佐久間宣行, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/nobuyuki-sakuma/ Fri, 28 Aug 2020 08:41:13 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.3.4 https://image.tokion.jp/wp-content/uploads/2020/06/cropped-logo-square-nb-32x32.png 佐久間宣行, Author at TOKION - カッティングエッジなカルチャー&ファッション情報 https://tokion.jp/author/nobuyuki-sakuma/ 32 32 #映画連載 佐久間宣行 世界って残酷。でもだからこそかけがえのないものに出会えることを教えてくれる映画作品4本 後編 https://tokion.jp/2020/08/27/series-of-movie-nobuyuki-sakuma-2/ Thu, 27 Aug 2020 03:31:40 +0000 https://tokion.jp/?p=3815 テレビ東京制作局プロデューサー・佐久間宣行が、自身の思い出とともにオススメ映画を紹介する。

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映画鑑賞は動画配信サービスの普及によって、もはや特別な行為ではなくなり、感想の共有やレコメンド検索も簡単になった。しかし、それによって映画を“消費”しているようにも感じる。同連載では、映画を愛する著名人がパーソナルなテーマに沿ったオススメ作品を紹介。

テレビ東京制作局プロデューサー・佐久間宣行には、「10代の頃に観ていたら価値観が変わったかもしれない作品」を4本挙げてもらった。新旧名作は、多感で不安定な時期の人にとっては、きっと人生の指針の1つとなる。もちろんその時期を過ぎた人にとっても、過去を懐かしみ、新たな考えを持つ良いきっかけとなるはずだ。

前編では『そうして私たちはプールに金魚を、』『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』を紹介いただいたが、今回はどんな作品が登場するのか。

『ガタカ』発売中  英題:GATTACA
Blu-ray 2,381円(税別)/DVD 1,410円(税別)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (Sony Pictures Entertainment Japan)
©1997 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

3本目に挙げるのは、『ガタカ』です。遺伝子至上主義の近未来を描いたもので、自然出産によって生まれた“不適格者”の青年ヴィンセント(イーサン・ホーク)が、遺伝子操作されたエリート“適格者”しかなれない宇宙飛行士を目指す話なんですけれど、これを僕はディストピアものではなく、希望の物語として紹介したい。運命が決定づけられている世界の話だけれど、ヴィンセントは手持ちのカードで精一杯抵抗する。知恵と勇気で自分の人生を切り開いていく物語です。

僕はこの作品をギリギリ大学生の頃、20代で観ることができた。その時の僕は、就職活動するのかしないのか、と揺れ動いている時期で。自分にできることや、できないことをはっきり認知して、「自分って全然天才じゃないな〜」なんて切ない気持ちを持っていた頃にこれを観て、とても勇気づけられたんです。

「もともとルックスが良い人はいるし、足がめちゃくちゃ速い人もいる。そういう子達が周りにいる中で、自分は天才ではないからってやりたいことを諦めるのか? でもそうじゃないだろう」って。自分のやりたいことがあった時にどうしたら良いのか。その回答を、この映画に見出したんです。今の10代が観ても、救われる部分が大いにあるはずです。僕は今の10代って、情報量が多すぎて、人間を信用して生きていない部分が大きいと思っていて。僕が10代の頃って、クラスの40人ぐらいと12年間付き合う人生で、しかもインターネットもないからその40人との世界が人生のすべてだったわけです。自分に似た人間が世界にいるだなんてことも思っていないから、自分がオタクだったことをひた隠しにして、自分は変わった人間なんだって思わざるを得ない人生だった。でも、今の子達はSNSのおかげで、自分に似た人が世界中にいることを早い段階から知っている。その一方で、自分が天才ではないこと、自分のルックスが全世界において何番目ぐらいなのかとか、自分がつぶやいても“いいね”がこれくらいしかつかない…とか、自分の世界からの評価みたいなものも圧倒的に早い段階から知っている。だから手持ちのカードを知ってしまっている中で生きていかなくてはいけないつらさがあるんですね。まさに『ガタカ』と一緒で。

でもこの映画の素晴らしいところは、たとえ産み落とされたのがどんな場所だとしても、人間は夢や希望を抱くもので、それって当然だよなって気付かせてくれるところ。この映画には、若かりし頃のジュード・ロウも出演しているんですが、もし僕が天才だったら、彼が演じる“適格者”のジェロームに共感したかもしれない。でも、僕は恵まれた側の人間じゃなかったからヴィンセントの気持ちで観ていて。きっと、今の10代も同じ視点で観ることができるんじゃないかなと思います。

発売日:2020年7月3日(金)
2015年/韓国/品番:OED-10666/価格:3,800円(税抜)
発売元:マンシーズエンターテインメント/販売元:中央映画貿易

そして4本目は『わたしたち』。韓国の映画です。これは、韓国の小学生同士の日常を描いた作品なんですが、とにかくすごい。何がすごいって、自分の小学生時代のことを鮮明に思い出させる映画なんです。小学生の女の子達が主人公で、仲間外れやらいじめやら、クラス内で起こる日常を大人の目線を徹底的に外して、子どもの目線のみで描いている。子どもの世界から大人を描くとこうなるっていうことをきちんと見せているし、子どもは子ども同士のコミュニティの中だけで閉塞感がありながら必死に生きていることを見せつけてくる。

子ども達のすさまじい演技と表情を見ていると、「わ、小学生の時ってこうだったわ」とか一気に思い出すんです(笑)。こちらは大人の目線で小学生の頃を回顧するから、微笑ましい思い出もたくさん脳裏に浮かぶんだけれど、一方で「もうやっべ。本当に大変だったなこの頃」っていうことも思い出してしまう。小学生の時なんてクラスと家がすべてだったから、1人でも嫌いな奴がクラスにいたら、「あー最悪だ、もう世界終わった」と思って生きていたなって。一言で言うなれば、コミュニティで生きることの大変さって、ここから始まるから、もう人間って大変だなっていう映画ですこれは(笑)。

その中で、『ガタカ』や『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』と似ているのは、世界が優しくないっていう残酷な部分をちゃんと描いているから、そこで不意に訪れる友情とかがとんでもない輝きを見せるところ。キラキラ映画の中の友情って、やっぱりキラキラ映画の中の話だから心に響いてこないけど、この作品は、世界は残酷だという大前提のもと主人公の仲の機微を捉えていて、そこに本当に感動してしまう。

なんか大人になって、急に世界に絶望する人がいるじゃないですか。会社に入って「なんなんですか、あの人!」と言い出す人とか。そういう人って、世界がめちゃくちゃ優しくて、自分が皆に理解されると勘違いしている。そういう人に僕は「え? 小学生の頃から大変じゃなかった? 忘れたの?」って言いたくなる。「自分を100%理解してほしい」とかそういうことを簡単に言う人には、この4本を観ろって伝えたい。特に『ガタカ』をね。

僕は映画をほぼ毎日1本観ていて、これは25年ほど続いている習慣なんですが、映画を観続ける理由は映画より贅沢な娯楽って他にはないと思うからなんです。何年もかけて何百もの人が関わって作り上げたものを約2時間で体験できるのは、とても贅沢ですよね。

あと間違いなく、10代から20代前半ぐらいまでに摂取したカルチャーで自分の人生の柔軟さが変わると思っていて。価値観が決まるとまでは言わないですけど、その時期にいろいろなものを入れられたかどうかで、自分の中に受け入れられる幅が変わる。しなやかさが変わってくるというか。やっぱりその間に偏ったものしか触れていないとか、自分が正しいと思うものとしか出会っていない人は、自分と違う価値観と向き合った時にそれを認められなかったり、自分が平気なものでも世界にはそれがつらくて耐えられない人がいることに気付けなったりすると思うんです。30代でも考えを変えることができる人もいますが、そういう人はやっぱり脳がゆるゆるの時期にいろいろなものを摂取していたりするんですよね……。だから時間がある10代のうちに、いろいろな映画や創作物でさまざまな価値観と触れ合っておくことをおすすめします。そうするとあとの人生がもっと生きやすくなるのではないでしょうか。いろいろな意味でね。

Edit Kei Watabe

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#映画連載 佐久間宣行 世界って残酷。でもだからこそかけがえのないものに出会えることを教えてくれる映画作品4本 前編 https://tokion.jp/2020/08/08/series-of-movie-nobuyuki-sakuma/ Sat, 08 Aug 2020 06:00:00 +0000 https://tokion.jp/?p=2989 テレビ東京制作局プロデューサー・佐久間宣行が選ぶ、多感な「10代の頃に観ていたら価値観が変わったかもしれない作品」とは?

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映画鑑賞は動画配信サービスの普及によって、もはや特別な行為ではなくなり、感想の共有やレコメンド検索も簡単になった。しかし、それによって映画を“消費”しているようにも感じる。同連載では、映画を愛する著名人がパーソナルなテーマに沿ったオススメ作品を紹介。“消費”するだけでなく、“吸収”し、糧となるような作品を掲載していく。

今回登場するのは、若い頃から映画や演劇などに親しむテレビ東京制作局プロデューサー・佐久間宣行。多忙を極めながらも、観たい作品をカレンダー上で管理してほぼ毎日のように映画を観るという佐久間に、「10代の頃に観ていたら価値観が変わったかもしれない作品」をテーマに4本選んでもらった。傷つきやすく、多感な時期に観ていたら、心の支えになっていたかもしれないし、違う人生を歩むきっかけになったかもしれない作品を、前後編に分けて2本ずつ紹介する。

『そうして私たちはプールに金魚を、』は、2010年代前半の埼玉県狭山市に生きる女子中学生の姿を描いた、実話を元にした作品なんですけれど、地方の閉塞感のようなものって、どの場所、どの時代でも変わらずあるものなんだなと思って選んだ作品です。僕自身は10代当時、閉塞感を持って生きていることなんて気付いてはいなかったんですけどね。でも今、大人になって振り返ってみると、作品に共感できることが多くて心に残ったんです。

僕が10代を過ごしたのは1980年代後半から1990年代前半。場所は福島県いわき市。インターネットもない時代だし、文化格差がものすごくある場所でした。というのも、僕が住んでいた海沿いのエリアでは、ニッポン放送とかいわゆるキー局のラジオを聴ことができたんですね。そのおかげで東京というか、最先端のカルチャーに触れることができた。例えば、「士郎正宗さんって人が『攻殻機動隊』『アップルシード』っていうすごい漫画を描いているらしい」だとか、演劇では「第三舞台とか、三谷幸喜っていうすごい人が出てきたらしい」だとか。そういう情報が深夜ラジオを通して耳に入ってきたんです。でも、そんなことを知っているのって、クラスの2〜3割ぐらい。電気グルーヴがインストでアルバム出すなんて言ってもほとんどの人は知らなくて、「は? 電気グルーヴ? インスト? 何それ?」って感じ(笑)。

そんな中で、どうやったら最先端のアニメやら舞台やらを観ることができるんだろう……って、ずっと憧れているような10代を僕は過ごしていました。

でね、当時のいわき市は基本的にヤンキー文化だったから、ちょっとでも変わったことをすると目をつけられてしまうんですよ。特に僕のような180cmも身長があって、ヤンキーともそこそこうまくやってる人間の鞄から『アニメージュ』が出てきたら「え、佐久間ってひょっとしてオタク?」って、いじめられちゃったりするわけです。もちろん、それぞれのジャンルで気の合う仲間はいましたけれど、総合的にカルチャーに興味のある友達は1人もいませんでした。アニメージュなんてエロ本の如く、「絶対に見つかってはならない」と思って持ち歩いていたし、めちゃめちゃメインカルチャーを好きなふりをしたりとか(笑)。

当時はそんな生き方に息苦しさや寂しさは全く感じず、むしろそれが普通のことだと思っていたんですけど、大学入学に合わせて上京した時、初めて自分が寂しさを抱えていたことに気付いたんです。今でも友人なんですけれど、東京で初めて仲良くなった人が相当なオタクだったんです。実家の金物屋の2階にある彼の部屋はSFや演劇関係の本であふれていて、床が抜けそうになってるほどで。そんな同じ趣味を持つやつと初めて出会って「あ、俺寂しかったんだな10代」って。

でもね、今、当時の自分に言いたいのは「絶対その趣味やめんなよ」ってこと。『そうして私たちはプールに金魚を、』の彼女達もそうですけれど、自分が興味のあることや本心を誰かに話しても興味を持ってもらえないことって、誰にでもあるわけです。それこそ言ったらいじめられちゃうかもしれない……とかね。僕自身も「なんだ、誰も観てないし、誰もおもしろいって思ってないじゃん」と、いっときは自分の趣味をやめたこともあったけれど、それでもずっと好きだって気持ちを見捨てずに触れ続けてきたカルチャーで得たもの=価値観が、今ではものすごい宝物になっている。その事実は、10代の自分に伝えてあげたいですよね。

『そうして私たちはプールに金魚を、』は、10代の頃の僕が観ても共感できる作品だと思ったりもするんですけれど、『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから(以下、ハーフ・オブ・イット)』は価値観が最先端すぎて、10代の僕が果たして正しく理解できたかは疑問です。でも「世界で自分のことを理解してくれる人なんていないんだ」っていうわりと絶望的なところから始まる物語には自分と重なるところがありますし、10代の時にこの作品を観たのなら価値観がずいぶん変わるだろうなと思って選びました。

『ハーフ・オブ・イット』はラブストーリー・青春映画ってここまできたんだなっていう衝撃的な作品でした。ベースになっているのが『シラノ・ド・ベルジュラック』だったり、監督の実話でもあるんですけれど、物語が本当にみずみずしくって繊細で単純じゃなくって……。セリフの1つひとつもとても美しく、青春映画でここまでさまざまな価値観を描くことができるんだってすごく感動しました。

この作品は、自分を100%理解してくれる人なんていないし、いたらそれは奇跡なんだよということをちゃんと伝えてくれる。それって、「この世界って残酷なんですよ」って伝えていることと一緒だと思うんです。みんなが優しくて、あなたのことを両手を広げて待ってますなんていうことを描く映画って嘘じゃないですか。世界ではそんなことあり得ない。現実の残酷さをちゃんと描きながら、だからこそかけがえのないものがあるんだよということを伝えてくれているんですよね。残酷な世界の中で生きるからこそ、不意に訪れる友情がとんでもない輝きを見せる。心を打たれた理由は、ここにあると思います。今回チョイスした4本の中では『ハーフ・オブ・イット』が一番好き。

ちなみに、この2作品とも女性が主人公なんですが、特に意識して選んだわけではありません。でも女性は生きづらさだったり、どうやって生きていこうかっていうことに気付くのが早いですよね。10代の早い段階で自意識の葛藤がある。だから心震わされる10代をテーマにした映画は女性が主人公であることが多いんじゃないですかね。男ってこの時期は何も考えてなかったりするじゃないですか(笑)。

Edit Kei Watabe

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