の高校生の娘。彼女の話を聞いていると、友達との付き合いに心を砕いている印象を受けます。家族旅行をした時も、友達に渡すお土産を選ぶために驚くほど長い時間をかけたりしていました。彼女に限らず、女性は周りの人の感情というものに対してとても敏感で繊細だなと感じます。また、生きていく時のさまざまな場面でその都度他人とどう向き合っていくのかというのは、誰にとっても大事な問題ではないでしょうか。

——感情に焦点を当てる。確かに、少女マンガにはモノローグが多い印象があります。

鈴木:登場人物たちの気持ちを共有してもらい、他の人がどんなことを思い考えているのか知ってもらうことで、読者に生きていくための支えや勇気を感じてもらうことができるかもしれないし、自分と同じ悩みを抱えている人がいたと知って、力にしてもらうことができる時もあると思うんです。難しい決断を迫られる場面や感情が大きく揺さぶられる場面で、他の人が感じていることや考えをのぞき見るなんて、現実社会ではできないですよね。でもマンガではモノローグがあればそれが可能になるし、それこそがモノローグの醍醐味だと思います。登場人物の口に出していることと思っていることが違う裏腹な状況も読者に見せられますし、より読者がキャラクターに感情移入できるきっかけにもなりますよね。

また、モノローグと一くくりに言えど、その中にはさまざまな表現の仕方があります。例えば森下suu先生の『ゆびさきと恋々』は、聴覚障がいを抱える主人公の雪が大学の先輩である逸臣と恋をする物語です。雪は言葉を声に出すことはないのですが、その分モノローグや表情、手話で感情を表現しています。モノローグと言っても、さまざまな表現の仕方、違いがあるのでそれを知って楽しんでほしいです。

少女マンガ読者が求めるもの

——少女マンガはどのような読者を想定して描かれるのでしょうか?

鈴木:マンガ家さんや編集者によって違うと思いますが、僕は「デザート」に所属してしばらくたってからは、マクドナルドやスターバックスで「全然いいことなんてないよね〜」とぼやいている10代後半から20代前半の女性をペルソナに考えていました。彼女達が「明日も頑張ろう」と思えるようなマンガを作っていこうと。個人的な感覚の話になりますけれど、女性はマンガを読んで気持ちを浄化したいという欲求を持っていることが少なくないと感じます。ファンからは「キュンとする」と言われることがとても多いので、学校や仕事で疲れたり、嫌なことがあったりした時に、少女マンガで心をときめかせて気分を上向きにリセットしたいのかなと。1日の終わりに、夜に半身浴をしながらマンガを読むという声も聞くので、そういう「リセット欲」が根底にあるんだと思います。だからこそ少女マンガ読者からのお便りは、感謝の気持ちをたっぷりとつづったものが多いですね。実は、少年マンガ誌から異動した時に一番驚いたことは、読者の方からマンガ家さん宛に届くお便りの丁寧さでした。「人はこんなに感想を伝えてくれるものなのか!?」と感動しました。

——読者の気持ちを前向きにリセットさせる……。基本的に少女マンガ読者が重視していると鈴木さんが感じる要素は他にもあるのでしょうか。

鈴木:やはり人間と人間の関係性は重視して読まれている気がします。ですから長い連載作品になってくると、恋愛だけではなく、友達や先輩、後輩、家族などとの関係性を描いたエピソードもとても丁寧に読みこんでくれているなと感じます。また、それぞれの登場人物を個別に追うだけでなく、登場人物同士が関わって起きる化学変化のようなドラマにも興味を持ち、登場人物たちの行く末にも思いを重ねてくれていると思います。少女マンガに限りませんが、誰にどんなドラマがあり、誰と関わってどんな新しいドラマが生まれるかというのは、自分の人生と重ね合わせて思い入れを感じながら読む方が多いのではないでしょうか。それと、最近「尊い」という感想もよくもらいます。以前は、ヒロインやヒーロー個人への憧れが強かったのが、最近は誰かと誰かの関係性に憧れる人が多くなっている気がしますね。

——長年少女マンガ編集に携わってきた中で見えてきた、読者に好まれる少女マンガとは?

鈴木:答えるのが難しい質問ですが、王道はすてきな男の子とのすてきなラブストーリーだと思います。でもそれは、単にラブストーリーというのではなく、少しでも理想の自分に近づきたいという葛藤と成長の物語であり、誰もが人生の中で一度は通り得る物語ではないでしょうか。

もう一つが登場人物や世界観に魅力が感じられるもの。そのためには、著書の中でも繰り返し書いていますが、マンガ家さんそれぞれが「好き」で選んで描いているものが詰まっているということが重要だと思います。

ただ、あえて言えば最近ニーズが高いのは、主人公が最初から恋愛相手に溺愛されている作品かなと感じます。以前は、主人公が恋心を実らせるためにいくつもの試練を乗り越えるような、少しずつ展開する物語が多かったんです。でも今は、好きな人に思いを伝えるまでに長い時間を要すると、読者が痺れをきらしてしまう。

その背景には、景気が悪く暗いムードが漂う社会状況もあると思います。マンガは社会の様相を映し出すものでもあります。現実が苦しいのに、フィクションでまでつらい内容を読みたくないという意識が反映されているのではないかと。個人的な感覚ですが、恋愛をネガティブに捉え、「傷つくことをしたくない」「一足飛びに結婚したい」「いやそもそも結婚したくない」という考えの人が増えている印象もあります。少年マンガにも同じことが言えるかもしれません。たとえば以前は修行を繰り返すことで主人公が少しずつ強くなる話が多かった印象なのに、最近では何者でもなかった主人公が、異世界に行った途端チート能力で無双する「異世界転生モノ」がはやっていたりもします。もちろん少しずつ展開する少女マンガも、無双しない異世界転生モノもあるので、あくまでも近年の傾向の話として受け取ってください。

——改めて、それでも少女マンガはかなりの割合で恋愛をメインテーマに置いているように感じます。それほどまでに恋愛が重要な要素である理由をお聞きしたいです。

鈴木:少女マンガに限ったことではないと思います。世の中には常に新しいラブソングが生まれていますし、古今東西のエンタメにおいてラブロマンスは人気のテーマではないでしょうか。繰り返しますが、少女マンガは人と人との関わりに焦点を当て、絆の結び方や感情の共有の仕方を描く傾向が強いジャンルです。僕は恋愛のことを、他人と他人が結ぶ関係性の中で最も強くて難しいものだと思っています。ゆえに恋愛についての人の悩みは尽きないのでしょうし、題材として取り上げる頻度が多いのだと思います。でも、題材は恋愛だったとしても、マンガ家が核として描いているのは人間の葛藤と成長であることが多いです。ですから、自分の悩みに寄り添ってくれる物語や、人生を生きやすくする価値観を教えてくれる物語、勇気を与えてくれるキャラクターが必ず見つかるはずです。「恋愛ものばかりだから……」とあまり少女マンガを読んだことがない人にも、気軽に作品を手に取ってほしいですね。

より多くの読者へ作品を届けるには

——鈴木さんは2019年に講談社を退職してから、マンガ家のマネジメント会社である株式会社スピカワークスを設立していますよね。

鈴木:僕は現役の編集者として一生をかけて作品に関わり続けたかったんです。スピカワークスは、契約マンガ家さんのマネジメントやプロデュース、新人マンガ家さんの育成などを行う会社です。媒体に所属して編集者をしていると、どうしてもその媒体のために働くことが主軸になる。でも僕はマンガ家さん達の魅力を引き出していくことにもっと挑戦していきたかった。編集者によっていろいろな考え方があるのですが、魅力ある作品が生まれるのは、マンガ家さんが「この作品を本気で描きたい!」と思ってくれた時だと考えています。企画や原作が先行する作品もありますが、マンガ家さん達の熱意が一番大切。あとは、たとえマンガ家さん達が媒体の連載以外にも興味を持った場合でも、そこに伴走したい思いがあったんです。僕は、自分が担当したマンガ家さんには必ず大きく化けてほしいし、何がなんでも大成させたい。まだまだ道半ばですが、そんなことを思いながら仕事しています。

——今年9月に発売した著書『「好き」を育てるマンガ術』には、「少女マンガ編集者が答える『伝わる』作品の描き方」というサブタイトルがついています。魅力的でおもしろい作品の描き方ではなく、「伝わる作品」としたのはなぜでしょうか?

鈴木:僕自身が、マンガを世に送り出すのであれば「たくさんの人に読んでもらいたい」と考えてきたからですね。マンガ家さんが一生懸命描いた作品が「わからないから読めない」と思われてしまうのは嫌なんです。魅力的なマンガを成立させる要素のピラミッドが存在するとして、その基礎となる一番土台の層には「伝えたいことが伝わる」があるべきだと思っています。魅力やおもしろさはその上に積み上げられるものなので、まずは作者の伝えたいことが読者に理解される必要がある。

あとは、伝わりやすさ自体はある程度技術で実現できるからですね。魅力やおもしろさには人の価値観が入りやすい。僕にももちろん「何がおもしろいか」という個人的な考えはありますけど、どこまで行っても僕の個人的感覚なので。そういうことは今回出版した本に書きたくなかったんです。創作で悩みを抱えている作家さん達に、僕が考えるおもしろさへ寄せたものの考え方をしてほしくなかった。それよりも、伝えるという技術をもっと楽に捉えてもらうことで、皆さんに少しでも楽しんで作品を描いてもらうことのほうが大切だと思うんです。

『「好き」を育てるマンガ術』
元「デザート」編集長かつ株式会社スピカワークス代表の鈴木重毅が、マンガ家やマンガ家志望者から寄せられた創作の悩みに答えるクリエイター必携の指南書。「どうしたらキャラが立つ?」「物語の膨らませ方は?」「読者をキュンとさせるにはどうするべき?」「スランプの解消法は?」など、鈴木が約30年の編集者歴で受けた相談の数々を、55のトピックに分けて収録した。マンガ家のマネジメント会社であるスピカワークスに所属する森下suuのインタビューや、マンガ編集者達による座談会も掲載。マンガ家が好きなものに対する熱意をいかに育て、それを読者にどう伝えていくべきか。現役のマンガ編集者ならではの実践的アドバイスが詰まった1冊となっている。

著者:鈴木重毅
装画:森下suu
発売日:2023年9月26日
仕様:四六判・並製
ページ数:360ページ
価格:¥2,200
発行:フィルムアート社
filmart.co.jp/books/manga_anime/shigel_manga/

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細田守監督も称賛する注目のブラジル人アニメ監督、アレ・アブレウが語る新作『ペルリンプスと秘密の森』に込めた色彩と音楽へのこだわり、そしてブラジル文化への想い https://tokion.jp/2023/11/28/interview-ale-abreu/ Tue, 28 Nov 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=217423 ブラジル人アニメ監督、アレ・アブレウが語る新作『ペルリンプスと秘密の森』について。

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アレ・アブレウ(Alê Abreu)

アレ・アブレウ(Alê Abreu)
1971年3月6日、サンパウロ生まれ。13歳の時にサンパウロ市内にあるMuseum of Image and Sound(MiS)のアニメーション教室に通い始める。1990年代、アブレウは2本の短編アニメーションを制作し、イラストや広告など多くのプロジェクトに携わった後、初の長編映画『Garoto Cósmico(宇宙の少年)』を制作。2016年に『父を探して』公開。2016年アカデミー賞長編アニメ賞に南米の長編アニメ作品として初ノミネートされた。

近年、注目を集めるイベロアメリカ(欧州および中南米のスペイン語・ポルトガル語圏諸国から構成される地域)のアニメ。そんな中で注目を集める監督の1人が、ブラジル出身のアレ・アブレウだ。長編2作目の『父を探して』(2016年)がアカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされたアブレウは、音楽と色彩に満ちあふれたイマジネーション豊かな作品を生み出してきた。最新作『ペルリンプスと秘密の森』は、クラエとブルーオという2人のエージェントが、巨人達から森を救うために「ペルリンプス」を探すという物語。そこには自然破壊や分断された世界に対する批判と、子どもの純粋な心が持つ力や可能性が描かれており、細田守監督も「まばゆい色彩に何度も目を奪われる。2人の主人公の愛くるしさと、今そこにある待ったなしの問題とが、葛藤する。その先に、子ども達へのやさしさがあふれている」と称賛のコメント寄せる。

今回、来日中のアブレウに会ってみると、彼自身が子どものような無邪気で活気に満ちていた。お土産のブラジルのお菓子を頂きながら、映画について話を聞いた。

華やかな色使い

——『ペルリンプスと秘密の森』は前作『父を探して』に比べると作風が変化しましたね。とても色彩豊かで、柔らかくて立体的なタッチになりました。美術やキャラクターのデザインについて、何か意識していたことはありますか。

アレ・アブレウ(以下、アブレウ):『父を探して』と『ペルリンプスと秘密の森』は、ある意味、対照的な作品と言えるかもしれません。『父を探して』は白をベースにしているのに対して、『ペルリンプスと秘密の森』はカラフル。『父を探して』にセリフはありませんが、『ペルリンプスと秘密の森』はセリフがたくさんある。この違いは私のスタイルが変わったというより、物語が求めているスタイルが違うので変化したんです。

——では、今回の色使いに関して何か意識していたことはありますか?

アブレウ:この映画は色彩が1つのキャラクターになっています。まず、森のキャラクターを表す色彩。そして、子どもの世界も色彩によって表しています。映画の冒頭にカマドドリのジョアンが「この世界に強い光が入ってきた」と語りますが、その光が色彩を、子ども達の世界を生み出すのです。

——『父を探して』も白をベースにしながら色鮮やかでした。監督にとって色は世界観を生み出す上で重要な要素なのでしょうか。

アブレウ:色彩はものすごく重要な要素ですが、色の重要性や使い方について言葉で説明するのは難しいんです。色に関しては理論立てて使用しているわけではなく、自分のイメージがおもむくままに使っています。感覚的に使う、というのが私のやり方です。色を何かの象徴として使うことがありますが、私にとって色は音に近いもの。いろんな色を組み合わせてハーモニーを生み出していくことに惹かれるんです。

——画家のパウル・クレーも色は音楽的だと言っていますね。

アブレウ:そう、クレーもどんな作品になるかわからないまま色を加えていく。だからこそ作品に画家の内面そのものが反映されるんです。

——日本のアニメーションは色の使い方に対しては臆病というか慎重なので、 監督の作品を見ると世界はこんなに色にあふれているのかと驚かされます。

アブレウ:私は作品を作り始めると、その世界に深く潜り込んでいくことを大切にしています。今回は子どもの世界に潜り込んでいたので、子ども達の恐れを知らない大胆な色使いになりました。

——2人の子ども達のキャラクターデザインもとてもユニークでした。それぞれが動物の格好をしていて奇妙なメイクをしている。どこかプリミティヴな雰囲気も漂っていますが、彼等のキャラクターデザインはどういうふうに思いついたのでしょう。

アブレウ:最初に思いついたのがクラエのイメージでした。森の中の湖のような場所にオオカミの格好をした男の子がいる。顔にメイクをしているけど崩れかけていて、その子はどこかに行こうとしているんです。その子はどこに行こうとしているのか、その森はどんなところなのか。そうやっていろいろ考え始めたことで物語が生まれていきました。

——ブラジルの子ども達は自分でメイクをして遊んだりするのでしょうか?

アブレウ:そんなことはないです。ただ、自分が思いついたイメージがそうだったというだけで。もしかしたら、動物の格好をしていたのはカーニバルに参加していて、そこを抜け出してきたのかもしれない。でも、そう考えたのは後付けで、そういう設定というわけではありません。

音楽のイメージ

——監督の作品は全編に音楽が満ちあふれて、映像と溶け合ってシンフォニーを奏でています。本作の音楽に関しては、どんなイメージを持たれていましたか。

アブレウ:自分にとって映画の音楽というのは、言葉では表せない部分、スピリットを表現してくれるものです。今回のサントラはアンドレ・ホソイとオ・グリーヴォに依頼しました。それぞれに役割が区別されていて、オ・グリーヴォは森の風の音だったり雨だったり、そういう自然音を音楽として感じられるようにサウンドデザインをしてもらいました。アンドレには、子ども達のエネルギーを表現する音楽を作ってもらったんです。彼はボディ・パーカッションのグループ、バルバトゥッキスの中心人物で、私とは幼馴染なんです。

——どんな音楽にしたいのか、頭の中にイメージはありました?

アブレウ:アンドレには曲作りの参考になるものとして、サイケデリック・ロックを薦めました。テーム・インパラとか。自分がヴィジュアルを考える時も、サイケデリック・ロックのイメージがあったので、色彩と音楽で子どものパワーを表現できると思ったんです。

——この映画では音楽は添え物ではなく、1つの空間を生み出していますね。

アブレウ:まさにその通りです。作品をよく観ていただいてありがとうございます。音楽をバックにあるものとして捉えている監督や作品が多い中で、自分は作品を作り上げえる上で重要な要素として捉えているんです。

ブラジルでアニメーション映画の分野を確立したい

——『父を探しても』も本作も、子どもの眼差しで世界を発見してく物語だったと思います。あなたにとって「子ども」とはどういう存在ですか。

アブレウ:この映画を作っている間、自分はずっと子どもに戻っていました。子どもというのは、信じる力を持ち、世界がもっと素敵になるという強い希望を持つ者です。子どもが持っているその力は、大人になってからでも、大きな光、希望の光として人間の中に宿っています。そして、人が闇の中にいる時、困難に立ち向かう時に、その光が導いてくれるんです。

——監督は13歳の頃にアニメの教室に通うようになって、本格的にアニメの道を志したそうですね。何かきっかけのようなものがあったのでしょうか。

アブレウ:子どもの頃からアニメーション大好きで、自分でアニメーション映画を作りたいと思っていたんです。ブラジルのアニメやディズニーも観ましたが、日本のアニメに強く惹かれました。手塚治虫の『リボンの騎士』をよく覚えています。今も日本のアニメは私にとっては先生みたいな存在で、宮崎駿や高畑勲などさまざまなマエストロが作った映画を観て、いろんなことを学んでいます。そして、18歳の時、ルネ・ラルー監督の『時の支配者』や『ファンタスティック・プラネット』をサンパウロのシネクラブで観て「こんな作品を作りたい!」と思ったんです。観客と対話できるような作品を作りたいと。

——監督の作品を拝見すると、ブラジルの文化や自分達のルーツを再発見しようとしているように思えます。

アブレウ:ブラジルだけではなく、南米全体を視野に入れて考えています。『父を探して』は、『Canto Latino』というラテンアメリカの音楽を題材にしたドキュメンタリーを準備している過程で思いついたアイデアから生まれました。ブラジルの文化はいろんなものが混ざり合っている。とても豊かな背景を持っていて、それが自然に私の作品に表れてくるのではないでしょうか。

——ブラジルの現在のアニメの状況はいかがですか?

アブレウ:前の政権が文化に理解がなかったので、長い間、ひどい状況が続いていました。昔はブラジルで公開される映画の15%が国内で制作された作品でしたが、今はわずか1%にすぎません。新しい政権になってから、衰えてしまった文化芸術の分野を回復しようと頑張っているところです。日本には及ばないにしても、ブラジルでアニメーション映画の分野を確立するために、これからも努力していきたいと思っています。

Photography Yohei Kichiraku

『ペルリンプスと秘密の森』

『ペルリンプスと秘密の森』
12月1日から全国順次公開
脚本・編集・監督:アレ・アブレウ
音楽:アンドレ・ホソイ / オ・グリーヴォ
2022年 ブラジル / 原題:Perlimps / スコープサイズ / 80分 / 日本語字幕 星加久実 
後援:駐日ブラジル大使館 
配給:チャイルド・フィルム/ニューディア― (c) Buriti Filmes, 2022
https://child-film.com/perlimps/

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「大友克洋全集『AKIRAセル画展』」が大阪でも開催 10月6日から心斎橋パルコで 大阪限定グッズも販売予定 https://tokion.jp/2023/08/31/akira-cell-drawing/ Thu, 31 Aug 2023 11:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=206371 会場は「心斎橋パルコ」の 14階「SPACE14」で、会期は10月6〜24日。

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8月31日まで東京で開催され、全日チケット完売するほどの人気だった「大友克洋全集『AKIRAセル画展』」が大阪でも開催される。会場は心斎橋パルコの 14階「SPACE14」で、会期は10月6〜24日。

会場では大阪限定グッズの販売や、東京会場で話題となった入場特典(全集印刷時のゲラ刷り)の配布も予定している。※なくなり次第終了

大友克洋、自らが監督を担当した、劇場版アニメーション映画『AKIRA』(1988年)。刊行中の「大友克洋全集」第1期に、「絵コンテ集」も含め複数巻上梓した劇場版関連書籍の中から、「原画・レイアウト集」にも収録した、大友監督私蔵のセル画や貴重な直筆レイアウト約650点超を、大友自身のチョイスにより惜しまず、できる限り展示、初公開。マンガ、映画に続き、今回も作者・大友克洋氏自らが企画構成し、劇場版の新たな楽しみ方をプロデュースするセル画展となっている。

セル画展示は「NEO TOKYO」「NIGHT-MARE」「CATASTROPHE」と大きくシーンを分けて、映画の設計をも垣間見ることができる内容。また、来場者も撮影可能なフォトスポットでは、名シーンの一つである「ナイト・ベア」のシーンを再現。東京展でも話題を呼んだ会場BGMは、芸能山城組『Symphonic Suite AKIRA』のリミックス・バージョン。久保田麻琴、小西康陽が参加したリミックスも必聴だ。

入場予約方法の詳細は、後日セル原画展特設サイト、PARCO ART 展覧会ホームページで告知予定。

■大友克洋全集 AKIRAセル画展
会期:2023年10月6〜24日
会場: SPACE14 
住所:大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-8-3 心斎橋パルコ 14F
時間:10:00〜20:00 
※入場は閉場時間の30分前まで。
※最終日は18:00閉場。 
料金:¥ 1,500
※未就学児は保護者同伴に限り入場可(入場無料)
※入場は事前予約制。
予約方法の詳細は、後日セル原画展特設サイト・PARCO ART 展覧会HPにて告知。
https://otomo-complete.com/special/akira-cell-drawing/index.html

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劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』が11月23日から3週間限定で上映 https://tokion.jp/2023/08/24/ghost-in-the-shell-sac_2045/ Thu, 24 Aug 2023 02:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=205140 総監督はシーズン2の監督を務めた神山健治 × 荒牧伸志、監督は藤井道人が再び担当した。

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『攻殻機動隊 SAC_2045』シーズン2 を新たなシーンと視点により劇場版として再構成した劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』が、11月23日から3週間限定で全国30館で劇場公開される。前作『持続可能戦争』に続き、総監督はシーズン2の監督を務めた神山健治 × 荒牧伸志、監督は藤井道人が再び担当した。

メインビジュアルは全世界から注目される気鋭のイラストレーターであり、本作のキャラクターデザインを手掛けるイリヤ・クブシノブが描き下ろし。全身義体の主人公・草薙素子と、公安9課の新メンバー・江崎プリン、人類の脅威 “ポスト・ヒューマン”の少年・シマムラタカシらメインキャラクターを描いたものとなり、過去の「攻殻機動隊」のアイコニックなビジュアルを彷彿とさせ つつ、シリーズの壮大なクライマックスを予感させるものになっています。

また劇場公開に合わせて、総監督の神山健治と荒牧伸志がコメントを発表した。
「監督としてこの20年間つきあってきた『攻殻機動隊』に、個人的に礼を言うつもりで『攻殻機動隊SAC_2045』を作ったので すが、藤井監督チームの劇場版『最後の人間』で久しぶりにシリーズ制作中の心情を振り返り、自分がどれだけ少佐の事を好 きだったのか、感じ入りました。あらためて草薙素子に、ありがとうと言いたい。そのことを確認させてくれた藤井監督にも感謝です」(神山健治)。
「シーズン2の制作時は、複雑で膨大な情報量をどのように映像として表現するか悩んだ事を思い出します。新たに藤井監督の 視点で再構成されたものは、シーズン1の時もそうだったように、総集編の枠組みを完全に超えた、新たな劇場映画としてリ・ クリエイトされたものになるという確信があります。皆様もどうぞお楽しみに!」(荒牧伸志)。

『攻殻機動隊 SAC_2045』はシーズン1が2020年4月から、シーズン2が2022年5月からNetflixにて世界独占配信され、シーズン1に新たなシーンを加えて再構成した劇場版 『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』は2021年11月から全国で劇場公開された。

■『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』
公開日:2023年11月23日(3週間限定)
配給:バンダイナムコフィルムワークス
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊 2045 製作委員会

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映画『パーフェクトブルー』が9月15日から初の4Kリマスター版での上映が決定 マッドハウスの創業50周年を記念して https://tokion.jp/2023/08/23/perfect-blue/ Wed, 23 Aug 2023 07:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=204966 多くのアニメーション作品を手掛けてきたマッドハウスの創業50周年を記念して、劇場公開から25周年を迎えた映画『パーフェクトブルー』を9月15日から期間限定で、全国44館で上映することが決定した。 『パーフェクトブルー』は […]

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多くのアニメーション作品を手掛けてきたマッドハウスの創業50周年を記念して、劇場公開から25周年を迎えた映画『パーフェクトブルー』を9月15日から期間限定で、全国44館で上映することが決定した。

『パーフェクトブルー』は、今敏監督の長編映画初監督作品で、国内外で多くの映画賞を受賞。なお、今回の上映では、8月26~27日に開催されるマッドハウス50周年記念上映イベントでのお披露目に続く『パーフェクトブルー』初となる4Kリマスター版での上映となることも決定。※一部の劇場では2Kでの上映。

さらに本企画では、来場者特典の配布も実施予定となっている。

■『パーフェクトブルー』
人気絶頂のアイドルグループを突如脱退し女優への転身をはかった霧越未麻。ところが、彼女の思惑とは裏腹に過激なグラビアやTVドラマへの仕事が舞い込んでくる。周囲の急激な変化に困惑する未麻。そんな折り、彼女の仕事の関係者が犠牲者となった殺人事件が多発する。そして、ファンからは「裏切り者」のメッセージが…。追い詰められた彼女の前に今度は“もうひとりの未麻”が現れる。自分は狂ってしまったのか?これは夢なのだろうか?連続殺人犯は自分なのか?次第に現実と虚構の区別がつかなくなっていく未麻。果たして彼女の見た“もう一人の自分”の正体とは一体……。
1998年/日本/81分
監督:今敏
原作:竹内義和
脚本:村井さだゆき
出演:岩男潤子、松本梨香、辻 親八、大倉正章、古川恵実子、新山志保人
https://filmarks.com/movies/13580

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「大友克洋全集 AKIRAセル画展」が8月10日から東京・池袋のスタジオミクサで開催 6月29日からチケット販売開始 https://tokion.jp/2023/06/29/akira-cel-exhibition/ Thu, 29 Jun 2023 11:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=195375 会期は8月10日から8月31日まで。入場料は¥1,500で、Tシャツやキービジュアル(2種)のポスターなども販売される予定だ。

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展覧会「大友克洋全集 AKIRAセル画展」が8月10日から8月31日までスタジオミクサ(Studio Mixa)で開催される。チケットは6月29日から「イープラス」で販売が開始された。入場料は¥1,500で、Tシャツやキービジュアル(2種)のポスターなども販売される予定だ。

展示に関して、大友全集のTwitterは「レイアウトを探してたらセル画がいっぱい出てきました。なかなか綺麗だったので皆さんに観ていただきたいなと思いました。うちに保管していたものだけなので、全てのカットがあるわけではありません。40年も前のものなので、貴重だと思います(大友)。」と投稿している。

■「大友克洋全集 AKIRAセル画展」
会期:8月10~31日
会場:スタジオミクサ(Studio Mixa)
住所:東京都豊島区東池袋1-14-3 ミクサライブ東京4F 
時間:10:00~20:00
※最終入館受付は閉館時間の15分前。最終入場受付19:45
※会期中無休
料金:¥1,500 ※未就学児は無料
https://otomo-complete.com/special/akira-cell-drawing/index.html
https://ticket1.eplus.jp

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「メクリ」と漫画『バキ』がコラボした開襟シャツが登場 花山薫の名セリフがデザインに https://tokion.jp/2023/05/19/meqri-baki/ Fri, 19 May 2023 13:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=186737 5月19日に発売。価格は¥19,800で、サイズはフリーサイズを用意。

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ストリートウェアブランド「メクリ(MEQRI)」は、5月19日に漫画『バキ』とコラボレーションした開襟シャツを数量限定で発売した。同ブランドの公式オンラインストアで取り扱う。

シャツは、以前「メクリ」のLINE公式アカウントの友だち向けに販売したアイテムで、好評を受けて今回一般販売したという。「バキ」最凶死刑囚編の花山薫とスペックの対決シーンにフォーカスし、花山の名セリフ「まだやるかい」を大胆にプリントしている。価格は¥19,800で、サイズはフリーサイズを用意する。

「メクリ」は、漫画やアニメ等の作品に着目し、シンプルでありながらも存在感のあるデザインのストリートウェアを展開するブランドだ。

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「ジャズの魂を描く挑戦」──『BLUE GIANT』ストーリーディレクター・NUMBER 8が初の小説『ピアノマン』に込めた思いと創作の背景 https://tokion.jp/2023/04/13/pianoman-number8/ Thu, 13 Apr 2023 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=179699 『BLUE GIANT』から広がる本作の誕生秘話や、創作過程での苦悩と喜び、そしてジャズと人間ドラマについて語る。

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小学館『ビッグコミック』で2013〜16年まで連載された石塚真一の人気ジャズ漫画『BLUEGIANT』がアニメ映画化され、異例のロングヒットに。そんな本作の漫画家の石塚と、編集者として、ストーリーディレクターとしてタッグを組み、物語を生み出してきたのがNUMBER 8(小説執筆名・南波永人)だ。映画では脚本を担当し、映画化に合わせて登場人物・雪祈の半生を描いた小説『ピアノマン』も上梓。漫画や映画だけではなく、小説も手掛ける『BLUE GIANT』のキーパーソンに、映画に込めた思いや、初の小説に挑んだ理由、登場人物・雪祈の魅力などを聞いた。

この作品への理解度が比較的高い自分に脚本を任せてほしかった

©2023 映画『BLUE GIANT』製作委員会 ©2013 石塚真一/小学館

──『BLUE GIANT』では編集者、ストーリーディレクターを、映画化された本作では脚本も担当されています。私も映画を拝見し、見終わるときには涙が止まりませんでした。

南波永人(以下、南波):ありがとうございます。これまでジャズを知らなかった人からも、「感動して何度も劇場に行った」という報告をお聞きしていて、もう本当に嬉しいことですよね。

──今回同様に、これまでも石塚さんとタッグを組んできましたね。本作の脚本を担当することになった経緯は?

波:ピュアな動機といいますか、これまで石塚さんと一緒に物語を作ってきた中で、映画化されるんだったら、脚本はこの作品への理解度が比較的高い自分が担当したいという気持ちでした。(上原)ひろみさんが音楽面全てを担当してくれることも決まっていて、石塚さんともひろみさんとも関係性があったので、脚本家を誰にしようかという段階で「できることなら書かせてほしい」と監督にお願いしたんです。石塚さんの希望もあって、書かせていただける運びになりました。

──漫画としてのアウトプットと、脚本にするのとではこれまでの経験とは異なる部分があったと思いますが、脚本を担当してみていかがでしたか?

南波:漫画原作はいつも書いているのですが、この映画ならではのストーリーの組み方は独特で楽しかったですね。映画ではいくつかのライヴが重要なシーンになっていて、ライヴに向かって感情を高めていく構成は漫画とは違う経験でした。監督やプロデューサーの意見を脚本に落とし込んで、何度も調整を重ねたのでもちろん苦労はしましたが、最終的には僕自身もとても感動する作品になりました。

「雪祈には10代の頃のみんながいる」 漫画や映画では描かれなかったキャラクターの深み

──本作の映画化に伴い、登場人物・雪祈の半生を描いた小説『ピアノマン』も南波さんが書き下ろされました。脚本に加えて、小説まで書かれたきっかけは?

南波:『BLUE GIANT』の映画公開時期が決まった頃、出版社から「小説版を出しませんか」という打診があったんです。一般的には、映画公開と共にノベライズ本が文庫版で発売されますよね。でも『BLUE GIANT』の場合、映画をそのまま小説にするという形はちょっと合わないかなと。ひろみさんたちの音楽チームの壮絶な録音も見ていましたし、アニメ制作陣の奮闘ぶりも知っていたので 、僕が小説を書くなら彼らに負けない“どっしりしたもの”を書きたいと思ったんです。

──初めて小説を書くというのに不安はありましたか?

南波:漫画原作や脚本と小説はまったく別物なので、その“どっしりしたもの”が自分に書けるのかという不安はもちろんありました。なのでまず、冒頭部分を50枚ほど書いて絶対に忖度しなさそうな小説の編集者に頼んで、読んでもらいました。そしたら、もうボッコボコにされて……(笑)。ですが、その編集者が「良いところもある」と言ってくれたので、もう少しだけお付き合い下さいと頼んで。とにかくその後は一文一文、全力で書きました。出版できそうと言ってくれたのは半分以上書いたあたりでした。

──『ピアノマン』の主役は、漫画や映画の主人公の大(だい)ではなく、ピアニストの雪祈です。今回、彼にフォーカスを当てた理由は?

南波:最初はトリオの物語を書くつもりでした。でも編集者に「3人で視点が変わるのは表現として分かりづらくなるから、一人の視点を深めていった方が良い」とアドバイスされて。雪祈視点で書くとなると深く潜らなくてはいけなくなるのですが、“どっしりしたもの”にはなるので、やってみようと思いました。

──たしかに漫画でも映画でも、雪祈が苦悩を乗り越えていく様子があり、この物語に必要不可欠な、第二の主人公のような印象を受けていました。南波さんにとって雪祈はどのような位置づけですか?

南波:主人公の大はずっと強くてまっすぐです。一方で雪祈というピアニストは一見強そうに見えて内側には他人に見せない多くの苦悩があって。でも、そういう悩みや苦しさって誰にもあるじゃないですか。特に雪祈ぐらいの年齢特有のバランスの悪さもあって、優しくしたいんだけど優しくできないとか、かっこつけちゃう部分とか、ドライな部分とか。そのあたりが雪祈の魅力なんだと思います。あの頃は、みんなそうですよね。僕も思い出したくもないことがたくさんあります。上京したての頃、「東京の人に負けちゃいけない」と背伸びしていたことも(笑)。

──あぁ、なるほど。自分にも確かにありましたね、その感じ……(笑)

南波:その絶妙なバランスの悪さを雪祈というキャラは持っているんですよね。肩に力を入れてカッコつけちゃう感じとか、「とにかく負けちゃいけない」と必死だった10代の頃の自分だったり周りの人たちの思いを、この小説に書きたかったのかもしれません。

小説執筆の孤独な3ヵ月間。“内蔵をひっくり返して”筆に任せて書いた

──本作は“音が聞こえてくる”という評判を呼びましたね。表現の制約がある小説というメディアで、読み手にジャズの臨場感を伝えるために工夫したところは?

南波:この10年、多くのジャズライヴを見てきた中で、僕が感じたジャズの魅力はインプロビゼーション(即興演奏)でした。音を積み重ねて旋律を生み出して、それを凄まじい速度で即興でやっているところなんです。まるで内臓をひっくり返すように、そこには嘘も計算もなくて、ただ勇気だけがあって、その姿に感動するんですよね。だから僕も同じように内蔵をひっくり返すような気持ちで書こうとしました。とにかく何も考えないように、強く集中して思いだけで書いてみようと。この小説の音楽シーンはかなり特殊な表現方法になっていると思いますが、それでダメなら後で考えようと思っていました。ライブシーンは数多く出て来ますが、あの厳しい編集者が全シーン「このままいこう」と言ってくれて。僕なりのインプロが伝わったのかな、と嬉しかったですね。

──本当にジャズを演奏するように執筆をされていたんですね。

南波:そうですね。だから、どこで苦労したというのはあまりなくて、全部苦労したんです。書き上げるまでの3ヵ月は本当に孤独な時間で。めちゃくちゃ寂しいという気持ちと、上手く書けたという喜びと、その両方を行ったり来たりしていました。たまに会う石塚さんによく当たり散らしていましたね(笑)。

──この小説に魂を込めて、すべてを出し切ったんですね

南波:はい。なので自分としては実力以上のものが書けたという実感があります。漫画や映画に引けを取らない作品を目指しましたが、それに近いものが出来たかなと。漫画も映画もとても良い評価をいただいているので、この小説も多くの方の手に届いて、それに続けたらと思っています。最終的には漫画と映画と小説で、この感動をくれたジャズという音楽を少しでも盛り上がる手助けになれたら嬉しいです。

Text & Interview Ryo Takayama

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「金曜ロードショーとジブリ展」が東京と富山で開催 放送された時代ごとの記憶と記録を通じて映画の魅力に迫る https://tokion.jp/2023/03/24/kinro-ghibli/ Fri, 24 Mar 2023 03:15:00 +0000 https://tokion.jp/?p=177169 東京展は6月29日~9月24日、富山展は10月7日~2024年1月28日、に開催。

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日本テレビ系の映画番組『金曜ロードショー』のヒストリーを辿りながら、スタジオジブリ作品の魅力を紹介する展覧会「金曜ロードショーとジブリ展」が、東京と富山で開催される。

東京展は天王洲の寺田倉庫B&C HALL/E HALLで6月29日~9月24日、富山展は富山市の富山県美術館で10月7日~2024年1月28日、に開催する。さらに来春以降、全国各地での巡回も予定している。

1985年に始まった『金曜ロードショー』は、1986年に『風の谷のナウシカ』(1984年、宮﨑駿監督)を初放映して以来、これまで200回以上にわたってスタジオジブリ作品を放映してきた。その歴史はスタジオジブリが人気を確立し、作品の評価を不動のものとしていく足跡と共にあり、現在も続いている。

本展では、放送された時代ごとの記憶と記録を通じて映画の魅力に迫るほか、昭和から平成、令和に至る世相を掘り起こすことで、スタジオジブリ作品が持つ時代性と普遍性を浮かび上がらせる。また、『風の谷のナウシカ』に登場する“腐海“を表現した空間「風の谷のナウシカ 王蟲の世界」、映画の世界に飛び込めるようなフォトスポットも登場し、スタジオジブリ作品の世界観を楽しめる。

「風の谷のナウシカ 王蟲の世界」は、造形作家として世界に多くのファンを持つ竹谷隆之らが作成した造形物をもとに、映画に登場する“腐海”をリアルに表現。圧巻のクオリティーで作られた王蟲、大王ヤンマ、ムシゴヤシなどが待つ空間となっている。

「音と光に包まれる ジブリの幻燈楼」は、2018~19年に開催された「ジブリの大博覧会」富山展のために作られた巨大な「ジブリの幻燈楼」が登場。「幻燈」とは、フィルムや造形物などに強い光を当てて、レンズで幕などに拡大映像を投影して見せることができる装置。ガラスの町・富山の富山ガラス造形研究所、富山ガラス工房、地元作家らが制作を担当し、スタジオジブリが監修。キャラクターをモチーフとしたガラスに光を照射することで、映画の世界観を体感できる。

■「金曜ロードショーとジブリ展」
東京展
会期:2023年6月29日~9月24日
会場:天王洲・寺田倉庫 B&C HALL/E HALL
チケット:日時指定、詳細は後日発表

富山展
会期:2023年10月7日~2024年1月28日
会場:富山県美術館
チケット:日時指定、詳細は後日発表
https://kinro-ghibli.com

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